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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
四章 探す蓮と大剣士
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四章 [22]

「でも、向こうは悪い気――」


 次に水蓮(すいれん)は東を見た。

 そちらは現在も桃源国軍と(こう)国軍が油断なく睨み合っている方向だ。戦場は次第にこちらに近づいているが、起伏の大きい丘陵に隠されてまだ視認はできない。


「空も大地も赤と黒で染まってる。ここは大丈夫。虹色の気に守られてるから。でも、あれだけ勢いがあったら、そのうち飲まれちゃいそう……」


 水蓮にはどんな風景が見えているのだろうか。赤覇(せきは)には低木がまばらに生えるのどかな高原しか見えない。しかし、丘をいくつか越えた先で今も憎悪が渦巻いているのだろう。数日前まで見ていた戦場の風景を、赤覇は鮮明に思い描ける。


「う~ん、でもここに来るまでに結構時間がかかっちゃいましたね」


 水蓮が不安そうな顔をしたのはほんの一瞬。一転明るい声になると、気持ちよさそうに伸びをした。


「そうだな」


 今度はちゃんと応じる赤覇。


「少し休んだら戻るぞ」


「うん」


 水蓮は元気に返事して、野花の間に飛び込んだ。

 辺りが急斜面なので、赤覇は水蓮が転がり落ちてしまうのではないかと少し不安になったが、ちゃんと注意しているらしい。足を下に向け、仰向けになっている。


「いい匂い」


 水蓮は目を閉じた。


 飛露(とびつゆ)は彼女と少し離れたところで瞑想を再開している。


「休日なのによくやるな」


 赤覇は飛露に歩み寄って、小声で話しかけた。飛露の姿は仕事中と同じで、弓矢までちゃんと装備している。


「無趣味で悪いな」


「いや、そんなこと誰も言ってねぇだろ」


「あの小娘が怪しすぎるのでな」


「まさか、ずっとここから監視してたのか?」


 帝都中を見下ろせるこの場所からならば、気からその人の所在を知ることができるのかもしれない。肉眼で見るよりも、気を見る方が人捜しなどでは役立つと聞いたことがある。


 飛露は答えなかったが、彼の性格上正解な気がした。

 帝への忠誠心が異常に篤い飛露ならば、帝のために一日中何もない山の斜面から人一人を監視し続けるくらいやりかねない。


 一方の水蓮は仰向けに寝転がって、薄い雲の浮かぶ空にほほえみかけていた。


「私、この国に来れて本当に良かったと思います」


 そうつぶやきながら――。

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