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1. 異世界転生主人公メーカー業務説明会

最近のストレスでこんなものが生まれてしまいました、

 こんにちは。今日はいい天気だね。さてさて、説明会を始めますか。


 まずは、前提知識ってやつからかな。ご存知の通りではあるけれども。

 

 まず、最近の主人公ってやつは、異世界に行くことがブームらしい。別に一人、二人くらいなら良かったんだ。しかし、大流行してしまったばかりに、異世界転生主人公は毎日多数、排出されているわけだ。


 それでな、私の上司である創造神がこんなことを言い出したんだ。


 「おい、そこのお前。異世界転生主人公の問合せがひっきりなしにきてキリがない。お前がそれらを全て管轄せよ。」


 上司は神使いが荒いったらありゃしない。それで、私は異世界転生メーカーなる場所を作って、その場所を管轄する責任者になっちまった。


 まあ、ピンとこないだろうな。そもそもな、異世界転生主人公なるものは、元々「白紙」なんだ。まず、性格等の人格と身体が与えられて、次にその主人公(仮)とのお話し合いを通じて、彼らの元々の人生を創造する。


 君たちは人間の就活を知っているかい?

 こんな経験がありましたので、御社ではこのような活躍ができます、このようなものを作れますっていう、いわば「ガクチカ」を創造すると説明したら、ピンとくるんじゃないかね。


 ちなみに、「地球時代に力を入れたこと」だから、我々神の間では「チキチカ」なんて言っているよ。


 そして、創造したチキチカを携えて、適当な異世界へと転生させるんだけど、当然全ての主人公が要求するものがある。


 察しのいい神ならすぐにわかるはずだ。もちろん、「チート」だ。いや、チートが欲しいと言われても異世界の生態系やバランスを著しく壊しかねないものは無しなんだけどね。


 昔は適当な神が馬鹿みたいに願いを叶えてたらしい。たとえば「全てが思い通りになる」チートなんてのを与えてしまったこともあった。もう転生先の異世界終わりだよね。


 だから、我が異世界転生主人公メーカーの異世界選定課が、ほぼ壊れてる世界に送り込むことになったそうだ。


 さて少し脱線してしまったが、このチートってやつ、最近は「チキチカ」と整合性のとれるものでないと認められないように仕様変更されたんだ。


 たとえば、平凡な「チキチカ」だと、平凡なチートしか与えられないようになっている。もちろん、以前はそんなことなくてね、チート至上主義の時代もあったわけですよ。


 最強チートありきで、チキチカは軽視されている時代だね。でも、最近はそういった訳にはいかないようで。


 そこで、このチキチカが今、非常に大事になってきたというわけだ。そして、このチキチカをお客様と一緒に作成するのが、私たちの仕事なんだ。


 私たちは「チート」を付与したり、異世界先の転生には全く権限がない。絶対に彼らの方が楽な仕事だ。ほんと今からでも配属を変えて欲しいよ。なんでかって?


 チートの付与は、相手からの要望とチキチカを合わせて、じゃあこんな感じのを与えますで終わりなんだ。つまり、相手の要望等を聞いても、必ずそれに合致するチートを与える必要はない。


 たとえば以前、全魔法適正と不死身の身体を要望したお客様がいた。しかし、お客様の態度が悪く、担当した神がイラついたんだろうね、与えられたチートは「誰もが一瞬で幸福になる耳かきの技術」だった。


 お客様は大変抵抗したらしいが、決定は職権取消し以外認められていない。神の世界では、取消訴訟なんておこせないのさ。


 そのお客様はどうなったかって?流石に可哀想に思った異世界選定課の職員が、「ASMRの再生数が高ければ高いほどモテる」世界に飛ばして、彼は耳かき無双をしていたよ。とても幸せそうな顔で天寿を全うしていたから、まあ良かったんじゃない?


 ちなみに、これはかなり昔の話で、今はチキチカも考慮される。だから、彼と同じ道を辿りたい異世界転生主人公は、チキチカで耳かき職人の経歴を創造してないと、そのチートは貰えないだろうね。


 考慮要素をちゃんと考慮しなかったり、逆に私情で裁量を変更すると、上司からめちゃくちゃ怒られる。まあなんだ、面白くない天界になっちまったな。昔は良かったんだけどね。


 さて次に、異世界選定課だが、ここは非常に広範な裁量が認められている。お客様の要望を一応聞くが、本当に参考程度で、しかも異世界に飛ばして仕舞えばクレームも0!あそこは一度、真面目に仕事してるか審査を受けた方が良いと思っているよ。


 それに比べて私たちの業務は、可能な限りお客様の要望に応えなければならない。


 お客様もね、流石にチキチカが大事だって分かってて、チートを見据えたチカチカの創造を求めてくる。たとえば、マヨネーズを一から作ったことがあるとか、古武術の頂点に立っていたとか。


 特に人気なチキチカの審査は厳しい。上司の命令だよ。多様性のある異世界転生主人公を求めていらっしゃるからね。


 逆に、人気のないチキチカを選んだお客様は、一発で通して良いよ。私としてはね、お客様が提出したチキチカを、一発で通してあげたいんだよ。仕事が減るからね。


 人気なチキチカは、常に争奪戦。だから、お客様のご希望に添えないことも多々あるわけだ。そして、こっちの方がいいんじゃないですかって勧めるわけなんだけど、そりゃあ抵抗する。


 チカチカは、望みのチートを得る非常に大切なものだからね。だから、一人一人のお客様に対してとても時間がかかるんだよ。今まではチートの方でごねてたお客様が、みんなチキチカの方でごね始めるからね。


 でも、うん。やりがいはとってもあるし、それに他の課よりもアットホームで良い職場だよ。え、転課を希望していたじゃないかって?いや、ほら、アットホームすぎて逆にダメになっちゃうなー、なんて。


 さて、私たちの「チキチ課」はこんな感じだね。どう、やっていけそうかな?え、無理そう??辞める?「私はチート付与課に配属されたい」と。


 いや、でも君の代わりの神いないしさ。ほんの1000年くらい、いや500年くらい働いてくれないかな?お願い、ほんとこっちの部署ひっきりなしに問い合わせくるわ、めちゃくちゃ苦情入るわ、一人一人の面談時間が長いわで、人の手でもかりたい状況なんだ。


 こんなに神頼みしててもダメかい。分かった、勤めてくれたら君の位をあげて欲しいって、上司に口添えしとくからさ。


 あ、それなら500年くらい勤めてくれる?ありがとう、本当に助かるよ。




 売り手市場はつらいねぇ。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました!

感想等いただけますと、大変嬉しいです。

読みにくい等ございましたら、遠慮なくご指摘ください。


創作の上で、やっぱりチキチカは大事だと思う今日この頃です。

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