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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
三章 微笑む蓮と黒い槍
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三章 [8]

「え、と……?」


 飛露(とびつゆ)の鬼のような形相におびえつつも、水蓮(すいれん)は自分の病室に集まった五人の将軍に視線をさまよわせた。水蓮の前に彼らがそろうのは、ここに運び込まれた時以来だ。


「何か、ありましたか……?」


 飛露ほどあからさまではないものの、みな一様に険しい雰囲気をまとっている。


「水蓮ちゃんに、禁軍の入軍試験を受けてもらおうってね~」


 もとい、一名女好きオーラを発している癖毛以外は――、か。


「入軍試験?」


 水蓮はおうむ返しに尋ねる。


「そっ。でも、水蓮ちゃんはまだケガが治りきってないから、仙術の試験だけね」


 そう答えて、志閃(しせん)は量気札を取り出した。


「この札はある一定以上の気を込められると気化してなくなるんだけどー、これを五秒以内に完全に消せれば試験合格」


「え、それだけ?」


 水蓮は志閃の持つ、手のひらほどの大きさをした厚紙をまじまじと見つめた。


「そうです」


 内心はどうあれ、王紀(おうき)はいつもの笑みを浮かべている。


「今、できますか?」


「あ、はい」


 水蓮は嬉しそうにうなずいた。王紀の笑みの裏にあった圧力は感じなかったらしい。


「じゃっ、はじめ――」


「待て」


 札を水蓮に渡そうとした志閃の腕を飛露が掴んだ。


「貴様は不正をはたらく可能性がある」


「いやいやいや、そんなことしないって。飛露、どんだけ疑り深いわけ?」


「貴様は信用できぬ。女性がからむと特に」


「それでは、飛露が水蓮さんに札を渡していただけますか?」


 王紀は飛露の返事を待たずに、志閃の手から量気札を奪って、飛露に渡した。


 泉蝶(せんちょう)赤覇(せきは)は何の口出しもしなかった。志閃を信頼していないわけではないが、飛露の方がより確実だ。


「手のひらを出すが良い」


 王紀から札を受け取った飛露は、水蓮に冷たく命じた。


「はい……」


 おびえつつも、水蓮は両の手のひらを上にして差し出した。その手に触れないようにわずかに浮かせて札を持つ飛露。


「いいですか? それでは禁軍入軍試験を始めます。飛露が手を放したら札に気を込めてください。五秒以内に札をすべて消失させれば合格です」


 王紀が穏やかにほほえんで試験の内容を簡潔に説明した。簡潔すぎる気もするが……。


「はい」


 水蓮が緊張した面持ちでうなずいた。

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