三章 [7]
「ん~、大きさ形からして小鳥」
それを確認して志閃が話しはじめる。
「でも鳥の気じゃないね~。気で鳥を操ってるわけでもない。一番近いのは……、『気を鳥の形にした』」
「式神のようなものか? それにしては気配が鮮明だ」
飛露は今まで見てきたたくさんの術式を脳内で思い浮かべたが、やはり今感じている気と合致するものはなかった。
「式神は操りの術に分類されるから、違うね。もっと生々しい何か」
今飛露が感じている鳥の正体は、志閃にとって話したくない情報だのだろう。あいまいに答えることで、ごまかそうをしている。
「はぐらかさずにはっきりと答えろ」
嘘をついている様子はないものの核心に触れない志閃に、飛露ははっきりと引く意思がないことを示した。
「……『人が鳥の形になってる』とか」
いかにもしぶしぶと言う感じで、志閃が答えた。
「……それは、可能なのか?」
人が鳥の姿になるなど聞いたことがない。
「理論上は可能。能力的には無理」
「それなら、どういうことなのだ?」
「それは俺にもわかんね。実際行って、見てみりゃいいんじゃね?」
軽薄な態度だが、志閃に嘘をついている様子はない。飛露は扉の並ぶ暗い廊下を見た。水蓮のいる病室はもうすぐそこだ。
――こっそりのぞいて……。
忠誠を誓う帝の安全を考えての行動とはいえ、道徳的にどうかと思われる作戦を考えていた飛露だったが、その作戦はあっという間に実行不可能になった。
「水蓮ちゃ~ん!」
水蓮の部屋が近づいてきたからか、志閃がいきなり叫んで駆けだしたのだ。
「おい!」
今まで志閃がおとなしかったため、気を抜いていた赤覇が慌てて追いかける。
「くそ、貴様っ!」
のぞき作戦を妨害された飛露も怒鳴ってすぐさま志閃を追う。
「いい知らせを持ってきたよ!」
そう叫んでノックもせずに病室の戸を開けた。その瞬間聞こえたのは、すでにだいぶ小さくなった羽音。
志閃を取り押さえつつ、何とか部屋をのぞくことができた飛露が見たのは、窓から飛び立ち闇にまぎれていく小鳥の群れだった。
「また鳥とおしゃべりしてたの?」
術師たちのやり取りなど何も知らない泉蝶が尋ねた。いつもの世間話と同じだ。
「はい」
布団から上半身を起こしている水蓮はにっこりと笑った。無邪気な笑みに、全くやましいところはないように見える。
「貴様、さっきの鳥は――」
しかし飛露は問答無用で水蓮の襟首を掴もうとした。あまりに乱暴な動作だったため、「やめろ」と赤覇に腕を掴まれたが……。




