五章 [15]
「うん。それじゃ、手を開いてみて」
泉蝶が言われたとおりにすると、彼女の握りこんでいた札の色が変わっていた。
「きれい……」と、そんな吐息交じりの言葉が漏れる。
泉蝶の気を吸収した札は、金属粉をまぶしたかのようにキラキラ輝いていた。抜身の刃のような鋭い銀色にわずかに黄みが差すことであたたかな印象になっている。
「それ、泉蝶ちゃんの気の色ね」
志閃は泉蝶がうっとり見とれている札を指さした。
「俺たち術師から見たら、泉蝶ちゃんの気ってそんな風に見えるの。キラキラきれい。もうね、俺、泉蝶ちゃんの気が大好き。こうやって隣にいてくれるだけでむっちゃ幸せな気持ちになるんだからね」
「ちょっと、気持ち悪いわ……」
「ひど! 俺の渾身の告白が、シクシク」
むき出しになった腕をこすって顔をゆがめる泉蝶に、泣きまねをはじめる志閃。
「もう!」
泉蝶は怒ったように目元を抑えて泣きまねを続ける志閃の腕をつかんだ。そのまま彼の腕を無理やり下ろさせながら、彼の耳元にささやく。
「ほら、前から来てるの周賢じゃないの?」と。
「そだね」と小さな返事が返ってきた。
「その札は泉蝶ちゃんにあげるよ。俺のもあげるから、大事にしてね」
そして声をいつもの調子に戻してそうへらっと笑う。
その後、視線を前に向けて、こちらに歩いてくる自分の部下に今気づいたように手を振った。
「おー、賢クンじゃん!」
そうまだ遠い周賢に駆け寄る。
「ちょっと、こんなものいらないわよ!」と泉蝶も志閃の気がこもった札をひらひら振りながら追いかける。
「なになに読書? 勉強? 休みなのに熱心ね」
先に周賢のそばまでたどり着いた志閃は、彼の持つ本に目を向けて言った。
「はい! 借りていた本を返しに行こうかと!」
周賢ははきはきとした好青年然とした様子でそれに答えている。彼の持つ本に興味を覚えたという様子で、志閃はその本を手に取った。
「ふ~ん。仙術の本だね。いや熱心熱心。感心感心」
そして、最後の方、周賢がなにか書き込みしていたらしきページで本をめくる手を止めた。ちらりと周賢の様子を盗み見たが、彼の表情は変わらない。
さりげない動作で角筆で書き込まれた文字を見て、そこに込められた気を感じ――。
「クロだね」
そう低くつぶやいた。




