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ノーマライズ・アナライズ  作者: タケダ
31/42

『4』体の骸。 A man who wants to die is like a man who is already dead. (2)


 何千もの天使を、その一撃で飲み込んだセラフィムの炎は…『熾天使』の名を再び刻んだが。

 それでもまだ、氷山の一角と言わんばかりに千、万という大群が『方舟』からは押し寄せる。


「はあッ…はッ…まだ…まだ来るぞッ!」


「せ、セラフィム!」

 明らかに疲弊しきった姿で、彼はスクータの後部座席に跨っていた。


「あ、あと少しだ!僕も頑張るから、耐えてくれ…!」

「わ、私が癒すから…待ってて!」


「…ッ…いいか…よく聞け…。俺はあと、雑魚天使の癒しを受けたとしても…火球は撃てて五、六発」


「急いでくれッ…『神』が到達する前に、結界にたどり着くんだ…」


 言って、セラフィムはスクータから離れた。


「ま、待って!セラフィム、まだ回復してないよ!」


「セラフィム、駄目だ!回復を『普通』に待ったほうがいい!」


「時間がねェんだ!俺が撃てる球なんざ、こッからの戦いじャ、歯が立たねェ!」

 セラフィムは、手元に十字を刻み始める。


「いいか!俺がここで、あいつら全部を相手取るッ!」


 僕はその発言の耳を疑った。

 そんなの…。


「無茶だ!『普通』に考えろ!そんなの出来っこないだろ!」


「『普通』に考えてちャ、勝てねェに決まッてんだろうが!俺は、やるッて決めたらやるんだよ!」


「だ、駄目だっ!セラフィム!戻ってこい!」


 叫びもむなしく、セラフィムとの距離は、徐々に開いていった。


「セラフィムっ!」


 出会いは、気づかないうちにじんわりやってきて。

 分かれはまた、唐突にやってくる。


「父と」

「子と」

「聖霊の」

「御名によって」


「待って!セラフィム、ッ駄目だよそんなの!アイス食べるんだよ!帰って皆で食べるんだよ!」


 アミーがスクータから降りようとするのを、僕は必死に止める。


「アミー!駄目だ、君は行かないと駄目だ!」


「おい!雑魚天使、よく聞けや!」


 セラフィムと、距離が離れる。


「てめェはよォ!てめェの責任を、全部『実』に押し付けた!」


 距離が離れる。


「結果、清水翔子はああなッた!」




 距離が、離れる。




「そんでも今のてめェは!そいつを償ッて、戦おうとしてるッ!」



 離れる。




「いいかッ!『序列一位』たる『執行人』が証明する!」





 離れる。






「てめェはもう、立派な『天使』だッ!忘れんなあァ!」






「なんで!どうして!居なくなっちゃダメだよ!ダメだよっ!」

「アミー、駄目だっ!行こう、僕らは!」

 暴れるアミーを、僕はどうにか抑える。抑えないと、ならない。


「やだっ!やだよーっ!なんでっ、なんでっ!」

「『普通』に行かなきゃ駄目なんだ!『友達』が命を張ってるんだ!」


 再び訪れる大群は、こちらをめがけて直進する。


「行け!今はあの『堕天使』セラフィムも居ないぞ!」

 けれど、僕には恐怖はない。

 もう見えなくなるほどに、僕と彼の距離は開いてしまったけれど。

 『熾天使』セラフィムの、すべてが。

 僕らの隣で、生きている!


「なんだあ⁈あのでかい隕石は!」

「や、やばいやばい!なんて規模だ!」

「あの『隕石』、まさか…」

「『方舟』を狙ってるのか!」

「と、止めろっ!止めないと…大惨事だぞ!」

 セラフィムが放った、全身全霊の全ては…僕らのはるか上空で、青色を朱に染め、炸裂した。


「また…守れなかった…」

 アミーは小さく呟く。

 消え入るように。


「守れなかったなんて、言っちゃ駄目だ…」

「セラフィムは、命を懸けた。それだけなんだよ」

「命を懸けて、僕らを進めたんだ。『執行人』として、『正義』の名の下に…」

 アミーは黙っている。僕の肩に触れる彼女の体は、小刻みに震えていた。


「…どこまでも行こう。三人で。君は立派な『普通』の天使なんだから」

「トラオア・フロイント・アミークス…」

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