表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
0と1の世界でブラックシープ共は夢に溺れる  作者: 西順
第一章 異分子の台頭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/91

懸念事項

「『空歩』?」


 ホテルに戻り、どうにかしようと皆で捻り出したのは、『亜竜の巣窟』で手に入れた『心眼』以外のランダムスキルスクロールに、良いのがないか? と言う他力本願な提案だった。そして最初のランダムスキルスクロールから獲得出来たのが『空歩』であった。


『空歩』:空中を歩行走駆するかのように移動出来る。1歩毎に10MPを消費する。


「これがLUK特化の引きの強さか」


 トンブクトゥが口から感嘆の声を漏らしているが、確かにこれがあれば、アトモスライムの核まで空を走っていける。


「う〜ん、でも1歩で10MPは結構な消費量ですよねえ。僕のMPじゃ100キロを駆け抜けるのは難しいです。グレイの『無間肋刃』で途中まで連れていって貰っても、届かない気がする」


「私が一緒に行くわ。そうすれば『魔力譲渡』で魔力を補給しながら、アトモスライムの核まで届くんじゃない?」


 確かに、クロリスの『魔力譲渡』には今までも助けられてきたけれど、


「多分、向こうも馬鹿じゃないからね、アトモスライムから攻撃されながら、僕に『魔力譲渡』使うのって可能?」


 これにはクロリスも渋い顔になる。上空は正しくアトモスライムのテリトリーだ。その攻撃は苛烈を極めるだろう。その中で自分を守るだけでなく、僕にMPを分け与えている余裕は、流石のクロリスにもないと思う。


「それよりも、クロリスには地上からアトモスライムを攻撃して欲しいかな。アトモスライムも、スライムだから、自分の核への攻撃を無視して、僕にばかり攻撃する事はしないと思うし」


「魔力回復はMPポーションでって事?」


「そうなるね。ボンベでも背負って突貫かな?」


 そんな呆れたような目はしないで欲しい。


「まあ、それが建設的かしら。アトモスライムの注目をこちらで引き受けて、その間にゼフが核へ接近する」


 クロリスの言に首肯で返す。


「そうとなると、またスライムダンジョン行きなのよ?」


 グレイ(女)が尋ねてきた。ボンベを作るにも素材が必要だからねえ。


「いや、ボンベを作るくらいなら、街売りの素材でどうにかなると思う。1回限りで、使い捨てだからね」


「ふむ。主殿はこの案件の解決を急いでいるように思えるが?」


 グレイ(男)の指摘は当たっている。


「理由は2つ。アトモスライムがMPを回復させて、また荒天を生み出されたら、核の居場所が分からなくなると言うのが1つ。もう1つは、僕たちの行動で、この荒天を生み出している存在が遥か上空にいる事が、他の冒険者たちに推察されただろうから、先を越されるのを防ぎたいってのがある。まあ、後者は倒されたらそれはそれなんだけど」


「確かに、他の冒険者パーティも、アトモスライム攻略に動いているようです」


 トンブクトゥは確信を持ってそんな事を口にした。彼の下にはどこからか(上から? 運営から?)情報が下りてくるので、その情報は正確なのだろう。


「なら今からでも動きましょうか」


 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕


「ふう、完成」


『MP酸素ボンベ』

レア度:4 品質:☆☆☆

効果:圧縮酸素とMPポーションを錬成して作られたMP酸素ポーションが入れられたボンベ。ボンベの素材は鉄だが、ホースとシュノーケルにはスライム素材が使われており、吸引の手助けをする。


 僕の前にあるのは高さ30センチ、幅10センチの円筒形のボンベだ。その先端にはホースとシュノーケルが付いていて、こっちはスライムスーツと同じ素材で出来ていて、口元に当てれば、そこからMPポーションを酸素と一緒に吸引出来る仕組みとなっている。


「これがあれば、空気のない高高度でも息が吸えるうえに、MPまで回復出来る優れものだ!」


 腰に手を当て、胸を反って威張る僕だけれど、三者でカードゲームやっているのは頂けないなあ。


「わあ〜、凄いわね」


「うむ、流石は我が主殿」


「マスターしか勝たんのよ」


「本当に何でも作り出すその手腕、錬金術師を名乗るに相応しいですね」


「…………皆、何でそんなにセリフが棒読みなのかな?」


 口先だけでカードから目を逸らさないのは、今佳境なのかな?


 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕


「おい、邪魔だ」


 はい? 北東門から外に出ようとしたら、知らない冒険者に手で突き飛ばされたうえに横入りされた。


「いやいや、僕が先に並んでいたんですけど?」


 その冒険者に文句を言ったら、その場にいる冒険者全員が大笑いした。


「ご苦労さん。お前の仕事はもう終わったんだよ。魔王候補を倒すのは俺たちに任せて、お前はギルドで魔王候補討伐の報告を心待ちにしているんだな」


 ふむ。懸案事項の2つのうちの後者が、こんな形で噴出するとはなあ。


「はあ!? 敵の居場所さえ見付けられなかったド三流が、何を今になってしゃしゃり出てきてんのよ!」


 クロリスさんが荒れておられる。


「主殿を愚弄する事が、何を意味するか、その身に知らしめてやろうか?」


「この世界にいたくなくなるくらいには、簡単に殺されると思わない方が良いのよ」


 グレイさんも荒れておられる。


「ほう? 出来るものならやってみて欲しいものだねえ? 出来るなら、な?」


 僕を突き飛ばした男が、高圧的にそのような事を口にすると、また周りから笑いが起こる。やれやれ。


「クロリスもグレイも、そんなの気にしていたら、僕とのパーティは長続きしないよ?」


 僕はそう言いながら、クロリスとグレイが凶行に出る前に、北東門から少し離れる。


「ゼフ、この世界、舐められたら負けよ」


「奴らはどうせ大言壮語を語るだけで、実力などありはせぬ。その癖威張りおって」


(サツ)、なのよ」


 うちのパーティメンバー、殺意高過ぎんか?


「気にする事ないよ。弾除けが増えたと思えば良いんだから」


「でも、奴らが門を見張っているせいで、ゼフが街から出られないわよ?」


「それも問題ないよ。彼らを出し抜くのは難しくないから」


 僕の言葉に、首を傾げるクロリスとグレイ。そしてそれを1歩離れたところから見守るトンブクトゥだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ