2.降り立つ世界
森の奥深くにある、既に廃棄された石造りの神殿。
何の為に作られたのか。いつからあったのか。どのような神を奉っていたのか。
既に歴史から忘れ去られた人影ない寂寥とした都市。
そこの少し広場になった石のサークルに、一人の子供が立っていた。
それを見ていたのは、真上のお日様だけだった。
「どこだ!エロいイベントはどこで発生する!?」
残念な子供だった。
***
いやいや、冷静ですよ。ほんと、冷静です。
さてどうしよう。とりあえず現状把握しますか。
ここは、異世界(すごいスケベな世界)という事でいいんだよな。
周りは石造りの家々。人がいない荒れ果てた町並み。森に半分飲み込まれてます。
「あー空気うめー」森林浴です。作りがパルテノン神殿とか、古代の建造物に見える。
これでは、女の子とのイベントも発生しないわけです。
はっ! モンスター娘ならあるかも。そうかもしれん・・・がさっ・・・キターw
一角獣のようなウサギが草むらからでて、こちらを見ている。
・・・鼻ピスピスしている。
あーいるよね。異世界モノとかファンタジーで、高確率で最初に会うよね。
意外にでかいな中型犬位で、草喰ってピスピスしている。
「バニーガールに変形とかしないかな?」と近づく。
キシャー!!
威嚇してきた。
「うお!?可愛くねー」これはたたかうフラグですか、エンカウントですか。
武器、武器、武器?
武器無いじゃん。
装備コ○ンの服だけじゃんか、サッカーボール蹴れってか orz
角付きウサギの先制攻撃!?
頭の角を突き出し飛び込んで来る!
「あぶな!」手と膝をついた格好から、横に避ける。ズザザザー!
一足飛びに5m位飛び退いた。
「!?」身体能力が上がっている?
「チートか!?」これなら、いけそうだけど・・・
あっ!
そーいえば天使が、魔力があるとか魔法が使えそうな事を言っていたっけ。
できればファンタジーっぽい事をしたい。
魔法の使い方・・・
いやいやいまさら・・・
こんな理不尽な事だらけなのに・・・
いまさら、習うとか、スキル取得とか、ジョブとか勘弁でしょ。
チートならチートらしく、行きましょうよ。ねえ?
・・・願う。思う。想像する。そして、確信する。手の平を前に突き出す、ズビシ!!
「米良!」
「・・・」
「・・・」
キター!?
ボッ!手の平の前に、こぶし大の火の玉が、突然現れた。
目標に向かい飛んでいく。
ゴバッ!角付きウサギにヒット。炎に包まれる。
「キュイイイーーーーーーー!」絶叫し息絶えた。消えない死体。リアルか。
キョロキョロする。
経験値は入らない、レベルアップ音もなし、ましてやファンファーレも鳴らない。
・・・だよね。
そして、名称はファイヤーボールに変更、うん。いろいろやばいから、普通が一番です。
がさがさっ!
悲鳴を聞きつけてきたのか、角付きウサギが3匹現れる。
「第二ラウンドですね」
興奮冷めやらぬ、僕は好戦的で、魔法を使いたくてウズウズしていた。
手を突き出し、ズバスン!
叫ぶ!!
「先制のーファイヤーボール!」
こぶし大の火の玉飛び出す。角付きウサギAに被弾、燃え上がる。オーバーキル!
「ファイヤーボール!」
「終焉のーファイヤーボール!」
角付きウサギB、Cにも各々被弾、燃え上がり最後に絶叫を上げ倒れる。
「ふおーーー!魔法やべー、まじすげー!有頂天だわw」
静寂な廃墟跡で騒ぎすぎた。周りを囲むように、大小のモンスター達が現れだした。
***
「はあ、はあ、・・・」
森を抜けた所まで、場所を移動しました。
幼稚園児の体に慣れません。手足が短い。視界が低い。頭でっかちでバランスが悪い。
走っている最中に何度も転んだ。
後ろの森が赤く燃えている。
えーっと、なぜ場所を移動したかというとですね~。
後ろの森から天空に向かって、積乱雲のように黒い煙が舞い上がっている。
ちょっとだけなんですけど・・・
後ろの森に、ゴウゴウと燃え盛る森に、パラパラと雨音が混ざり始めた。
その前に、雨降ってきたのでもう少し離れて雨宿り場所を探します。
***
道があった。草ぼうぼうの轍を少し進むと、丸太置き場のような所があった。
屋根も少し残っていた。放置して随分経つ家のような形跡の残骸もあった。
雨宿りの為、屋根の下に入った。
森の方角にはまだ空に向かって大量の黒い雲が上昇していた。雨は止まない。
「説明しよう!有頂天だったと!」
そう包囲されていた・・・
いつの間にか、周りには角付きウサギを始め、猛獣と言われるような獣達で溢れていた。
「ほう!闘争か・・・」何か降りてきていたw
「ファイヤーボール!」ボール!」ボゥール!」連射する。1発では沈まない獣もいる。
「ファイヤーランス!」1m程の炎の槍が、青い巨大熊の胸板に突き刺さり、絶叫!
「ファイヤーウォール!」自身を中心に直径2mでサークル状に炎が噴出し燃え盛る。
周りにまとわり近づいてきた小物達は、絶叫!!燃え続ける。
「ファイヤーストーム!」手前の集団を狙う。集団の中心に炎の柱が伸びる。四方に
炎の舌を伸ばし回転しだす。炎の渦が巻き起こる。炎の舌が命を嘗め回し、絡みつく。
命消えるそのときまで、炎は消えない。
「クラスターボム!」手を頭上にかざす!上空に1m位のラグビーボール状の業火。
鳳仙花の様に開き、中の炎の塊が中心点以外に広範囲に弾ける。まるで炎の雨を降らす。
炎の雨一つ一つが着弾後に炎の柱を生み出す。炎渦巻く螺旋が多重に炎の花を開かせる。
魔法の連続使用、一方的に蹂躙する。辺り一面焼け野原、死屍累々。
「乗ってきた~!!
サーモバリックボム!灰燼と化せ!!!」
前方に、炎の塊が複数個固まった様な火の玉が放物線を取って飛んでいく。
「あっやば!」近過ぎる。しかも意味無い。すでに敵いない。あーーー!
後ろにダッシュした。最高速で逃げた!転げた!走った!
後方で、カッ!!火の玉が光る、連鎖して光る。
その後に木をなぎ倒しながら衝撃波が襲い掛かる。一瞬で押し潰しすり潰す。
高熱で木が発火!ドドドドドゴガン!遅れて爆音!
今だに後ろでは広範囲に木々が倒れ、盛大に燃え盛っていた。
爆心地では神殿が跡形も無くなり、地面が剥き出しになり大地は溶けていた。
チートでよかった。なっ、何とか逃げ切った。
「あかん!自然破壊!自然大切~、魔法自重~」へこんだ。
しかも、雨で濡れました。というか、この服を何とかしたい。
魔法で何とかできないだろうか。チートなら錬金みたいなことも可能かな。
・・・願う。思う。想像する。そして、確信する。パアン!シタッ!パリパリ!!
・・・できた。
手を突いた地面の上に、ジーンズとシャツがあった。大人サイズの服だが。
じゃ、じゃーチートっぽく、黒い鎧とかでるかな。パアン!シタッ!パリパリ!!
おおおー、確かに金属の黒っぽい鎧だ。イメージがバーサーカーだったが、いいな~w
魔法まじチートw
食べ物でるかな?パアン!シタッ!パリパリ!!このポーズいるのかwまあ様式美だな。
「でたー!カレー!!これで人生勝つる!あったかー!うまー!!!」
半分しか喰えなかった。幼稚園児おそるべし。小食だな。
「デリート!」消す事も可能。食べた分は大丈夫のようでよかった。
ふうっお腹いっぱい。
ちょっと落ちついた。しかしこれで不自由しない異世界生活は出来そうだ。
逆に以前より充実するかもw アレとかコレもできそう・・・
はっ、コレはできるか!?パアン!シタッ!パリパリ!!
期待感いっぱいに、恐る恐るみると・・・
そこには・・・
「イメージ通りだ、魔法すげーよ、魔法ばんざーい!」
た○姉たまんねー彩色済みフィギュアがあった。部屋に飾っていたのと遜色なし。
材質はわからんが、顔近づけて見る。細部まで同じ様に見える。
次だ、次行こう魔力尽きるまで~。
くはー、チート最高!