4.美少女は愛で!悪は砕く!!それがー俺のルゥールだぁ!
「あのー、すいませんが、ここどこですか?」かー」かーー」
のんきな声が、黒い空間に響いた。全ての時が止まったようなきがする。
戦士は腹の傷に薬草を押さえ込んだまま、脂汗が浮かんだ顔で後を振り向いた。
金髪の長髪で頭の両横を黒いリボンで結んだ少女が、突然扉から現れ立っていた。
中性的な凛々しい少女の声だ。背は姫さん位だろうか。どうみても子供だ、小さい。
だが、装備が何とも機能面で疑問視のある服装だ。可愛い顔して破廉恥な装備だ。
胸と股間を申し訳程度で隠した赤い金属の装備だ。太ももまである黒い皮のような薄い
ブーツを装備。黒い手袋、黒いマントを付け、腰にはロングソード一本装備した軽装。
黒い瞳でこちらをキョトンと見ていた。
魔王の声が響き渡る。
「結界に触り、迷い込んだか小さな羽虫よ。面倒だー「うわー!お嬢さん!
大丈夫ですか。ああー可愛い御御足にこんな酷い傷が、なんてこった!!」
少女魔道士の横にスッと、いつの間にか移動し膝をつきワタフタしている。
「美人のエルフさんの玉の御肌が傷だらけ!!」
今度は、スッとエルフのそばにいつの間にか移動し手を恭しく取る。
「僕には、あなたの全てはわからない。
でも、あなたの顔が悲しみに曇るのはつらい。可愛い顔に涙は似合わない」
姫さんを助け起し涙を白いレースのハンカチで拭ってあげ渡す。
「悲しみは時だけが癒す。
ぼくにもあなたを癒し、可愛い顔に笑顔を戻す事ができればいいのに、無力です」
聖騎士にも手を差し出し、もう一つ白いレースのハンカチを出し涙を拭ってあげて渡す。
「あんた・・・」戦士はこの何も知らない少女に、逃げろと言いたかった。
いったい何処に逃げろというつもりだ。
「あなたはどうしてこんな所に・・・」姫さんも突然の事に、正気に戻らされる。
「いけない。どうすれば・・・」聖騎士はもともと自己犠牲が激しい。他人、特に弱者
への理不尽な仕打は見逃せない。今は自分の事は二の次にし、正気に戻ったようだ。
ここで正気に戻ったのは、いい事だったのか。あのまま死ねた方が・・・
ボーゼンとみんなが見つめる中、少女はマントを翻し数歩離れる。
「もうよいかな?不幸な小さな羽虫よ、さあ、数刻伸びた生にー「ヒール!」
また、しゃべりを遮り、みんなに唱える。しょうがないので野郎にも唱える。
「なに!?」戦士の身体も淡い光に包まれる。腹の傷が消えた。ただのヒールでだと。
魔道士も直った自分の足を見ている。他のみんなも完全回復して、驚いている。
「おい。羽虫よー「どうです?気分はよくなりましたか」
「ちょっ、そこー「もうーみなさん美人さんですね。困っちゃうな~」
「・・・「・・・」
「おい、そー「しかし、ここはいったいどこなんですか?」
「グオオオオー、無視するか!この世界の覇者である余を、この羽虫が!!!
もう面倒だ。全てを殺せ、犯せ、汚せ、晒せ、蹂躙せよ!!!!」
戦士は時間稼ぎ?に感謝する。全員が冷静になったようだ。
少女のヒールがあれば、もう少しまともに戦えるだろうか。ほんの少しだけ・・・。
いや、ロングソードは装備しているようだが、あまりにも華奢だ。
ヒールの素質があるのだろうが、あまりにも戦闘向きではない。
足捌きや動きが素人だ。そうただの初心者だろう。
「少女よ。これでもう少しマシな死に場所を探せるようになった!感謝する」
ガシャ!ガキン!と盾と剣を構え、最大最高の信頼の挨拶を送る庸兵団長の戦士。
「いやー、こんな所で貴方の様な可憐な少女に出会えるとは、地獄も満更ではない」
少女にウィンクする優男。皆に多種多様な強化魔法を掛け続ける。
「ごめんなさい。こんな所でなければ褒美を、今は私の感謝しか送る事ができない」
少女に姫は申し訳ないと頭を下げる。そして、再度戦いに鼓舞する。全体士気上昇。
「再びの精霊との対話を叶えて頂きありがとうございます。最大の感謝と精霊の加護を」
エルフは少女に、人の子に初めて、自分が死滅した際の精霊の加護の譲渡を契約した。
「あなたは私が必ず守る。これは、最後で、新たな、無二の私の決意。神聖な忠誠!」
少女の前に聖騎士は跪き誓う。例え、死に瀕しても最後の一瞬まで、諦めず信じ続ける。
「・・・ありがとう」ニコッと魔道士は不器用に最大の感謝を込め、笑顔と共に歩む。
全ての魔力、生命力を削っても少女を逃がす為の血路を開く。聖銀の杖の安全弁を外す。
「・・・」姫の生き残った3人の従者はウロウロ。
「あのう・・・」何か言いたそうな少女を後に下げる。まだ言いたそうにしてる。
「これは、俺達の戦いだ」戦士は前に眼を向ける。少女を守るために。
「遺言は終わったか。有象無象の塵芥共!
勇者たる奴がいないお前達で、どれ程の対抗できるのか試してみよ!身の程を知れ!」
「『クロスセイバースラッシュ』!」聖騎士の先制攻撃!
前衛の聖騎士の構えた剣から、前方に白い光の奔流を伸ばし、横に凪ぐ!!
ドババババババー!と5m程伸び黒騎士達を弾き飛ばした。
「『ウルファング・シールドバッシュ』!」戦士の盾攻撃!
戦士の盾から丸太ほどの気が前方に放出!黒騎士達に風穴を開け数m吹き飛ばす。
「『スロークロック』」格好は派手な優男だが、地味に前方に状態異常を引きを越す。
「水の精霊よ。愚かな者共の足元を戸惑わせよ!」エルフの精霊魔法。
前方広範囲に薄く水の皮膜が張られ、歩みを惑わす。攻撃ができない。
「『シューテイング・ナロー・ダークサンダー』!!魔道士の雷魔法。
エルフとの合体魔法。広範囲に雷が落ち、水の皮膜に通電し、通常以上に広範囲に影響。
直撃し戦闘不能になるモノ、身動き出来なくなるモノが多数倒れる。
「右側の黒騎士2体弱っています。従士隊!抜刀!」「はっ!」姫の指示と従士隊攻撃。
そこを弱っていない黒騎士が従士隊を襲う。
「『ローゼン・スラッシュウイップ』!」姫の鞭攻撃!
従士隊に襲い掛かった黒騎士を攻撃、そこを従士隊がとどめの攻撃!
「『ホーリークロッツシールド』!」聖騎士が全体防御魔法!
倒しても、倒しても、次から次に溢れて来る。黒騎士と野獣型魔物の波状攻撃。
聖騎士の膝が地に着きそうになる。身震いと共に立ち直す。
魔道士の杖が赤く発光している。唱えようとして咽る。口を押さえ、無理に呑み込む音。
従者をかばって、姫がダメージを食らう。膝をつきながら、強化魔法を唱え続ける優男。
精霊にお願いし続けトランス状態のエルフ。
バアン!戦士の盾が木っ端微塵に弾け飛び、戦士自身もダメージを食らう。
今倒れた黒騎士の後から、また新しい黒騎士が現れる。
いつも、酷い戦闘だった!こんなのばかりだった。いつもボロボロだった。
だが、最後はいたいけな少女を守る戦闘だった。助ける事は結局できないだろう。
こんな死に様なら、先代達に顔向けるだろう。
だが・・・賭けるか。あんな小僧の勇者には使う気にはならなかった。
「聖騎士どの!あとどの位持つ」
「ふっ!幾らでも持たせて見せるよ」ドガガガガ!「『ホーリークロッツシールド』!」
やせ我慢を・・・感謝する。
「俺は、この少女のために、コレを使ってみようと思う」
「それは?」
「庸兵団には色々とまずいものがあるんでね!
代々コレが受け継がれる。全てを無に帰する為の魔法カード。
奴が使おうとしたのに似ている。生命力や魔力を全て反転させ身体毎吹っ飛ぶそうだ」
「なっ」
「本当なら魔王にでも使いたかったが、無理そうだw
だから、これで後の扉を吹っ飛ばせるか試してみようと思う。彼女のために」
「なら・・・私のほうが魔力高い・・・」
「いや、魔道士には少しでも穴が開いた時の事をお願いしたい。
少しでも開けば、転送可能か。他の方法があるか。これは俺にはできん。彼女を頼む」
「わかった・・・」
「みんな、すまんな。特に姫さんには、国の事もあるのに」
「ふ、愚問ですわね。彼女が居なければ、すでに終わっていた。彼女だけは救います」
皆、こんな状況なのに笑っていた。それはとても清々しく殉教者のように。
***
扉の前で手持ちぶたさに、金髪の毛先を弄りながら静かに見ていた。
まじ戦闘すげー。このパーティ強いな。でも難易度高すぎね?
モンスターの湧きというか、レイド戦用じゃないかなこの数と規模。
さっきは美少女がいたから辻ヒールしちゃったけど、良かったのかな。
すげー感謝されたようだけど・・・あーまた傷付いてる。リアル戦闘だからなー。
押されているよね。ヒーラがいないのはバランス悪いよね。
もう、これギブアップだよね、きっと。
戦闘参加してもいいのかな。身体の調子も試したいんだけどな。聞いてみようかな。
いま、戦士が後衛にて何か話し合っている。
お姫様のような格好した娘に話しかけて、許可をもらおうと話した。
「え?それはかまいませんが、でも今話し合いで・・・」
よし!許可はもらったし、戦闘を試してみよう。
***
「あのう~、少し戦ってみてもいいですか」
私と同じ背丈の金髪の少女が、私に話しかけてきた。
しかし可愛いのに、この露出過多の格好はいただけませんわ。
お城に帰ったら、似合いのドレスを着させたいですわね。
・・・ふっ、未練ですわ。時間があれば、彼女に何かしらの手紙を持たす事も・・・え?
彼女が戦うのですか、ヒールの援護でもして頂けるという事でしょうか。
それはうれしいですが、今戦士が貴方のために小さな賭けをする所。
「え?それはかまいませんが、でも今話し合いで・・・」
彼女が、ロングソードを抜いて、トコトコと前に進んでいく。え?え?ええええー!?
***
「たのんだぞ。魔道士どの」戦士は笑う。
魔道士は俯く。
どれ、聖騎士にもうちょっとだけとお礼を・・・ええええええー!?
後にいた少女が最前線に出ていた。
「・・・!?」魔道士も動けないでいた。
少女は、黒騎士に向かってロングソードを振りぬいた。ガキン!
少女のロングソードから盛大な打撃音が響いた。
「あれぇ~?」
彼女のロングソードは折れて、折れた剣の先は上空にキラキラと舞っていた。
「角度が悪かったかな?」
どこか、のんきな少女の声に「なんでやねん」と心で戦士はつぶやいたとか。