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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
四章 探す蓮と大剣士
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四章 [19]

 

  * * *


 水蓮(すいれん)は一週間の休みをもらった。水蓮のひじの様子を見て応急処置をした飛露(とびつゆ)が「しばらく弓に触れることなく、休むが()い」と言ってくれたのだ。


 しかし、彼女一人で出歩かせるのは許さない。将軍間で話し合い、休日最終日の今日、水蓮の監視にはたまたま前線から帰還していた赤覇(せきは)が就いた。

 水蓮を怪しむ人間を増やしたくないので、禁軍の部下には任せられない。しかし、泉蝶(せんちょう)志閃(しせん)王紀(おうき)は宮殿警護の仕事が入っている。飛露は非番だったが、仏頂面の彼と過ごさせるのはあまりにかわいそうだった。


「赤覇さん、ごめんなさい。お忙しいのに――」


 水蓮は大柄な赤覇の隣で小さくなっている。


「休みだ、気にするな」


 前線での戦いは砦の結界が破られた翌日には落ち着いた。結界を破り、桃源軍の砦を制圧する予定だったのだろうが、それを阻止され、勢いがそがれたのだろう。

 しばらく戦いはないと判断した赤覇は、自分の副官と仙術部隊の宗剛(そうごう)に前線の指揮を任せて、帝都に戻っていた。明日か明後日には前線に戻る予定だが、それまでは休日のようなものだ。

 戦に必要な情報のやり取りは行っていたが、禁軍将軍としての仕事はほとんどない。


「でも、赤覇さん疲れてるみたいですし……」


「気が乱れてるって言いてぇんだろ?」


 その話は志閃にさんざんされた。赤覇の不機嫌な声におびえたのか、水蓮は何も言わず小さくうなずいた。


「気にするな」


 赤覇はもう一度言った。


「今日は泉蝶と飛露から外出の許可をもらったんだろ? 戦中で気がったってるやつが多いが、せっかくの機会だ。楽しんでおけ。行きたいところを言えば連れて行ってやる。遠慮はいらねぇ」


 名目はまだ桃源に不慣れな水蓮のための案内人である赤覇は、だいぶ下にある水蓮の頭に問いかけた。


「……えっと、宮殿内以外で源京(げんきょう)からそんなに離れなかったら、どこでも行ってもいいんですよね?」


 水蓮は、上司の飛露から「宮殿内をうろつくな」と、同室の泉蝶からは「あまり源京から離れちゃだめ」としっかりと言い聞かせられていた。

 赤覇を心配そうに見上げる水蓮の目には、隠しきれない好奇心が見える。


「よほど危険か、立ち入り禁止の場所じゃなければな。遠慮なく言ってみろ」


「……私、仙術の研究機関に行ってみたいんです。一番最先端の研究してる場所に――」


 遠慮をにじませて控えめにしながらも、水蓮の目はまぶしいほどにキラキラ輝いている。しかし、すぐに暗い顔をした。


「あ、けど、無理なのかなぁ……」


 戦中であることを思い出したのだろう。


「……確かに今は札を作ったり、敵に対抗するための術式を作ったりで忙しいかもな」


 前線では多量の札や術具が消費されている。現在は仙術に関する研究機関や教育機関のほとんどで普段の業務が中止され、戦のための開発・生産が行われているはずだ。


「う~ん……。じゃあ、まだ早いけど、少し街中を見て回ったら、お昼ご飯食べたいです」


 水蓮が暗い顔をしたのは一瞬で、すぐに笑顔になって違うことを提案する。明るい子だと思った。


「わかった」


 赤覇はそんな水蓮に豪快に言って、街中を見たいといった水蓮のためにやや遠回りをしつつ、行きつけの酒場へ案内した。夜には武官や職人のような体格の良い男が集まってにぎやかに酒を酌み交わしているが、昼間は家族連れもいる普通の食事処だ。

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