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1.よみがえる存在

「さあ、早く帰ろう~」


 僕は、晴明寺 歌丸、仮名。21歳、男、受験生5年目。痩せ型。

何で本名で、自分に自己紹介すんだよ、頭ボーっとしてるよ。

 そんな事より夜間バイト後、トラに寄って買ったゲームをせねば。至急に。

本日発売で、開店すぐだったのに3店巡ってやっと買えた。売り切れ必至。


 最近のゲームは似たり寄ったりで、欲しいゲームがなかった。

今回のは久しぶりに絵柄も気に入り、シナリオライターの評判も良かった。

そう、エロいから買ったのではない。断じてだ。でもエロゲーだけどね。


 夜間バイト後の日光はつらい。人通りのない歩道をふらふら自転車で走る。

どうせ明日は休みだ。このまま寝ずに、このゲームを攻略せねばならない。


 主役級キャラはあとだ。

人外さんかロボ娘をまず攻略せねば、なに?もちろん趣味ですが、なにか。

幼馴染や妹キャラには興味はない。・・・コンプリートはするけどね。

姫・・・姫キャラは好物です。はい。

金髪縦ロール。ツンデレ、無口キャラ、あとは・・・


 あっ、歩道に誰もいないと思ったら、前方に人がいた?周り宅地だけ?あれ?

歩道の真ん中に、レディーススーツの金髪の美人さんが佇んでいた。

避けようとするが、歩道の両端までにいっぱい広がった白い翼。おおー避ける。

 美人さんにぶつかりはしなかったが、白い翼に少し接触した。

顔に、ふぁさーーっと、うわー、ええ匂い。本物?

キキーッと、自転車を止め美人さんに謝った。



「すいませ・・・」ガシャン!!カラカラカラ・・・



誰一人いない歩道の真ん中には、倒れた自転車だけが残された。




***




「もう!なんで!あんな所に!いるんですかぁ~!」



ぷん!ぷん!怒ってますとアピールしてますが、ほのぼの系美人さんです。

聞こえた内容に、えーーと顔だけでアピール。



「だって~、初めての地上だったのに、1分も居られませんでした~」



およよと、白いテーブルに突っ伏す。

グレーのレディーススーツの女性。歩道に居た女性だ。今、翼はない。


 ここは全てが白く、ビルのワンフロア規模で柱も窓も全くない広い空間。

遠くの隅にダンボールが積み上げられているが、あとは何も見かけない。

そして中央辺りに、パーテーションで小さく仕切られている場所が1箇所。

中には、テーブルと一人掛けの白いソファーが2つだけポツンとあった。

僕たちは対面で座っていた。タイトスカートからの美脚が組み直される。

ハアーッと、美人さんがやっと落ちついたようだ。



「ため息つくと、幸せが逃げちゃいますよ」


「ふふっ、あなたがいいますか。

 いえ、ごめんなさいね。ちょっと動転してしまって~」


「怒るにも、説明を聞かないとわからないですしね」


「そうですね。お話を聞いて下さい」



 やっぱり彼女は天使だった。スーツで、やたら人間臭いがね。

神が創造している世界を、見学させてもらう予定だったとの事。居るようです、神も。

地球はかなり不思議な存在で、見学希望の人気が多いそうだ。


 そして僕のことですが、天使の翼に触れた為に【存在】自体が吸収されたとの事。

そんな危険なモノを、開きっ放しにするなと思ったら、降り立ったあとで収納する

はずだった。収納してしまえば心配ない、タイミングが悪かったとの事だった。


 で、慌ててココ【神界の際】に戻り、吸収したばかりの【存在】をなるだけ抽出。

【僕】としての【存在】を再構築し、今に至るとの事だ。・・・でだ。



「僕、何で小さいの?」


「あっ、これ地球産の緑茶なんですよ~」ニコッ



そうなんですか。

寿しと書かれた場違いな湯呑みを、小さな手で包みいただく。落ち着く~、ふう~

違う!!!



「かわいいですよ?」



疑問形かよ。

横に姿見があるんですが、幼稚園位の時の自分が居た。泣ける。

しかも、格好が半ズボンにジャケット・赤いチョウタイ・・・駄目じゃん、いろいろ。

また、謝られながら説明を受ける。


 元の【存在】の一部しか抽出できなかった。吸収してしまっていた。

そのため、元の状態には再現できなかった。

でも、情報や記憶は全て抽出できたと慌てていた。本当かな。


 しかも、神性に触れた為【存在】が変質してしまった。

ちょっとすごくなった程度との事だが、人間として元の世界には【存在】できない。

死んだとしても、元の神の世界の輪廻に戻れない。

元の世界に、転生する事は出来ないとの事だった。


 まあ、元の世界には未練は無いかな。

彼女は居ない、くっ。か、悲しくない。

それにメールだけの友達。

親父は、敷いたレールから脱線した僕は不要らしい。

弟ががんばってるし、馬鹿にするし、母親は無視をするし。

一人暮らしになって清々し・・・・・・・・・はっHDD、破壊してくれ!頼む!

部屋の中のモノをすーべーてー燃やしてくれーー!!!



「どっ、どうしたんですか。突然暴れて~」


「後生だから、頼む!」



【存在】が無くなったので、大丈夫とのことだ。本当か!本当なんだな!

どう大丈夫なのか聞いても説明が無いが、今更どうしようもない。

信じるからな。・・・信じるしかないか。しょうがない・・・。



「で、僕はこれからどうなるんですか」


「消滅?」


「・・・おい」


「じょ、冗談ですよ?」



 幼稚園児の体格で、倍はある迷惑天使を睨む。迫力ねー。

しかも疑問形。本当に冗談なんだろうな。




***




 神が管理する元の世界には、天使に権限はなく、神でも難しいとかで戻れないとの事。

しかし、他の世界になら転生できるそうだ。


意外と今回のような事態は発生するそうで、その都度他の世界に案内している。

しかも、体を強化したり、特殊な能力を与えたりしているそうだ。チートだ。


 つうか、他の世界に転生させるような事、よくあるのかよ。

どんだけ異世界に勇者いるんだよ。



「あなたも既に、チートですか?人間としての規格から外れてますよ~」


「え?」


「私の【神性】に触れてしまいましたから~」



そーなのかー。

まったく実感ないが、頑丈になり、耐性も魔力も付き、何もかもがすでに規格外らしい。

ただ、このままでは危険?なので調整するそうだ。

 それで、行きたい世界とかありますかと慌てて聞かれた。ふむ。



「しかし、そんなチートな転生者を送って、その世界は大丈夫なんですか」


「問題ないですよ~、どうせ放棄した世界や破綻した世界ですから~」


「そーなのかー」


「そーなんですよ~」ニコッ!



いい笑顔だ。



「ちょっとまて!」


「はい?」ニコッ!!!



すげーいい笑顔だ。


 チート使いまくりで大丈夫なのは、そんな世界だからだとの事。

世界を修正する為の強制力も、働かないそうだ。神の見捨てた世界らしい。

ただ、神のシステムは残っているので最低限の世界は構築できている。

一万年や二万年で、どうにかなるものではないとの話だ。

うわー、単位が違うんですね・・・転生した位の年数じゃ、誤差にもならない様子。


 何か問題でも?と、・・・軽い、世界の扱いが軽いです。人の扱いも。

失敗したからポイッ!ですか。そうですか。

置き場にも困っていないので、放棄はしても、消滅はさせないそうだ。

 転生した勇者達、騙されてないか。


 まあ、僕は騙されないがな。

なんでそんな、放棄や破綻した滅亡まっしぐらな世界に転生しなきゃならないんだよ。

これは、ちゃんとした世界を斡旋してもらわないと・・・。



「あっ、それとですね。

 今ならこんな世界にすぐいけますよ~。扉、開けると直行ですよ~」


「いや、あのですねー」


「説明しますね~」


「だから、この話は・・・」



 話し聞かねー。

天使の異世界の説明が続く。突然、3つの扉が床からせり上がり説明される。

小さい扉だな・・・あっ幼稚園児用か。身長に合わせたのかよ。


白い扉。全ての病は克服され停滞したが、清廉潔白な未来世界。

青い扉。勇者や魔王がいて冒険に溢れかえっている、剣と魔法の世界。

三つ目の赤い扉は、



「すごいスケベなせかい」(ボソッ)





僕は迷うことなく。



「おれは、もちろん【青い扉】、【青い扉】を選ぶぜ! キリッ!!

 やはり漢なら浪漫あふれる剣と魔法の・・・おっとツマズイテトナリノトビラニ」



足が絡まり、的確に赤い扉を押して開かなくて、扉を引き開けて、飛び込んだ。

僕は冷静に足元の黒い闇に落ちていく。



「アーマチガエタケド、モウショウガナイヨネー、ネーー、ネーー(ドップラー効果)」


「・・・」


「・・・」


「あっ、調整忘れました。・・・まあ、問題なしですね」



3つの扉は床に引き込まれ、ただの真っ白な床に戻る。



「期限内なら、もう一度地球に送迎許可してくれるかしら~。お買い物した~い」



天使は白い翼を顕現させ、バッサ!バッサ!と羽ばたく。



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