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観察と実践

 スキルの力の源を探るべく、自分の内側に意識を集中させるのを繰り返す。

 それを何度繰り返しただろう。あっという間に半年は経っていた。


 俺はついに歩くことが出来るようになった。

 まだおぼつかない足取りでたまにコケるので、歩く時はシスター達が見守ってくれる。

 また、片言で話すこともできるようになり、周りで何を言ってるかも大体わかるようになった。


 体は順調に成長してる。

 このまま研究の方も進んでほしいものである。


 今日も今日とてたんこぶを作る日々。自分の内側の暖かさを感じる。


 いっそ、自分の中からこの暖かい何かを抉り出して観察したいほどである。

 まぁ観察する前に確実に死ぬけどねっ! あはっ!


 とか、アホな考えがよぎった時ふと思った。そもそも、力の源って見えないよな。なら、取り出して観察してもわかんねーじゃん。

 ということは、このまま何かを感じとれる状態での観察が一番効率がいいはず……そうか……感じ取るんだ。そして観察。


 今まで俺は暖かい感覚のみに目を向けてその他の箇所の感覚を感じようとしなかった。

 力の源が魔力でない以上、体の中に《《何か》》がある可能性は低いと思う。

 この暖かさがどこへ向かってるのか? 

 それを確かめるんだ!


 たんこぶを作る。胸の内側に意識を集中。さらに胸の周囲にも意識を巡らせてみる。


 ……すると、感じた!細い細い意識しなければ絶対に見逃したであろう細い糸のような暖かさ。


 これがどこへ向かっているのか? 

 糸を追いかける。糸は胸から下へいき臍へと続いていた。つまり、外へ出ていた。


 力の源は外にあった!


 ならば、後は外のどんな力なのか?

 これは目に見えない以上、今判断することは出来ない。

 だけれども予想する事はできる。


 おそらくだが異世界の空気中に存在するとされるマナなのではないかと思う。

 異世界ものではよくある設定、マナ。

 それは魔力のようなもので空気中に漂う自然エネルギーと表現されることが多い。

 精霊などはこのマナを使って強力な魔法を使うというのが定番だ。


 とにもかくにも、研究はひと段落した。

 では、次はどうするのか?


 内側の暖かさを感じることが出来るようになったため、このまま魔力を感じ取れないか試してみようと思う。


 そうと決まれば実践あるのみ。

 前回の反省を活かして体の至るところに神経を集中してみる。

 しかし、範囲が広すぎてよく分からない。

 なので、適当に当たりをつけて、部位ごとに意識を集中することにした。

 

 まずはなんとなく丹田と言われるところから。ここもラノベとかでよく魔力の発生源とされてるからね。


 すると、ビンゴ! 

 仄かに暖かい感じがする。それはビー玉程度の暖かさ。意識しないと絶対分からない。

 今まで内側に意識を集中するのを続けたのもよかったのかもしれない。

 こんなにすんなり感じ取れた。


 あとは、これを動かすイメージで……



 ……いや、動かねえよ。


 そもそも、こんなビー玉程度の魔力を動かしてしまったら、速攻で魔力切れとかでぶっ倒れそう。下手したら死ぬんじゃない?

 まずは、この魔力を増やす事を考えた方がいいか。


 でも、どうやって増やすんだ? 

 それこそ魔力って使わないと増えないイメージだけど。


 うーん。どうしよう。


 あっそうだ! 

 スキルの源を探っていた時のあの糸のような何か。アレを真似したらいいんじゃないかな?


 魔力全部を動かさず糸を伸ばす感じで……


 でっできた! 

 糸上に伸ばす事ができた。

 あとはこれを指先へと伸ばして……放出。

 おーなんか指先があったかい。なんか感動ー。

 て、あれなんか意識が……


 俺は魔力の使い過ぎでベットの上にぶっ倒れた。

 幸いベットの縁に頭をぶつける事はなく、柔らかな布団に包まれて、ニンマリと気持ち悪い笑みを浮かべていた。


-----


 魔力を放出しただけでは、ぶっ倒れるだけで死なないとわかった俺は、毎日魔力を放出、ぶっ倒れるを繰り返した。

 シスター達が赤ん坊の頃より寝ていると少し心配していたが、起きている時は元気なので、まぁ心配ないだろうということですまされていた。


 魔力放出をはじめて半年。丹田に感じる魔力は野球ボールサイズになった。これ以上は体の中に収まらない。


 なので、俺は魔力の圧縮を試みてみた。

 丹田にあるボールをこうギューと握るイメージ。いわば硬い泥団子を作るような感じだろうか。

 圧縮は順調に進んだ。ビー玉サイズまで圧縮出来たら再度魔力放出で魔力量を増やす。そして、また圧縮の繰り返し。

 それをひたすら繰り返し俺は三歳になった。


-----


「おはようネロ」


「おはようテファ」


 今は孤児院の食卓での朝の朝食時。子供達が集まってきて、口々に俺に挨拶してくれる。俺も挨拶して返す。


 俺の名前はネロと名付けられた。特に意味はないらしい。なんとなくで院長がつけたとか。まぁ名前なんて由来がなくても愛着が湧くものだし、なんでもいいけどね。

 あと、水瓶でみた自分の姿は銀髪に碧眼。顔立ちはそれなりに整っている方ではないかと思う。

 顔は大事だ。人は見た目が九割っていうからな!

 整った顔で生まれて良かった。


「ネロネロ! 見てこのパン! 中にクルミが入ってる!」


 見ると黒パンの中に一欠片だけクルミが入ってる。


「ホントだクルミだね。うん、美味しい」


 俺に元気よく話しかけてきたのは、一番歳の近いマリエラという少女だ。

 歳は6歳。俺とは三つ違いだね。金髪の髪をボブカットにした可愛らしい女の子だ。

 孤児院には俺を含めて7人の子供がいる。その中で歳が近いとあって、マリエラはよく俺に話しかけてくる。可愛いものだよ。


 ちなみに最初に朝の挨拶をしてくれたテファは8歳の女の子。紫のウェーブがかかった髪が特徴的な子だ。


 その他に、ミリアという12歳の女の子。髪は赤色。気が強そうに見えるが、皆んなに優しいこの孤児院の最年長のお姉さんだ。

 この世界では15歳で成人なのであと三年で孤児院を出ることになる。


 次にドントという男の子。7歳。純朴そうな見た目のブロンドの髪を短く整えている子だ。


 次はラステルという男の子。8歳。少し気の弱い黒のオカッパ頭の子だ。


 最後にヒースという男の子。7歳。名前の印象通り少しやんちゃな子だ。茶色の髪に黄色い目。

 同じ歳ということで、ドントとよくつるんでいる。


 このように、男女比4:3の子供達が今の俺の家族だ。


 前世の家族や友人に思いを馳せる時はある。

 しかし、会いたいと願っても決して叶わない。

 俺は死んでしまったのだから。


 だから、今ある家族を大事にする。それが俺のできることだ。

 

「「「神の恵みに感謝を」」」


 今日も質素な食事を終えて、子供達は一様に駆け出していく。


「ネロ! いこ!」


 マリエラが俺の手を引いて中庭へと駆けていく。俺も走りついていく。


 中庭はお世辞にも広いとは言えずバスケットボールコートほどの広さしかない。

 遊具などもなく、あるのは一本の細い木のみだ。あとは雑草。

 そこで、子供達は木に登ったり棒を振り回してチャンバラごっこをしたりしている。

 

 うーん、この時間が俺にはまだ慣れないんだよなー。

 精神年齢的には37歳のやつがチャンバラごっこってのもなー。

 剣術とかなら喜んでやるんだが。

 でも、浮かない顔をすると子供達に心配されてしまう。

 なので、俺は今日も今日とて木に登り、棒を振り回す。


 我、覇者なりー!!


 うん、虚しい。


 昼食を挟んで皆んなはまた外へ。

 俺は念願のお昼寝タイムだ。


 シスターにお腹をトントンされながら、眠りを促される。

 俺はすぐに寝たフリをし、シスターを退出させる。


 さて! ここから自己鍛錬だ!

 そういえば俺がなんでこんな鍛錬をしているかと言うと、一重に生き残るためだ。この世界は女神が言うにはハードモードだ。弱っちいとすぐ死んでしまうだろう。

 あと、孤児院で育っている以上強くなって生計を立てなければと考えているのも理由だ。


 まぁそんなこんなで鍛錬をするのだが、いつもは魔力の圧縮をするが、もう魔力がカチカチでいくら力を入れても小さくならない。あとは体が大きくならないと容量を増やせないとみた。


 なので、圧縮は置いておいてついに実践を試してみようと思う。

 すなわち魔法の行使である!


 やり方は分からない。ただ、いつもの魔力放出にイメージを織り込めばいけるのではないかと思っている。

 無理な場合はまたその時に考えよう。


 では、早速実験。

 いつものように指先、正確には人差し指へと魔力の糸を伸ばし魔力を放出。

 放出しながら、イメージをしてみた。


 それは小さなライターほどの火。赤く燃え確かな暖かさと明るさをくれる。

 火、火、火……


 ボッ!


 ……ついた。火がついた!

 飛び跳ねて喜びを表現する中、予想外のことがひとつ。

 火が青かった。


 考えられるのは、高濃度の魔力により高温の火になったということ。

 試しに魔力を薄めるように意識して火をだすとその火は赤かった。

 やはり、魔力濃度が原因のようだ。

 魔力圧縮は無駄ではなかったということか。


 初めての魔法に喜ぶのもそこそこに次に移ろう。すなわち、考えられる属性の魔法を試してみる事である。


 【水】ウォータージェットのような勢いで水が噴射した。床がびしょびしょになってしまった。後で拭こう……


 【土】黒色の石ころが指先から生まれた。おそらく相当硬いんじゃなかろうか? 

 うーん、これを飛ばしたりしたら……恐ろしい……


 【風】カマイタチのような風が出た。壁が抉れてしまった……これはどう言い訳しよう……まぁ黙ってればなんとかなるか……


 【雷】は今までの結果から危険な香りがしたのでやめといた。


 【氷】水魔法を極力弱く出して、水の分子を停止させるイメージで行ってみると、指先から氷の塊が現れた。綺麗だ。ただなんかドライアイスぐらい冷たい気がする。気のせいか?


 【無】シールドを張ってみようとした。すると一辺三十センチほどの透明の板が現れた。極薄なのに本気で蹴ったりしてみても全くびくともしない。これはいいな。足場とかにも使えそう。


 【光】指先に光の玉をイメージしてみた。するとバスケットボール大の光球が生まれ、部屋を明るすぎるほど明るく照らした。


 【闇】闇ってデバフ系だよな。なら、目眩しの霧でも生み出してみるか。


 これが、失敗だった。


 魔法が発動した途端部屋中に黒い霧が発生。その霧は部屋だけに留まらず孤児院全体に及んだ。


 孤児院は大騒ぎ。火事よ!どこ!とシスター達が駆け回る。


 犯人が俺だと悟られぬようすぐさまベットに入り狸寝入りを決め込む。


 当分の間、この件はどこかからの攻撃と捉えられて、孤児院は緊張状態に陥った。しかし、その後なにもなかったことから、この事件は孤児院七不思議に数えられることとなった。


 いやー魔法は時と場所を選ばないとねっ!

 失敗! 失敗! てへっ!

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