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ノーマライズ・アナライズ  作者: タケダ
32/42

『4』体の骸。 A man who wants to die is like a man who is already dead. (3)

 遂に到達する。既に僕らは目前に目的地を控えていた。


 『方舟』が致命的なダメージを受けている今、天使の大群は若干の統率を失っている。


「アミー!アリエルがいる場所まで、あとどのくらい⁈」

「も、もうすぐ!もう、一瞬だよ!」

 このチャンスを、みすみす逃すわけにもいかず、僕は必死に前へ進む。


 その時だった。


 僕らのもとに文字通り『光』が射したのは。


「ふ、ふふふ、ふふふふふ…」

 けれどもそれは、僕らに『希望』を指し示す、光などでは、ない。


「こ、これは…?」

「西園寺洋介、急いでっ!」


「もう、遅いのではないのかね…?『罪人』の諸君」


 降臨する。


 『神』の後光だ。


「不思議にも、私が差し向けた…『熾天使』を…『堕天』させただけでは無い。こうして、私達の生活を『破壊』せんとして『時間』すら、我々から奪おうというのか?『サタン』よ」


 姿は見えないが、どこか遠くから声がする。

 語りかける、

 騙りかける。

 光は『方舟』の方から射していた。つまり。


「あんなところに居るのか…『神』様は」

 こらえきれない怒りは、言葉となって、僕の口から洩れた。

「嘘ばっかり、よくもまあペラペラと…!」

 その直後、大きな声が、再び世界に轟いた。


「行け!私の子らよ!かの『大悪魔』の企てを、破壊せよ!」


 その声と共に。


 また、白い群れが。


 恐ろしい勢力となって、こちらに押し寄せる。


「西園寺洋介!着いたよ!」

 僕はそのスピードを緩め、スクータを停止させる。

 後方を振り返ると、大群が、僕らに向かって押し寄せている。

「アミー、走ろう!」


 見ると、確かにそこには『おかしな空間』があった。

 『大天使』アリエルの姿が見える。そしてアリエルに向かって襲い掛かる天使が行く手を『空間』に阻まれていた。円形の壁があるかのように。

 しかし…アリエルの場所までたどり着くのは容易では無さそうだ…。


「ど、どうしよう…西園寺洋介、あそこまで行くのに、こんな量の天使…私たちじゃ…戦えない!」

「落ち着こう、アミー。何か手はある、きっと『普通』に…」

 僕らの視界の先には、大量の天使が居る。

 『方舟』からも、更に大量の天使が押し寄せている。


 考えろ。


 考えろ!


「ダメだよ!西園寺洋介、このままじゃ…!」

「マズい…『普通』に負ける…」


 僕の『祝福』がどうだ、スクータでどうだという話ではなく、ただ進めない。

 目的地は目前なのに…!


 押し寄せる天使の大群は、徐々に接近する。

 どう、したら…!


 瞬間、遥かな上空から。


 その声は、轟いた。


「おいおいおいおい」

「おいおいおいおいおいおいおいおい」

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」


 僕らをかき回す、『異常』の象徴にして。


 世界すら敵に回す、『最強』たる『理不尽』の声。


 携帯が震える、着信だ。そしてその、電話の主は。


「洋介君!久しいな!いやはや、君の『推理』にはシビれたぜ…『全国連続不審死事件』の全貌が、ここまで見えるなんてさぁ、思ってもみなかった!」


 ニヤニヤとした笑いが、その姿を見ずとも僕には想像できた。


「ユタカ先輩…!昨日のメール、読んでくれたんですか!」

「ああ、全貌解明の連絡と『救難要請』、しかと受け取った。まあそんでも、頭を捻ったよ。君が置かれている状況、そしてそれを打開出来るだけの、切り札ね...」


 僕は電話を取りながら、真正面に走り出した。

 アミーの手を引きながら、僕らは進む。


「西園寺洋介⁈行けるの?」

「うん、僕らは…『普通』に進むだけでいい」


 もう僕には、ここを突破できない未来など、一つも見えなかった。


「例えば、だ」

「洋介君の所に『警察』を差し向けたとして、君達の敵は止められただろうか?」

 止められない。


「『自衛隊』の戦車は?」

 止められない。


「『米軍』の核爆弾?」

 止められない。


「そう、その全てが…アミーちゃんやセラフィムくんの様な…非現実の存在になど、対抗できない」

「けれど」


 けれど、僕らは知っている。


 その全てを凌駕する、たった一つの理不尽を。


「今、君らの前に…着地したかい?『最終兵器』は」


 ドスンと音を立てて、はるか上空から。

 生身の『人間』が、降ってきた。


「よお、お二人さん、元気にしてたかよ?」

 絶空独尊は、そこに居た。


「お久しぶりです、絶空さん…行方不明って話でしたけど?」

「ん?ああ、そういやそうだったなぁ。何、ちょっと『断食』しててな?インダス川で沐浴してたんだ、悪ィな…心配かけちまってよ」

 インダス川で断食しながら沐浴。

 全部違う!


「あー、冗談だと思わないで欲しいんだけど…」

 ユタカ先輩の声が聞こえる。

「その『最終兵器』を回収したのは、インダス川だ…そりゃ、僕の情報網に引っかからないわけだ」

 逆に尋ねよう。

 どうやってインダス川の情報網を見つけてきた?


「で、俺の仕事は…ユタカってヤローに言われた通りにやりゃあ良い訳かァ?」

「そ、そうです…って、もう目の前に!」

 与太話に花を咲かせる暇もなく、僕らに押し寄せる『天使』の数々。


「ふん、たかが人間、一匹増えたところで、無力!」

「やるぞ!皆」

 く、来る…。


「ああ?んだよ、せっかく話してんのによ」


 言って、絶空は大群の方を向いて。


「帰れッ!」


 ただ一言、『一喝』した。

 瞬間、僕らの体はびりびりと震え、耳栓をしていないことを後悔する。

 それどころじゃない。

 海の波は激しくうねり、風が起き、周囲のものを、強く揺らす。


 僕らが大きな被害を受けなかったのは、声を発するタイミングで、絶空さんが僕らの方を向いていなかったからだ。

 目前の大群は、ばたばたと…地面に落ちた。


「俺の声ってよお…うるさいってぇ評判だぜ?」

「う-ッ、耳がじんじんするよお…」

 同じ人間が、ここまで規格外の力を持っていると。

 人体の構造から、疑ってしまう。


「ぼさっとしてねえで、行け!ピンチなんだろ?『世界』がよ」

「は、はい!」

「ピンチってのは、お互い様だ。俺も今月は金がやばい」


 断食したのに?


「さ、行くんだ洋介君!あとは僕らに任せて、さ」

 ユタカ先輩も、また上空で僕らのサポートに回っている。

「行こう、アミー!」

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