三章 [2]
「そう言えばよ」
赤覇も無意識にではあったが、辺りの雰囲気を変えるために、新しい話題を口にした。
「あの占い師、どうなんだ? 信頼できるのか?」
「ん~、仙術の能力だけなら俺と同じくらい? もしかしたら向こうの方が少し上かも……」
志閃はすでに挑発の姿勢を解いて、いつものだらしない様子だ。
「俺はぁ、どちらかというと攻守に特化した戦闘型の気を持ってて、あの占い師は未来が見えるっていうか、カンが鋭いって言うか――。まわりの気の流れにかなり敏感で、気の様子から遠くで起こっていることや将来起こることを察するのがかなりうまいと言うか――。
……泉蝶ちゃん、俺の言ってること分かる?」
「とりあえず、それなりにすごい占い師ってことでしょ?」
泉蝶は答えた。志閃の説明を半分ほどしか理解できていなかったことを見透かされた驚きは、押し隠している。
「まっ、間違ってないかな~」
「そんな占い師が、疑ってるってことは――。……怪しいじゃねぇか、あの小娘」
赤覇まで水蓮のことを小娘呼ばわりした。その表情は複雑だ。
帝のどっちつかずな情報や占い師の忠告、水蓮に同情し案ずる気持ち――。色々な思考が浮かんで混乱する。
泉蝶も同じだ。今まで話してきた水蓮は、少し控えめなところもあるが、明るく冗談も言うような普通の少女だった。
「でもさでもさ!」
唯一、完全に水蓮を擁護する立場の志閃が異を唱えた。
「俺、水蓮ちゃんの気、かなり好きなんだよね。近くにいて安心するって言うか……。あんな穏やかな気を持ってる子が悪い奴なわけないじゃん」
「もちろん、陛下の夢のことは念頭に置きますが、完全に水蓮さんを信じるわけにはいきません。気の感触だけで善悪を決められるほど、世の中は単純じゃないんですよ、志閃」
王紀の口調は厳しい。
「俺、先輩!」
口の悪い若手将軍に冗談めかした調子で注意した後、志閃は少しだけ真面目な顔になった。
「水蓮ちゃんを信じられないなら、それでもいいけどさ……。水蓮ちゃんが救世主でも、敵でも、ただの女の子でも、そのうちわかる。それが運命。でも、シロと言いきれないからって、いじめたりとかはしないでほしい!」
「いじめなんて姑息なことはしませんよ。あくまで『監視』です」
「監視っ言われても、俺は気で何かやられたらお手上げだけどな」
仙術に疎い赤覇は、大げさなしぐさで両手を頭の上に上げてみせた。
「今のところ、禁軍拠点内に変な気の流れは見えないから大丈夫っしょ。な? 飛露」
志閃はもう一人の仙術に明るい将軍を見た。彼ひとりの言葉では水蓮をかばっているだけのように聞こえるからだろう。
「……いらだたしいくらいに凪いでおる」
ひどく不機嫌な様子で飛露がうなる。
「お前ら、常に禁軍の拠点内にある気の監視をしてるのか?」と赤覇が問えば、
「監視って言うかぁ、自然と見えちゃうんだよね~。俺、実は禁軍のなかでも気の感度がめちゃくちゃいい方なの」
「あの小娘の近くは常に見張っておる」
志閃と飛露がそれぞれ答える。




