表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五百禁軍の姫  作者: 白楠 月玻
六章 消えた蓮と救世主
104/143

六章 [4]

「いえ、そこまでは言いませんが、あなたの不真面目な態度には眉をひそめるものがあります。今まで将軍を務めてきた実績、功績は十分にありますので、クビとは言いません。しかし、しばらく謹慎していただきた――」


「いや、なにそれ。マジでわけわかんないんだけど」


「おい、志閃(しせん)。陛下の御前だぞ」


 さらにいらだつ志閃をたしなめるように言ったのは飛露(とびつゆ)だ。


「じゃあ、飛露は納得できるわけ? この、戦の! 大変な時期に、俺が、索冥(さくめい)軍の将軍を十年近くやってきた俺が、将軍位をはく奪されて、謹慎!」


 志閃が大きな身振り手振りで話しているのは、自分の中の怒りを少しでも発散させるためだろうか。


「陛下の判断ならば、それに従うのみだ」


 一方の飛露はいたって冷静だ。


「そういう、『陛下が』『陛下が』って言って、何も考えない飛露のそういうところ、俺、本当に嫌い」


「志閃」


 飛露がたしなめる。


「なに? じゃあ、『わかりましたー。謹慎しまーす』ってうなずいて、自軍のことも国のこともほっぽっていいわけ?」


「…………」


 飛露は答えない。


 術師としての側面も持つ飛露は嘘をつかない。飛露自身、納得できない命令だと思ったのだろう。何も答えないのがその証拠だ。

 しかしそれでも、彼はそれが帝の命ならば従う意志がある。


 志閃は大きなため息をついた。


「やってらんないわ。俺、『不真面目』らしいし、勝手にすればいいよ。ただし、前線から宗剛(そうごう)王紀(おうき)を呼び戻して、宗剛を中心、妖舜(ようしゅん)を補佐で索冥軍をまとめさせて。もしそれで回らないような問題が起これば王紀に」


「それを決めるのはあなたではありません」


 しかし、帝のそばに控える文官がきっぱりと志閃の言葉を否定する。


 志閃の眉間に深いしわが寄った。いつも穏やかに垂れている目がいらだちに鋭く細められる。志閃の纏う気が怒りをはらみ、周りのものを威嚇するように大きく膨れ上がった。


「本当に、マジでむかつくんだけど」


 そう言う志閃の声にも、いつもの陽気さが全くない。


「飛露、志閃の気を封じろ」


 そんな志閃の様子に低く命じたのは、顔すら確認できないような暗い影に鎮座するこの国の帝だ。


「御意」


 飛露がうなずいて、すばやく相手の気を封じる術式が書き込まれた札を放つ。しかし、それが志閃に届くことはない。飛露の札は、志閃の放った札と衝突して激しい音とともに砕け散った。

 飛露は背負っていた弓を取ると、自分の前を大きく薙ぐ。志閃は飛露の札を迎撃する際に、札を二枚はなっていた。一枚は札破壊用。もう一枚は砕けた札を目くらましに、飛露を攻撃するつもりだったようだ。

 飛露に叩き落とされた札が強い光を放つ。目くらましの札か。飛露は片手で目をかばいつつ大きく一歩飛び退った。


「なに? 飛露、本気で俺とやりあうわけ?」


 こちらも距離をとって飛露を見据える志閃からは、ただならぬ敵意があふれている。彼と相対する飛露だけでなく、謁見の間内を警護する武官たちにも緊張が走る。扉を守る兵が二人、壁際にいる兵が二人。三人は護衛部隊所属、一人は戦術部隊所属の禁軍兵士だ。


「周りの禁軍隊員に、角端(かくたん)軍将軍飛露より命令だ!」


 飛露は志閃の問いに答える代わりにそう声を張り上げた。


「帝の命に背く反逆者――志閃を捕えよ!!」


 そう命じる飛露の様子に迷いはない。

 しかし、命じられた側はそうはいかなかった。捕えろと言われた相手は、禁軍の一将軍なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ