二章 [12/13]
そうは言っても、帝付きの占い師――白伝は禁軍将軍と同じか、それ以上の地位を持つ存在だ。二人は目配せをしあうと、橋を戻り始めた。橋のたもとまで戻ると、頭の先からくるぶしまで灰色の装束をまとった白伝が見えた。
「呼び止めてしまい、申し訳ありません」
白伝は二人を人気のない中庭まで案内ながらそう言った。
「禁軍で保護している少女のことでお耳に入れておきたいことがあり――」
彼は線が細く暗い印象があったが、頭巾の下にあるその顔は想像とは異なって涼やかで、立ち振る舞いも堂々としている。
「かまいません。なんでしょうか?」
王紀はほほえんだ。
「わたしはご存じのとおり、占い師です。今まで桃源に起こる様々な吉兆や凶兆を事前に見てきました。もちろん、今回の戦のことも――。ただ、陛下のご覧になった夢のことは、わたしのあずかり知らぬことです。陛下自身も高度な仙術を修められておりますので、陛下の夢のお告げをただの夢と切り捨てることは致しません。しかし、わたしの予知に救世主は出ず、さらに、彼女の訪れは……、見えなかった」
彼の占いに出てこなかったということだ。
「その点だけはお伝えしておきたくて――」
「それは、悪いことなのですか? 良いことなのですか?」
「わかりません。彼女が正真正銘の神仙の類で、わたしの予知の能力が及ばない神秘の存在である可能性もあります。逆に、桃源にとってとるに足らないただの少女だから見えなかった可能性も。はたまた、わたしの占いを妨害したのか……。戦の行く末に夢中になるあまり、わたしが見逃してしまったのか……」
白伝は苦笑いを浮かべた。
「あなたは、見逃してしまったとは思っていないように見えますが……」
王紀が笑顔のまま首をかしげる。その仕草は、挑発しているようにも見えた。
「そうですね」
白伝は苦笑いを残したまま、首をめぐらせた。彼が向いたのは禁軍拠点の方向だ。




