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魔法世界 world of magic  作者: 熊猫ラブ助
第1章~壊造という名の二人の夢~
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第4話~出会いと出会い~

ツイッター始めたYO

mahousekaiで検索☆

あと速水さんは少尉です。

~速水side~


 爆音の鳴り響く戦場。私は崩れた家の物陰に隠れて流れ弾を防ぐ。それしかできない。

 同じ町の人はもういない。私が寝ている間に逃げたんだろう。爆発音で目が覚めた私にこの状況を理解するには時間がかかった。

 私は戦争なんか怖くなかった。爆発も銃撃もそれほど怖くなかった。

 それよりか私の持っているこの力の方がよっぽど怖い。

 私は深い青色の石の付いたネックレスをしている。気が付けばその石と会話したこともあった。でも、もう今は会話以前にこの石が何を感じて何を考えているかもわからなくなった。

 でもこの石のせいで私は不思議な力を使える様になっていた。この力を使うと水が思うように動き、変化するようになっていた。

 その力を恐れ私の周りに人は集まらずにむしろ避けていた。そのせいかは分からない。

 でも私も人間は嫌いだ。

 今だってそう。平和に暮らしてればいいのに争い、傷つけあう。こんな世界、誰が望んだのかは分からない。誰も望んでいない。私はそう願っている。

『ブワッ』

 背を掛けていた家の在外(ざんがい)が燃え上がった。

 私は崩れ落ちる瓦礫(がれき)の奥にある激しく醜い戦いとその前で私を見つめる1人の男性と目が合った。

 綺麗な紺色の髪で右眼を隠している。(とし)は、20歳前後というところだろう。赤い目立つ服に左胸の部分には不思議な円の中に三角形と逆三角形が合わさり星のようになっている記号。離れていても分かる全てを悟ったような()。決して情けや同情を掛ける眼では無かった。

「なぜ逃げていない」

 その男は優しさを含んだ静かで低い声で話しながら歩み寄る。

「やっ!こないで…」

 必死の思いで声を出すが男に聞こえているかは確かではない。

「大丈夫だ、俺は軍兵だからな」

 こちらに近寄りながら笑顔で話しかける。

「軍人は怖い人ばっかり!皆言ってる…」

 戦争をしている軍への怒りを込めて放った言葉。それを聞きまた話しかけてくる。

「俺は工藤 熱也中尉だ。君の名前は?」

 真後ろで銃の打ち合いをしているが、私しか見てないかのように安心した顔で話しかける。

「私は…怜子(れいこ)速水(はやみ)怜子。14歳よ」

 こんなにハッキリと話したのは初めてじゃないかと思うくらいしっかりと話した。

 怜子。これが両親が私に残した唯一の物。この名前だけは私の誇りだから。

「怜子か、いい名前じゃないか」

 名前を褒められて心の扉を開けようとしている自分がいるのに気がつく。人と話すのも久しぶりなのに、やけに安心しきっている。この人からそういう何かが感じ取れる。

「もう1度聞くがなぜ逃げていない。すぐに逃げるんだ」

 厳しい顔に変わって低い声で工藤が続けて話した。

「起きたら…こうなってて。皆私が怖いから見捨てたんだと思う」

 眼から涙が溢れてきた。なぜかは分からない。抱えてきたものを吐き出したからだと思う。

「怖い?なぜだ」

 この人には全てを話そう。そう決断したときすでに視界には工藤しか映らず耳には工藤の言葉しか届かなかった。

「私、変な力があるの。そのせいで皆から避けられて生きてきた!こんな国も世界も大嫌い!これが私!人から怖がられる人な…の」

 全てを吐き出したとき顔は涙で汚れ尽きていた。その涙は目から落ちると球体になり凍って地面で叩き割れた。

「はははっ」

 工藤が笑い出した。私は驚いた。また捨てられる。また―――――――――――――――――――

「この世界が嫌だ、なくなればいい。と言って逃げるのは弱者の考えだ。君は違う。その力、魔法がある。君が誰も苦しまない世界を作ればいいんだ。その力は(おそれ)る力じゃない。人を守り、人を導く力だ」

 そこまで言い切った時には涙を拭って綺麗になっていた顔がまた涙で溢れかえっていた。

「私は…私はどうすればいいの?」

「君は…いや、速水怜子。軍に入れ、そして君を認める仲間と国を、人を守りそしてまた認められる。こないか?軍へ」

 手を差し伸べる工藤の笑顔に一瞬見とれてからゆっくりと手を伸ばし工藤の手をしっかりと握った。

「うん!」

「もう1度言う。工藤 熱也。階級は中尉。二つ名、美炎の魔術師だ!」

 キメ顔と思われる微妙すぎる顔に微笑むとさらに工藤が口を動かした。

「俺がいなければ君は死んでいただろう、俺が救った命だ。もう無駄にするなよ」

 立ち上がってもう1度、工藤と満面の笑みで顔を見合わせた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――


――――――――――

「少尉!」

 工藤の声がきこえた。

「はい!なんですか?」

「俺が運転だからってそんなに笑顔で眠らないでくれ」

 寂しかったかな?

「はいはい。ちょっと昔の事を思い出して」

 今の私の胸には魔術師の規則で付けなければならない工藤の左胸に描かれているものと同じ魔法陣の中に私の自慢の青い魔石がついている。

「そうか。そろそろ中央司令部に着くぞ。正面門に()めるから早く総帥に言って兵を連れて任務に戻るぞ」

「はい」

 そうこうしているうちに正面門に着き2人は車を降りた。

「総帥起きてるのか?そろそろ(とし)だろ」

 工藤が笑いながら言う。

「総帥は仕事熱心な国のトップですから、誰かさんとは違って」

「どう言う意味だ?」

 工藤が笑顔から不思議そうな顔に変えて(たず)ねる。

「そのままの意味です」

 その一言で話が終わり急いで総帥の部屋へ向かった。

「昨日……放火し………(あた)りは水だらけ……」

 杉山の部屋の前で聞き取りにくい声が聞こえると工藤はこっちを見て不安そうな顔をしている。

 この人面白いな…。

 そして扉を開けた。総帥とどこかで見たことのあるような一般兵と思われる人がこちらに視線を移す。

「任務出発の連絡にきました。再度、南東司令部に戻るには時間が足りないので中央から増援の兵を10人程要請しに来たんですが」

 工藤が話終わると杉山が口を開いた。

「昨日の小僧…いや、龍王(りゅうおう)神護(しんご)じゃ。あの小僧を連れていけ」

 喋る(たび)(ひげ)が動く杉山を見て内心笑う私を他所(よそ)に工藤は話し始める。

「龍王神護ですか、総帥が勧めるほどの人物なのでしょう。では連れて行きます」

 工藤が辺りを見回しながら言う。

「昨日サインをする際に名前が無いと言うのでな、昔認識があったので名前だけは教えておいた。昔の約束でそれ以上は言えんがの。神護なら部屋にいるぞ」

 杉山は隣の部屋ということを示したかったのか(あご)で隣の部屋の方向に動かしたが、鬚が大きく動き表情に笑いが出そうになる。

「では兵の用意は」

「あの少年が入れば大丈夫であろう。昨日、戦い方を教えておいた」

「…そうですか。では、失礼します」

 工藤が敬礼し、それに遅れを取らぬように私も敬礼し部屋を出た。

 そして隣の部屋に向かう。

「本当にあの少年…いや、神護か。神護で大丈夫なのか」

 隣に龍王がいるからか、静かに喋る工藤。

「大丈夫ですよ。一応魔術師ですしそんなこと言って仕事やらせなかったらずーっとできませんよ」

「そうだな」

 そう言って扉を開けた。

「おっ。待ってました大佐。それに速水さんも。初仕事がんばりますよ!」

 中にいた龍王がガッツポーズで目を輝かせている。

「うん。よろしくね」

「たのんだぞ」

 工藤と私は一声掛けて部屋を出ようとした。

「ちょっと待てよ!」

 龍王の声で振り返る。

「なんだ?」

 工藤が尋ねる。

「一応自己紹介しておくよ」

 そう言って龍王は一呼吸おいて話し始める。

龍王(りゅうおう)神護(しんご)。地位は上等兵(じょうとうへい)です。あとは…あ、二つ名は光盾(こうじゅん)…光盾の魔術師です!」

 やばい――――――――――

 キメ顔が大佐にそっくりだ。

ご愛読ありがとうございます。

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