第8話~守護と壊造~
~工藤side~
「なんで…なんで凍らないの!?」
北崎が目を開き自らの掌を覗いた。
「凍る?確かに、全然風がこな…い?」
周りを見ると後ろにいた速水も不思議そうな顔をしていた。杉山と龍王は当然の様に立っている。
「ははっ。風なんて弱っちいの効かねぇよ。俺の魔法は総帥の剣すら通さない盾。それを好きな場所に好きな大きさで出せる。元王様の無敵の守護魔法なんだよ!」
そう言ったのは龍王だった。かつて守護の賢者が使った魔石。それに認められたのだからある程度はできるだろうと思っていたが、まさかこれ程とは。
「この魔法、守護の魔法のはず。どうして貴男が…?」
北崎が見つめていた手を下ろし問いた。
「知らねーよ!できんだから仕方ねぇだろ」
北崎が少し固まってニヤリと笑うと振り返る。
「思わぬ収穫だったわ。守護の賢者が再び現れた。かなりの魔力を持っている。ボスに伝えなきゃ」
神崎が窓から飛び降りようとしながら呟く。
「大いなる計画に巻き込まれ大変なことになる」吉良の言葉が頭に過ぎる。
「大いなる計画…大いなる計画ってのとそのボスは関係あるのか?」
俺が恐る恐る問う。
「無い…かもね。貴方達は逃げ場も無く死にゆき、そして新たに作られる。壊造される。それを拒否する権利は貴方達には無いの。じゃぁね、無敵の坊や」
、入ってきた場所から北崎は落ちていった。
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「なんなんだよ」
大半の窓が粉々になり床は凍り付き資料などで散らかった部屋で俺は静かに呟いた。
「俺の魔法が無かったら大佐も少尉も死んでたんだぞ?お礼は?」
龍王が偉そうにニヤニヤしながら言った。なんでこんな言い方しかできないんだよ。
「ありがとね。神護くん」
速水は素直に笑顔で応えた。後ろから速水が、お前もやれとばかりに肘でチョンと押してくる。
「ありがとな」
どうでもいいお礼を言い、本題に戻す。
「それであいつの言っていた、壊造。どういう事なのでしょうか…」
杉山に答えを求めるように杉山を見て問いた。
「それは分からぬが、大いなる計画。壊造。全てが繋がる訳ではない。熱也、南東司令部で捜査してくれ。あっちから中央図書館は近いからの。頼んだぞ」
こっちに仕事押し付けんのかよ…。断る訳にもいかないしな……。
「…解りました」
敬礼をし、速水と目を合わせドアノブに手を掛けた
「では、」
「じゃぁな!」
寂しさも感じられる杉山の声と開放感すら感じられる龍王の声を背中に扉を閉めた。
「帰りましょう。大佐」
「ああ。結構留守にしたから仕事が山積みだろうな」
「その仕事をやるのはいつも私たちじゃないですか!」
「ははっ。今回は俺も頑張るさ」
「お願いします」
その夜は8時間かけて南東司令部に帰ったのであった。