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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
四章 探す蓮と大剣士
69/143

四章 [14]

 

  * * *


 禁軍拠点内にある訓練場に生暖かい風が吹き抜ける。


 その中央に立っているのは、泉蝶(せんちょう)王紀(おうき)だ。

 泉蝶は細かい蝶の細工が施された装飾的な鞘から抜き放たれたとは思えないほど鋭い光を放つ細身の剣を、王紀は身の丈をゆうに超す長槍を構えている。


 禁軍の将軍同士の模擬戦と言うことで、あたりの人々がかたずをのんで見守る中、泉蝶が地を蹴った。長い黒髪がなびき、深く切れ込みを入れた着物の裾が、日に焼けた小麦色の足に乱されて翻る。

 その動きはなめらかで、そういう踊りを見せられていると錯覚しそうだ。


 曇りのない泉蝶の白刃を、王紀は槍の先でそらそうとした。間合いは槍を持つ王紀の方がはるかに長い。しかし、泉蝶はその槍先をわずかな刃の角度の変化で見事にいなし、すばやく蹴り上げた足で槍の穂先をあさっての方へ向かせてしまった。


 泉蝶はそのまま王紀の懐へ――、と思ったその時、王紀は腰に佩いていた剣を片手で抜き放った。横なぎにされた剣を泉蝶は慌てて身を低くすることでかわした。


 王紀の「申し訳ありません」と言う丁寧な言葉とともに繰り出された蹴りは、地面を転がることで何とか回避する。

 泉蝶はそのまま王紀の間合い外まで退避した。


「あなたはいつもむちゃくちゃなのよ!」


 王紀の姿を見て、泉蝶はそう声を荒げる。彼は左手に細身の剣を、そして右手だけで自分の身の丈をはるかに超える槍を構えていた。


「そうですか?」


 王紀はいつものきれいな笑みを浮かべて、頭の上で槍を回してみせる。右手だけで。


「僕の仙術は、自己の肉体強化に特化しておりますので」


 気の力で見た目以上の怪力を得ているらしい。


「いきますよ」


 そして、王紀が槍を振る。

 泉蝶に届く距離ではなかったが、泉蝶は慌てて後ろに飛び退った。王紀は槍の穂先のさらに先に気で刃を作り出して、間合いを伸ばしているのだ。


 次に王紀は剣を一閃する。そこから放たれたかまいたち状の気の固まりも泉蝶の剣の一振りでかき消された。


「本当に見えてないんですよね?」


 王紀がそう聞きたくなる気持ちもわかるほど、泉蝶の仙術攻撃に対する回避はうまい。


「見えるわけないでしょ。勘よ。勘!」


 気を感じられない泉蝶はそう答えながら、小さな刃を放った。その根元には細いものの丈夫な紐がつけてある。それが王紀の持つ槍の柄に巻きつき、むき出しになっている泉蝶の腕に女性らしからぬ力こぶが浮かんだ。

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