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0と1の世界でブラックシープ共は夢に溺れる  作者: 西順
第一章 異分子の台頭

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Bottom

 未だに最下層には辿り着けていないが、階下の灯りはより明るくなってきている。


 基礎レベル、冒険者レベル、共にレベル40を超えた。【冒険者】は下級職の為、上限が50までだし基礎レベルも上限が50だ。その上限に近付いて来た。


 更に基礎レベル40になった事で、称号【ザコボッチ】に新たなスキル『孤高』が追加された。これは、1人での活動にプラス補正が付くものだ。まあ、クロリスと一緒に行動しているので意味はないが。でも気分的に強くなった気がするから不思議だ。


 僕は限界まで引き絞ったスケルトングレートアーチャーの弓からから打ち出された炎矢を躱しながら、『スラッシュダブルクロス』で周囲のゾンビから進化したグール4体を斬り捨て、更にアーツチェインで『念翔突』を放ち、グールの奥にいたスペクターを撃ち貫き、そこから更にアーツチェインでリビングアーマーを『スラッシュ』で一閃。最後は『念翔斬』へMPを多量に注ぎ込んで、周囲のアンデッドたちを一掃した。


「ふう」


 やっと一息吐けるけど、まだまだ上からアンデッドたちがやって来るので、一呼吸置くくらいしか出来ず、また『怨霊吸魂の剣』を胸元で水平に構える。


 先程のようにかなりアンデッドを倒す効率が上がったのは、僕のレベルが上がったと言うより(周囲のアンデッドのレベルも相対的に上がっている)、クロリスのアドバイスで、プレイスキルが上がった事が大きい。


 僕は今まで何となく『スラッシュ』や『スタブ』などのアーツを使用していたが、クロリスから、


「何でいつまでもオートでアーツを使っているの?」


 と聞かれて首を傾げたら、嘆息混じりに首を左右に振られた。


 アーツや魔法は、基本的に覚えたてだとオート設定とやらになっているらしく、アーツや魔法に一定のMPを注ぎ、一定の行動を行う。しかしそれをマニュアル設定に変えるだけで、行動とMPに制限がなくなるのだ。


 例えを出そう。『スラッシュクロス』と言うアーツがある。これは敵に対して斜めにバッテンを付ける、または十字の形に敵を斬り付ける攻撃だ。これは絶対で、体勢がどれ程崩れていても、何か不思議な力が作用して、物理法則を無視するかのようにこの2つのどちらかの攻撃を敵1体(・・・)へ与える。これがオート。


 対してステータスウインドウからマニュアルに設定を切り替えると、物理法則を無視するような動きは出来なくなるが、その分、動きに自由さが生まれる。例えば、バッテンにしか攻撃出来なかった『スラッシュクロス』が、V字や逆V字に斬れるようになったり、アーツにMPを多く注いで、そのアーツを強化したり、敵1体に対して2回攻撃を与えるはずの『スラッシュクロス』を、敵1体1体の2体に対して、一撃ずつ攻撃する事が可能になったりするのだ。


 更にアーツや魔法には、アーツチェイン、マジックチェインと言う技術があり、これは1つのアーツを放った後、すぐに別のアーツを放つ技術だ。チェインが繋がれば繋がる程、攻撃力が増していく。


 その他、アーツや魔法には、一度その行動をすると、次に同じ行動をする為に、クールタイムと言うものが設けられている。そのせいで、同じ行動を立て続けに行う事が出来ない。クロリス曰く、この制限を解除するスキルもあるらしいが、相当高位のスキルらしく、普通の人間で覚えられるレベル上限を超えたスキルであるそうだ。因みにクロリスは使えるそうだが不使用(アンタップ)にしているそうだ。これもプレイスキルを磨く修業なのだとか。それでもクールタイムの短い魔法を連射していたりするけど。


 そんな訳で僕は今、クロリス同様プレイスキルを磨く為に、全てのアーツをマニュアルに変えて技を磨いている。


 一息吐いたと言うのに、直ぐ様補充されたアンデッドたちが上から押し寄せてくる。しかしそれは綺麗に整列された行進などでは決してなく、すぐ横のアンデッドを、まるで親の仇のように潰し合いながらの、狂気の前進だった。


 そんなアンデッドたちに対して、『怨霊吸魂の剣』へMPを注ぎながら、横薙ぎで広範囲に『念翔斬』を振るう。…………出ない!


「クロリス! MPが尽きた!」


「また!? 本当に人間って効率悪い! ゼフ、あなたマニュアルでアーツが使えるようになったからって、調子に乗ってアーツ使い過ぎなのよ! これからはアーツの使いどころを考えて、使用しなさい!」


 命令口調のクロリスだが、僕を慮っての言葉だ。身に沁みる。いや、僕がMP切れで死んだら、パーティを組んでいる自分もギルドへ転送されるのを嫌ってかな? などと考えている間に、クロリスから『魔力譲渡(MPハンドオーバー)』で魔力を恵んで貰い、また戦線に復帰した。


 こうして僕らは、時に僕が空腹になったからと、調理と食事の間、クロリスが結界を張ってくれたり、時にさっきみたいにMP切れになったら、クロリスがMPを分けてくれたり、時にアンデッドの前進を抑え切れなくなった僕を、クロリスが助けてくれたり、時に長時間の活動に限界が来て眠気で鈍った僕を、クロリスがセーフティゾーンまで連れて行ってくれたり、…………うん。時に(・・)ではなく、主に(・・)僕のせいで、クロリスの前進が滞っていたな。クロリス、足手まといでごめん。


 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕


「死ぬが良い!!」


 鈍重そうな見た目と違い、素早く僕の間合いまで詰めたスケルトンジェネラルが、大剣を振り上げ、僕を叩き斬ろうとしてくるのを、『怨霊吸魂の剣』から、更に『怨霊自念の剣』へと進化した、ところどころ骨々しい剣で『パリィ』し、これで体勢を崩したスケルトンジェネラルの後ろへ回り込んだ僕は、『バックスタブ』でスケルトンジェネラルの背骨当たりを突き刺す。


「ぐあっ!? ……む、無念……」


 死に際にそんな言葉を吐きながら、スケルトンジェネラルは光の塵となって消えた。が、それに安心してはいられない。次は来ないか!? と周囲を警戒するも、


「ぐっ、ここまで来たと言うのに……」


 見れば、クロリスがリッチを倒したところだった。他に敵はいないか? と周囲を警戒すると、上階段から、のっしのっしとジャイアントマミーが、他のアンデッドたちを蹴散らしながら突進してくる。ありがたい。他のアンデッドの相手をしなくて済む。そしてさようなら。


 僕は『怨霊自念の剣』に思念を込める。それだけで『怨霊自念の剣』は『収霊気念』のアーツで、周囲から魔力(MP)を吸収し、その攻撃力を上げていく。そしてそれを大上段に構えたら、ただ振り下ろす。それだけで『怨霊自念の剣』から伸長した斬撃が、こちらを襲って来るジャイアントマミーを両断した。


「ふう」


 疲れはしたけど、今のでレベルが上がった。基礎レベルも冒険者レベルもレベル49だ。あと1つ上がったら、僕の冒険者レベルは上限に達する。これ以上強くなろうと思ったら、【冒険者】を準職業(サブジョブ)にして、主職業(メインジョブ)を他の職業に変えてレベルを上げていくか、クロリスのようにプレイスキルを上げるしかない。


「粗方片付いたかしら?」


「そうだね」


 クロリスとふたりして一息吐く。ジャイアントマミーが突進してきてくれたお陰で、他のアンデッドたちが蹴散らされて、ここは図らずもちょっとした間隙となっていた。しかしそんなここも、もうすぐ上からやって来るアンデッドで埋め尽くされるだろう。なので更に先へ進む必要がある。が、ここはもう最下層だ。


「あれがここのボスかなあ?」


「そうでしょうね」


 クロリスとともに厳しい視線を向ける先は、闘技場のような平たい舞台で、周囲は無数の鬼火に囲まれている。灯りの正体はこの鬼火だったようだ。そんな舞台の中央では、10体以上はいる最上位アンデッドたちを相手に、たった1体でそれらと斬り結ぶ、スケルトングラッジスイーパーなる、剣士タイプのスケルトンが闘っていた。


 そしてその戦闘はものの1分程で片が付き、怨霊渦巻くこのダンジョンの最下層は、一瞬の静寂に支配され、僕たちとスケルトングラッジスイーパーの視線が交差する。


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