一章 [7/21]
「戦について、何か新しい情報はないの?」
他の将軍たちとのやり取りで緩みかけていた気を引き締めて、泉蝶が問うた。その言葉に、やっとすべての将軍の意識が会議に向く。
「その話、昨日もしてね~?」
さっそく志閃が文句を言うが、泉蝶と弓を背負った青年に一にらみされ仕方なく黙った。
「一日違えば戦況も変わる。それでも桃源の帝を守る禁軍将軍か。貴様、阿呆か」
今まで黙っていた最後――五人目の将軍が冷たく言った。鋭い灰色の瞳に敵意にも似た冷たい光をたたえている。
「お前みたいに帝様ラブな人もどうかと思うよ? 飛露」
黙った次の瞬間には、またすぐに調子を取り戻す志閃。
「貴様、わが忠誠心を『みかどさまらぶ』だと!」
弓を持った青年――飛露がかみつかんばかりの勢いで怒鳴った。
彼の帝への忠誠心は禁軍将軍一だ。彼の前で帝をないがしろにするような発言は禁忌なのだが、志閃は全く気にしない。
「志閃謝りなさい」
しかし、慣れた様子で泉蝶がたしなめれば、「泉蝶ちゃんが言うなら」と志閃はすぐに頭を下げる。その軽い調子に、また飛露と根がまじめな赤覇が怒りそうになったが、その前に泉蝶が志閃を一発殴っておいた。
女好きの志閃は女に殴られても全く怒らない。それどころか喜びすらする変態なのだが、泉蝶のげんこつが本気の一発だったと察せたため、赤覇と飛露は握っていたこぶしを解いた。
「怒った泉蝶ちゃんもかわいいなっ」と頭を押さえながら涙目で笑う志閃に追い打ちをかけるのは、あまりに忍びなかったのだ。
「王紀」
泉蝶はふんと荒く鼻息をついて、この五人の将軍の中で一番理性的でまともだと思われる、青年に声をかけた。卓の前で本を読んでいる美青年だ。
「はい、では僕が進行を――」
王紀は本を閉じて、傷ひとつない顔に柔らかな笑みを浮かべた。
「僕はご存じのとおり騎馬隊を率いています。それで、毎日少数の部下に前線の状況を伝えるよう頼んでいるのですが――」
「前置きはよい」
低く言ったのは弓を背負った飛露だ。
「飛露かたーい」と言った癖毛将軍志閃の言葉は無視された。
「わかりました」
王紀は穏やかさを崩さずに言って、本題に入る。




