四章 [13]
「飛露辺りにも手伝わせるしね」
帝への忠誠心が異様なまでに篤い飛露が協力するなら、大丈夫かもしれない。飛露の場合、「彼女」を即監禁してしまいそうだったが……。
「……あの小娘が内通者じゃないのか?」
赤覇は「内通者」と聞いた瞬間から脳裏をよぎっていた少女のことを聞いた。
「水蓮ちゃん?」
あえて名前を出さなかったが、志閃は赤覇の言いたい人物を正確に察した。
「俺は違うと思うね」
「なんでだ?」
即答する志閃に赤覇はいぶかしげに尋ねた。
「勘、だけどね」
「信頼できねぇな」
「だろうね」
志閃は癇に障った風もなくほほえんだ。ちょっと困ったような笑みだ。
「じゃ、汗くっさい野郎と狭い部屋に二人っきりってのも全然楽しくないし、俺はそろそろ行こうと思うけど、まだなんかある?」
「…………いや」
考えたが、これと言った問いが浮かばなかったので、赤覇は首を横に振った。
「んじゃ、前線のことは頼んだわ」
「ああ」
もう一言くらい志閃の余計な言葉があるだろうと身構えた赤覇だったが、志閃は黙っていれば色男な顔で片眼をつむって見せただけで、何も言わずに彼らが今までいた武器庫をあとにした。
「『内通者』なぁ……」
一人になった部屋で、赤覇はそうつぶやいた。
思い返しても、水蓮以外に心当たりがない。いや、水蓮に気を取られるあまり、ほかの人間への警戒を全くしていなかったというべきか。
赤覇は鋭く研がれた槍の穂先に映る自分の顔を睨み据えた。今までの自分を叱咤するために。
そして、部屋中の棚がガタガタと音を立てるほどの大声で気合の声を発する。
「っしゃあ!! やってやろうじゃねぇか!!」




