表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
五章 闇夜の蓮と弓使い
93/143

五章 [15]

「うん。それじゃ、手を開いてみて」


 泉蝶(せんちょう)が言われたとおりにすると、彼女の握りこんでいた札の色が変わっていた。


「きれい……」と、そんな吐息交じりの言葉が漏れる。


 泉蝶の気を吸収した札は、金属粉をまぶしたかのようにキラキラ輝いていた。抜身の刃のような鋭い銀色にわずかに黄みが差すことであたたかな印象になっている。


「それ、泉蝶ちゃんの気の色ね」


 志閃(しせん)は泉蝶がうっとり見とれている札を指さした。


「俺たち術師から見たら、泉蝶ちゃんの気ってそんな風に見えるの。キラキラきれい。もうね、俺、泉蝶ちゃんの気が大好き。こうやって隣にいてくれるだけでむっちゃ幸せな気持ちになるんだからね」


「ちょっと、気持ち悪いわ……」


「ひど! 俺の渾身の告白が、シクシク」


 むき出しになった腕をこすって顔をゆがめる泉蝶に、泣きまねをはじめる志閃。


「もう!」


 泉蝶は怒ったように目元を抑えて泣きまねを続ける志閃の腕をつかんだ。そのまま彼の腕を無理やり下ろさせながら、彼の耳元にささやく。


「ほら、前から来てるの周賢(しゅうけん)じゃないの?」と。


「そだね」と小さな返事が返ってきた。


「その札は泉蝶ちゃんにあげるよ。俺のもあげるから、大事にしてね」


 そして声をいつもの調子に戻してそうへらっと笑う。

 その後、視線を前に向けて、こちらに歩いてくる自分の部下に今気づいたように手を振った。


「おー、賢クンじゃん!」


 そうまだ遠い周賢に駆け寄る。


「ちょっと、こんなものいらないわよ!」と泉蝶も志閃の気がこもった札をひらひら振りながら追いかける。


「なになに読書? 勉強? 休みなのに熱心ね」


 先に周賢のそばまでたどり着いた志閃は、彼の持つ本に目を向けて言った。


「はい! 借りていた本を返しに行こうかと!」


 周賢ははきはきとした好青年然とした様子でそれに答えている。彼の持つ本に興味を覚えたという様子で、志閃はその本を手に取った。


「ふ~ん。仙術の本だね。いや熱心熱心。感心感心」


 そして、最後の方、周賢がなにか書き込みしていたらしきページで本をめくる手を止めた。ちらりと周賢の様子を盗み見たが、彼の表情は変わらない。

 さりげない動作で角筆で書き込まれた文字を見て、そこに込められた気を感じ――。


「クロだね」


 そう低くつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ