一章 [11/21]
* * *
「いいね、この子。泉蝶ちゃんみたいにボンキュッボンなのもいいけど、この子みたいにちっちゃいのもそそられない?」
今朝助けた少女の眠る病室に入るや否や、志閃がそう少女の感想を述べた。一瞬で布団に隠された彼女の体型を見抜いたらしい。
できれば、志閃をここに連れて来たくはなかったが、他の将軍に引き留めておいてもらうのは申し訳ない。そう思い、志閃の同行を許した泉蝶は、一瞬で後悔した。
「変なこと言うんじゃないわ!」
泉蝶は志閃に怒鳴ったが、彼はへらっと笑って全く懲りた様子がない。一方の泉蝶は、顔から火が出そうなほど熱い。
今この部屋にいるのは、禁軍の五将軍と目覚めぬ少女だけだ。泉蝶たちが病室を訪れた時には秋夕医務助手がいたが、彼女は志閃を見るや否やあっという間に出て行ってしまった。
「え~、でも体つきって結構重要だしー。な? 赤覇」
「うるせぇ」
赤覇は志閃を見ることもなく、うなるように一言。
「わかってくれるよな? 飛露」
「貴様の変態性癖をわたしに押し付けないでいただこうか」
飛露は赤覇以上に冷たい。
「お前ガチガチ過ぎ。だからもてないんだぞ~。王紀は理解してくれるよな?」
「飛露の件でしょうか? あなたの性癖のお話でしょうか?」
王紀はいつものように穏やかな笑みを浮かべながら問うた。
「飛露の件は、半分賛成ですね。飛露は潔癖症で、真面目すぎるところがあるんじゃないでしょうか。しかし、そこが飛露の美点だと思いますよ。彼はいつだって道徳にかなったことを言ってくれます。
あなたの性癖のお話は、僕に幼女趣味はないので如何とも言いかねますが、人それぞれでいいんじゃないでしょうか。僕はどちらかと言えば、泉蝶のような女性的な肉体に魅かれますね」
「さらりと変なこと言うんじゃないわよ!」
王紀の口から出た想定外の言葉に、泉蝶はすでに赤かった顔をさらに赤くした。今では顔どころか耳、指の先まで熱い。開け放たれた窓から入ってくる風は生暖かく、火照った顔を冷やしてはくれなかった。
「泉蝶、先ほどから怒鳴りすぎですよ」
しかし、王紀は泉蝶の慌てぶりなど全く気に留めることなく、囁くようにそう指摘した。自分の唇に人差し指をあてるしぐさ付きだ。
「あ……」
王紀の言いたいことを察して、泉蝶ははっとした。無意識とはいえ、怪我人の眠る部屋で叫んでいたのだ。




