『4』体の骸。 A man who wants to die is like a man who is already dead. (4)
人外一名の力を借りて、僕らはようやくアリエルの下へたどり着いた。
「アリエルさんっ!」
「や、やっときたか!このボケナス共!」
二日間、常に死の危機を繰り返していた彼女のテンションはバグっていた。
「いい?結界を解除しようとしていた『四大天使』は今は居ないわ。けど、この結界が破られるのも時間の問題。それまでに『詠唱』を終わらせないと、大変なことになる」
アミーは、その状況を冷静に遂行しようとしている。
「わかった。それに…」
「そろそろ来るよね…『神』が」
そう。全ての元凶たる『神』が、僕らをみすみす逃すとは、考えにくい。
ありえない。全てのリスクを打ち砕かんとしていた『神』が、ここで危険因子を叩かないハズが無い。
「僕は…何をすればいい?」
「決まってるじゃない、トラオア・フロイント・アミークスを守って。それだけよ」
僕らをめがけてやってくる『天使』達は皆、命を狙ってやってくる。
外の彼らが守ってくれるとは言えど、それだけを信頼するワケにもいかない。
「じゃあ、行くよ…みんな」
アミーは胸の前に十字を切りながら、言った。
「礼拝…そして混沌と生じた歪み…歪故に論ずるは愛、あるいは情動。もたらさる物として、その変革を…示せ、我等に…」
「はいはい、そこまでそこまで。ゴメンね?突然割って入ってサ」
突如として、その男は。
僕らの結界に『侵入』した。
「誰だっ!」
「怒らない、怒らない。そもそもの話をしようか?下級の天使共がここに入れないのは当然さ。天使が編み出した術式に阻害される天使…ウン、実にキチンとした効力を持っているねェ」
僕はその男に、ただシンプルな『恐怖』を抱いた。
人間の姿をしている。無地の白いティーシャツ、よれたジーパン。
どこにでもいる、青年に見えたが。
本能が言う。
人間ではない。
「で、術式を天使に与えたのは誰だい?」
また強い光が、僕らに射した。
「僕だ。ハハっ、面白いよね?我が子が親に歯向かうなんてさ…笑えるよ…」
まさか、コイツが。
「来たか、『神』っ!」
「これはこれは。『西園寺洋介』君だね。いやあ、非常に面白い。面白いねえ」
こちらを常に、にやにやと。
嗤いながら、眺める男。
「面白いのは『祝福』だけじゃないみたいだ…ふふ…君の『過去』も、そうだねぇ?」
「…!ダメだよっ!西園寺洋介!」
その静止は、僕には届かなかった。
「…………………………」
黙って僕は、男に歩みを進める。
「ダメだよっ!」
アミーは僕に飛びついて、僕の手を強く引いた。
「…人の過去を『面白い』なんて、言わないでください」
思いとどまる。今ここで、僕の『暴力』が炸裂するのは『普通』じゃない。
「ははは…そういうところ『人間』だね」
「本当の君は」
「『人間』なんかじゃ、無いのにね?」
「…?どういう…西園寺洋介⁈」
僕は走り出して、他の何も視界に入らないほど。
強い拳を、男にぶつけた。
強く、怒りが。
僕を動かしてしまった。
「痛い、痛いねぇ」
めりこんだ拳を払いのけ、笑いながら男は言う。
「暴力なんて、『普通』じゃないだろう?人間」
そういって、男の体はだんだんと透明に、消えていく。
「直ぐに来るよ。君達にとっての『悪夢』と共に、ね…」
ただ『挑発』を成して、消えた。
「…ごめん、アミー。僕は…止まれなかった」
「ねぇ、西園寺洋介」
「あなたは決して、一人じゃないから」




