二章 [13/13]
「彼女の気は、うまく隠していますが、なかなか大きいのです。わたしは自分の先読みの能力に絶大な自信を持っています。たとえ彼女が神や仙であったとしても、あの大きさの気の訪れに気付けなかったことは引っかかる」
白伝は水蓮の訪れを予知できなかった様々な可能性をあげたものの、最終的には水蓮が気付かせないように何かしらの妨害をしたせいだと言いたいようだった。
「なるほど」
「ですから、どうぞ、彼女からは目をそらさないよう――。陛下も言われていましたが、彼女は救世主であるかもしれないし、我々を破滅に導く者であるかもしれない」
「もとより、我々も彼女を信じ込んで自由にさせるつもりはありません」
王紀は穏やかに笑んでいるものの、その表情にはどこかしらすごみが感じられた。
「よろしくお願い致します。この先、桃源の情勢はさらに悪くなる。悪い気が満ち、悪しきものが付け入る隙がたくさんできるでしょう。ただし、真の救世主が生まれる余地もある。しかしこれは、まだ不確かな未来。道がたくさんありすぎて、見えるようで見えない。勘でしかありませんけどね。『占い師の勘』ですが」
『占い師の勘』と言われると、とたんに彼の言葉に信憑性が増した気がする。占い師が「そんな気がする」と言えば、それはすでに予知になるのではないだろうか。
「本来ならば、証拠と確証の得られない予知はお伝えしないことにしているのですが……」
白伝はそう肩をすくめている。
「わかりました。わたしたちは白伝様の悩みを聞いただけ。そういうことでよろしいですか?」
「そうですね。また、何かありましたらご相談させていただくかもしれません……」
王紀の言葉に白伝も合わせた。王紀は穏やかにうなずく。
「それでは、わたしはこれで――」
白伝も凛々しい顔でうなずき返して踵を返した。
「……大丈夫なの?」
彼を見送りながら、泉蝶は小さくつぶやいた。
「さぁ?」
王紀は淡い笑みを崩していないが、その目は鋭い。頭の中では、先ほど得たあいまいな情報が飛び交っているのだろう。
占い師は、禁軍将軍の間に暗い不安を残していった。あたりを吹き渡る熱を帯びた風が不気味で気持ち悪い。
先ほどまで何とも思わなかったことさえ、なにか悪い予兆に感じられた。
「とにかく、戻りましょう」
無言で考え込む王紀に言って、泉蝶は大きく足を踏み出した。体にまとわりつく風も、不穏な予感もすべて鋭く断ち切るように――。




