表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
五章 闇夜の蓮と弓使い
79/143

五章 [1]

泉蝶(せんちょう)


 明るく高い声に、泉蝶ははっとして顔を上げた。しかし、目の前には誰もいない。


「こっち」


 そう着物の裾を引っ張られて、彼女はやっと斜め後ろの低い位置にあるその顔に気が付いた。

 真ん丸とした輪郭に、大きなよく動く目。十歳にも満たないような、あどけなさの残る少年だ。

 彼の纏う(ほう)には淡い紅に染められた最上級の絹が使われ、金銀を惜しみなく使って鳳凰が刺しゅうされている。しかも、その贅を凝らした衣服を着ることに何ら疑問を感じておらず、良く似合ってもいた。

 彼の後ろには侍女が四人と教育係の老爺が一人、静かに控えている。


(しょう)様……。申し訳ありません、少しぼんやりしていたようです」


 すぐさまひざを折って、自分よりはるかに背の低い彼よりも頭が低くなるようにこうべを垂れた。彼はこの国の第八皇子。泉蝶は慌てて最上級の礼を尽くした。


「だいじょうぶ? 疲れてる? 泉蝶の気、元気ないよ?」


 桃源国第八皇子――翔はうつむいたままの泉蝶の頭にそっと両手を添えて尋ねた。彼女が深々と頭を下げていることに関しては何の疑問も感じておらず、それを当たり前のこととしてとらえているようだ。


「ご心配をおかけして申し訳ありません。すぐに業務に戻りますので――」


「ううん。ちょっとおしゃべりに付き合ってほしいな。いいでしょ?」


「殿下、泉蝶殿のお仕事の邪魔をされては――」


 背後に控える教育係が、小さく異を唱えるが、翔は「いーじゃん。僕は今日やらないといけない勉強を全部終わらせたし、泉蝶は僕たちを守るのが仕事でしょ? 一緒にいた方が守りやすいじゃん」と言い返している。


「ね? ね? 命令だよ? いいでしょ?」


 そして、泉蝶の手を取って立ち上がらせ、期待に満ちた目で彼女を見た。帝とその周囲を守る泉蝶にとって、帝の息子で次の帝になる可能性を秘めている皇子の命令は重い。


「かしこまりました」


 泉蝶はそう答えて頭を下げた。


「じゃあ、僕のお部屋が近いから、そこに行こう」


 そう言って、翔が侍女を見れば、すぐさま四人いる侍女のうち二人が踵を返す。泉蝶をもてなすための準備を行うのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ