六章 [3]
禁軍隊舎を出て、朝焼けと虹色の気が流れる空を見ながら、王宮の奥へ。
謁見の間周辺は、真剣な顔をした禁軍の兵士たちが警護を行っている。もう少しで夜勤と日勤の兵士が交代する時間だが、夜勤の兵士たちは全く疲労の色を見せていない。
今朝の謁見の間は、すべての戸と窓が締め切られていた。外から謁見の間の様子を見ることはできない。あまりいい話ではないかもしれない。物々しい雰囲気に、志閃はそう思った。
薄暗い謁見の間の壁際では、仙術の照明装置が光っている。しかし、その光量は抑えられ、中央部まで十分に照らせていない。志閃たちがいる場所はまだお互いの表情がわかるほどに明るいが、帝の座っているであろう上座は完全に陰になってしまっている。気や気配からそこに帝がいることはわかるが、その表情は全くわからない。
「でー? 何の用っすか?」
志閃はあいさつさえせずにいきなりそう切り出した。
「貴様! 無礼であろう!!」
あまりの馴れ馴れしさに怒り狂った飛露が、志閃の首根っこをつかんで無理やり深く頭を下げさせる。
「こやつが非礼を申し上げたこと、謹んでお詫びいたします、陛下」
飛露はその場にひざまずき、志閃よりも深々と床に頭かつかんばかりに礼をしている。
しかし、帝から返事はなく、代わりに帝のそばに控えていた文官が前に進み出てきた。
「志閃将軍、陛下からの用件をお伝えいたします」
中年の文官は、上質な紙を開くと、その内容を読み上げてみせた。
「『桃源国禁軍仙術部隊索冥軍将軍志閃に、無期限の謹慎を言い渡す。謹慎期間中の禁軍、また、軍人としての職務遂行、禁軍拠点を含む王宮内への不必要な立ち入りを禁ず』と言うことでございます。志閃将軍は、自分の部下に廣の間者がいることに気付かず、つい昨日まで廣に情報を漏らすという禁軍将軍としてあり得ない失態を犯しました」
「いや、俺、ちゃんと気づいて昨日対処したじゃん」
志閃はすぐさま言い返した。
「そもそも、自軍から間者を出すと言うこと自体が由々しき事態でございます。管理不行き届きと言わざるを得ないでしょう」
「まだ詳しくは解析中だけど、うちの周賢は誰かに操られていた可能性が高いんだって。そりゃ、操りの術にかかった未熟な周賢や、すぐに気付けなかった俺にも落ち度はあるのかもしれないけどさ」
「他の部隊ならまだしも、仙術部隊がそれではだめなのでございます。仙術部隊の将軍が敵の術を見抜けず、自分の部下が敵に情報を漏らすのを許してしまった。志閃将軍、陛下は、今のあなたに自分を守る非常に重要な軍の一将軍を任せることはできないと考えられたのです」
「は?」
志閃の眉間に浅くしわが寄る。
「もちろん、あなたが戦闘力のある強い術師であることは存じ上げております。ただ、あなたは不真面目すぎた。この戦で国が乱れている今、あなたのような人間に国や陛下を守ると言う重役を負わせることはできません」
「なに? 俺が桃源を裏切るとか思ってるわけ?」
志閃の言葉がいらだちを帯びる。彼の纏う気も、それに合わせていつもの陽だまりのような穏やかさをひそめていく。




