三章 [4]
「でも、けがが治りきってないでしょ?」
泉蝶はとっさに水蓮の身を案じた。
「仙術ならケガしてても試せるけど~?」
猛反対するかと思った志閃が話に割り込むと同時に、ふところから紙切れを取り出した。
「ジャジャ~ン。量気札。ある一定以上の気が加わると、札に使われてる特殊な粒子が気化して、消滅しま~す。俺の索冥軍に入れる最低条件が、この札を五秒以内に完全に消滅させること」
志閃が取り出した正方形の札は、手のひらにのるほどの大きさだ。医療用の札に比べると小さい代わりに厚みがある。表面に文字はなく、ただの厚紙のように見えた。
「こんなもので――?」
赤覇が志閃から札を奪い取った。
裏返してみたり、光に透かしてみたりと物珍しげにしているが、気を感じ取れない者には何の変哲もない厚紙でしかない。
「ほら、赤覇。札に気を込めてみそ?」
「お前の『みそ』が異常に腹立つ」
赤覇は言いつつも、片手に持った札を見据えた。眉間にしわを寄せ、必死で札に気を送ろうとする。
「…………」
そして数秒――。何も起こらない。
「ブハッ……! いやいや赤覇、それ札にガンつけてるだけだからっ!」
耐え切れなくなったのか、志閃が噴きだした。
「お前、オレが仙術使えないのを知っててやってるだろ?」
「あったりまえ~」
志閃はどこまでも癇に障る言い方をした。楽しそうなにやけ顔に、赤覇は青筋を立てている。
志閃はまだニヤニヤしながら、赤覇の持つ札を奪い取った。
「ほら、飛露」と飛露に向かって札を放り投げる。
「まじめにやれ」
そうすごみつつ、飛露は自分に向かって飛んできた札を無造作に横へと払いのけた。
札に指が触れた瞬間、その場所から札が細かな破片となっていく。
飛露の手の動きに合わせて彼の左へと流されつつ、その破片はさらに小さな塵になり、最終的には霧散した。




