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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
四章 探す蓮と大剣士
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四章 [20]

「おおっ、赤覇(せきは)将軍が昼間に来るなんて珍しいっすね!」


 若い給仕がすぐに注文を取りに来る。


「お隣の娘さんは、これですかい?」と小指を立てるしぐさで「彼女か?」と聞いてきたので、赤覇はそれをしっかりと握りしめた。


「この指邪魔みてぇだから、へし折ってやろうか?」


「うわわわ、冗談っすよ!」


 給仕は空いた手をぶんぶん振る。


「部下っすよね?」


「わかってるじゃねぇか」


 赤覇は満足げに言って、給仕の指を放してやった。

 赤覇が給仕に注文を告げる間にも、水蓮(すいれん)はちらちらと店内を見回している。時間が早いこともあり、客は少ない。しかも、みな陰気な顔をしている。


「本当なら、家族連れや若い奴らでにぎわってるんだけどな」


「戦だから?」


 人々の暗さが移ってしまったのか、不安そうな顔で水蓮が首をかしげる。


「……そうだな。戦が終わったらまた連れてきてやるよ。仙術の研究機関も見たいんだろ?」


「……うん」


 赤覇の言葉でも気が晴れなかったのか、水蓮は寂しそうな顔でうなずいた。


「子どもっぽいと思ってたが、そういう顔をするとまだましだな」


 なんとか水蓮の気分を明るくできないかと、そう茶化す赤覇。


「そう?」


「普段は六歳くらいに見える時がある。志閃(しせん)もそうだな。仙術使いってのは、子どもっぽい奴が多い」


 赤覇はにっと笑った。


「ひどいです……」


 水蓮は眉間にしわを寄せた。


「お前の場合はもちろん『無邪気』とか、『明るい』とか、いい意味で、だ」


「その言い方、志閃さんは悪い意味で子どもっぽいってことになりません?」


「その通りだろ?」


 赤覇がそう笑うと、「……そうかも」と水蓮も笑みを浮かべてくれた。それに少し安堵しながら、赤覇はさらに明るく楽しい話題をさがす。


 そうやって、談笑しながら早い昼食をとった。


 雑穀のごはんは香草と炊かれていて、湯気とともに良い匂いが立ち上っていた。川魚中心の料理も汁物も味が良い上に量が多い。赤覇がここを気に入っている理由だ。


「午後はどこに行く? 明日からまた稽古があるんならもう帰って休むか?」


「う~ん、もうちょっと良いですか?」


「オレは別にかまわねぇぜ」


 水蓮には言わないが、これも仕事だ。


「私、高いところから源京を見てみたいんです。扇状地にあるんだよって言われても全然想像つかないし」


「それならとっととメシ食って、山にでも登るか」


「あ、はいっ!」


 赤覇がためらいなく承諾したのが意外だったのか、水蓮は驚きつつも明るく返事した。早く昼食を片付けようと食べる速度を上げる。

「よく噛んで食えよ」と母親めいたことを言いながら、赤覇も自分の食事をかき込んだ。そうしながら、山間にある帝都が最も良く見下ろせる場所を考えた。仕事だからと言う気持ちは少しずつ薄れ、少しでも、この無邪気な少女に喜んで欲しくて――。

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