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五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
一章 微睡む蓮と姫将軍
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一章 [1/21]

 三方を山に囲まれた扇状地に、ここ――桃源(とうげん)国の都はあった。名前は源京(げんきょう)。しかし、国の頂点である帝が住む都市なので、帝都と呼ばれることも多い。


 扇状地の(かなめ)の部分を挟み込むようにして、川の両端に帝が住み政務を行う宮殿がある。

 宮殿から川下方向へ建物や道が放射状に広がり、それらは扇の先に行くにつれて質素なものになっていく。

 さらにその先には丘陵地帯が広がり、ところどころに山肌になじむ黒灰色の屋根が密集する村が見えた。この丘陵地帯のさらに先に、(こう)との国境――ひいては現在戦が行われている前線がある。


 宮殿の裏には急峻な岩山が続き、そのところどころに背の低い松や草がはりつくように生えている。あまりに山が高いので大きな木はない。


 桃源は辺境の国だった。

 山がそそり立つ高地のわずかに開けた扇状地に帝都を造り、山間(やまあい)や比較的緩やかな斜面に村がある。村々をつなぐのは整備の行き届いていない砂利道で、国から出る道も細く、他の国との交易はほとんどない。せいぜい、神仙の膝元と呼ばれるこの国に仙術の修業をしに来る者がいるくらいだろう。


 こんな地域が欲しいなど、現在攻めてきている廣の皇帝はよほど物好きで貪欲に違いない。



  * * *



 泉蝶(せんちょう)が少女を運んだ禁軍の拠点は宮殿の入り口付近にあった。

 川を挟んで左右に広がる宮殿の、南岸側の正門を入ってすぐ左手。低い塀の先に五角形に兵舎が並べられ、その内側に会議室、医務室などを備えた本部棟や武器庫、演習場などがある。


 泉蝶は日干し煉瓦で作られた兵舎の間を大股で抜け、医務室へ少女を寝かせると同時に医者を呼んだ。


「そんなに大声で呼ばなくても聞こえますよ」


 緊張感のない声で応えながら、中年の医者が部屋に入ってくる。


「どうしました? 訓練中に誤って部下をのしてしまいましたか?」


「そんなヘマ、するわけないでしょ!」


 自分より年上の相手であることなど全く気に留めないきつい口調で答えて、泉蝶は少女を寝かせた布団をあごで指した。

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