五章[3]
翔がとてとてと寄ってきて、泉蝶の枕元に座る。泉蝶の額に小さな手が触れた。じんわりとあたたかい。
「時間かかりそうだから、寝ててもいいよ」
「いえ、それは――」
子どもの手は柔らかく、心地よい。今すぐにでも目を閉じてしまいそうだったが、泉蝶は仕事中だ。皇子の命令とはいえ、今の横になって休んでいる状態でさえ良心が痛む。寝るなどもってのほかだ。
「泉蝶はマジメ過ぎ!」
天井を見上げる泉蝶の視界にほほを膨らませた翔の顔が入った。
「赤覇は最近見てないからわからないけど、王紀は結構休んでるっぽいよ。気を回復に使ってる。王紀の仙術は自分の強化に向いてるから、自分相手なら回復も得意なんだね。
飛露も時々自己回復してる。でも、あの人もマジメだね。一生懸命なのがわかる。
王紀や飛露や志閃は、気が見えるからちゃんと自分の限界をわかってる。わかってるから限界ぎりぎりまでがんばっちゃうんだろうけど、ちゃんと限界を超えそうになったら止めて休んで回復させる方法を知ってるんだと思う。でも泉蝶は限界超えてもがんばっちゃうから――」
「……申し訳ありません」
がんばりすぎるというのは、日ごろから同僚にもよく言われる言葉だ。泉蝶は素直に謝った。
「しかし、今はまだ本当に大丈夫です。ご心配は非常にうれしく、身に余る思いですが……」
「うん。でも、休めるときには休もうよ。今はちゃんと休んで。命令。この先、きっと大変になるから」
「……それは予知ですか」
翔の自信に満ちたもの言いに、泉蝶はそう尋ねた。
「たぶん……。そんな気がするんだ。志閃と飛露が何かしてる。ここ数日の二人の疲れ方がひどいんだ。特に志閃。でも、聞いても何も教えてくれないし、休んでって言っても休んでくれないし。昨日もそうだし、さっきだって――」
「ちょっとすみません」
泉蝶は引っかかるものを感じて、皇子の言葉を遮った。その失礼極まりない行動に、近くにいた教育係の老爺が眉をひそめる気配を感じたが、無視する。




