表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
0と1の世界でブラックシープ共は夢に溺れる  作者: 西順
第一章 異分子の台頭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/91

青碧の装甲

「出来た……!」


 苦節1週間、エイト地方がSPRING WELCOME FESTA!!に突入し、街が新たな冒険者たちで賑わう中も、錬金術師ギルドの工房に籠もり続け、完成したものがこちら。


『スライム特殊鋼』

レア度:6 品質:☆☆☆☆☆☆

効果:スライム核、スライム核粉、精霊糸、コバルト、カルシウム、リン、珪素、清浄水を錬成して作られた合金鋼。基本状態はスライムのように柔らかく、どのようにも形状を変化させる事が可能であり、精霊糸と清浄水の効果で、素材の毒性は完全に除去され、この特殊鋼に触れた毒素は浄化される。更にMPを注ぐ事で粘性や硬度を強化させる事が出来る。基本状態ではコバルトブルーであるが、珪素とスライム素材をふんだんに使った為、プリズムのように光を屈折させる効果があり、透明から七色までどのような色にもなる。


「やっっっっと完成したわね」


 珪素から作ったゴーグルと、精霊糸を布にして作ったマスクを外しながら振り返ると、側で作業を見ていた(てい)で、グレイやトンブクトゥとボードゲームやカードゲームをしていたクロリスが、グレイとトンブクトゥを引き連れてきた。やれやれとこちらへ飛んできては、僕の左肩に腰掛けると、錬成陣の中央にある、5センチ角程度のコバルトブルーの合金鋼を目にする。


「完成と言うか、これからこれを量産して、鎧にしないといけないけどね」


 ここまで来るのに、【錬金術師】のレベルが20も上がってしまった。けれどここからが本番だ。


「ああ。そう言えば、最初はそのつもりでこの工房を使わせて貰ってたんだっけ。んじゃ、頑張って」


 んじゃ、頑張って。って完全に他人事だな。他人事だけど。


「スライム特殊鋼ですか。初めて見る金属です。多分、ゼフュロスさん以外作った事がない合金なんじゃないでしょうか」


 トンブクトゥはしげしげと矯めつ眇めつスライム特殊鋼を見ている。


「どうでしょうね。スライム核粉と珪素、鉄だけでもレア度と品質の低いスライム特殊鋼は作れていたので、スライム特殊鋼自体は存在すると思いますよ。ただ、素材をふんだんに使った方が、レア度と品質、それに効果が高いんだと思います」


「成程」


 僕の説明に感心したように頷きながら、ツンツンと人差し指でスライム特殊鋼を(つつ)くトンブクトゥ。


「色々見たいならどうぞ」


 トンブクトゥが突いていたそれを手に取ると、トンブクトゥに投げ渡す。彼は慌ててそれをキャッチする。


「わっとと。どうぞって?」


「錬成陣の上にあっても、邪魔ですからね。あげる訳じゃあありませんよ? 後で鎧にするのに使うんですから、見せるだけですからね?」


「分かっていますよ」


 と頷くトンブクトゥに、


『監視は任せよ(なのよ)』


「窃盗は犯罪よ。すれば然るべきところへ突き出すだけよ」


 グレイとクロリスからの信用は低い。信用ならない。と言うよりも、同じパーティじゃないからか、油断出来ない。と言う所感なのだろう。言われたトンブクトゥは、手でスライム特殊鋼をにぎにぎしながら、眉を下げつつ項垂れていた。


 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕


「どうっ!?」


「悪くないんじゃないかしら」


『似合っておる(のよ)』


「未来感がありますね」


 クロリスとグレイからの評価は上々だ。


『スライムスーツ』

レア度:5 品質☆☆☆☆☆

効果:スライム特殊鋼で作られた強化スーツ。MPを注ぐ事で、身体能力の上昇、スーツの硬質化、光の屈折による光学迷彩化が可能。


 結果的に、足の爪先から頭まで覆う、コバルトブルーのぷにぷに全身スーツのような形となってしまった。かなりのフィット感で、動くとそれだけで筋肉が良く伸びる感覚がある。


 頭部は普段はフードのように首の後ろに垂らしているが、戦闘や隠れるとなれば頭部に装着可能で、フードに付けられたゴーグルは、MPを注ぐと望遠レンズのように遠くのものを見る事も可能。


 首元はタートルネックのようになっているが、伸ばせば口元も隠せるし、肌に密着させる事も可能で、密着させても呼吸に問題はない。フードと合わせて顔を完全に覆い、相手がウェザースライム亜種(仮)でも、その無色の攻撃を防いでくれる事だろう。


 更に腰にはポーチ型のアイテムボックスを隠せる仕組みと、グレイの鞘となる仕組みを組み込んでいるので、光学迷彩状態で周りから見えるのは、グレイの両手と両面髑髏、剣先くらいのものである。しかしこのスーツ、


「……熱い」


 頭部は今出しているけれど、首から下はスーツが密着している為、空気の通り道がなく、熱が身体に籠もってしまい、熱くて仕方ない。


「仕方ないわよ。ウェザースライム亜種(仮)と闘うには、肌の露出は極力避けた方が良いもの。スライムスーツがウェザースライム亜種(仮)の攻撃を弾けたとしても、その全てを弾く事を考えたら、全身を隙間ないスーツで覆うのが利に適っているわ」


 そうなんだよねえ。でも、流石にこれを日常使いは無理だ。僕はスーツにMPを注ぎ、少しスーツと肌の間に隙間を作り、そこへ『春風』を流し込む。


「はあ〜〜……、街の中だけでも、この状態でいさせて。門から出る時には、みっちり密着させるから」


「仕方ないわねえ。街中だからって、絶対安全な訳じゃないのよ?」


 それは分かっているんだけどねえ。


「まあ、良いではないか」


「その時になったら、あたちが真っ先に倒してやるのよ」


 グレイが頼もしい。いや、いざとなったら、クロリスも助けてくれるとは思うけど。


「さて、早速…………、まずは実用実験? 性能実験? が先かな?」


 これでいきなりウェザースライム亜種(仮)に挑むのは、調子乗り過ぎかな。ダンジョンでどれくらいのものなのか試してから実戦が良いと思う。


「ふああ……」


 それよりも今はただただ眠い。その前に寝よう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ