三章 [15]
「一番安心できるのは、飛露んとこか?」
赤覇は赤茶の髪をかき上げながら、飛露を見た。
「そうですね」と王紀も賛同する。
泉蝶も、監視という点では一番の適任だろうと思い浅くうなずいた。
できれば、自分の部隊で面倒を見たいが、泉蝶の率いる聳孤軍は護衛部隊だ。後宮や帝の私的空間の警護が主で、最も帝に近づきやすい。もし水蓮が桃源を害そうとしているのなら、泉蝶の部隊ほど都合の良いところはないだろう。
逆に飛露の角端軍は長距離攻撃専門の弓部隊。城壁の上や、宮殿を見下ろせる山岳地帯に配置されることが多く、帝と接触する機会は最も少ないと言える。
「わたしは奴が少しでも帝に危害を加えるようなことをしたら、射殺すぞ」
飛露はそう言って、背負った弓の弦を軽くはじいた。
「だからいいんですよ」
笑顔で残酷なことを言う王紀。
「そんな~」と異を唱えるのは志閃のみ。それも完全に無視されている。
「それでは、水蓮さんが配属されるのは、飛露の弓部隊角端軍でよろしいですね」
志閃だけは「よろしくない~」と文句を言っているが、それ以外の将軍はうなずいた。
「それと泉蝶、一つお願いがあるのですが、いいですか?」
「なにかしら?」
「水蓮さんはまだ完全に傷が治りきっていませんが、日常生活ができる状態までは回復しているそうです。彼女を、女性用兵舎のできれば泉蝶の目が届く部屋に移して、日常の監視をお願いしてもよろしいですか? 四六時中一緒にいる必要はありませんし、できる限りでいいですから」
「それは、構わないけど……。あたしは水蓮が妙な術を使っていても気づけないわよ」
「構いません。本当に何か危険な気の動きがあれば、志閃が我に返って教えてくれるでしょう」
王紀は圧力的な笑みを浮かべて志閃を見た。
「その、今の俺が正気じゃないみたいな言い方やめてくんね?」
「申し訳ありません」
口では謝りつつも、申し訳ないと思っている様子は皆無だ。




