『3』人の犯罪者を匿って。 There are no extenuating circumstances! (10)
「作戦通りに行こうね…!」
「アミーよォ、てめェの作戦ッてのは…このスクータで…正面からあの『天使』の大群を突破するッて話か?言ッておくが、そいつァ作戦なんかじャねェ…『ヤケクソ突撃』ッてんだ!」
僕らがたどり着いたのは、海辺に広がるランニングコース、明石市中崎一丁目。大阪のホテルを出発したのが朝五時の事だったから、目的地には素早く到達した。
時間の真ん中、決定地、その象徴。
その風景は、かなり『異常』なものだった。
「あの…祭りに来たみたいに…うじゃうじゃと居るのが…全部『天使』?」
ランニングコースを埋め尽くすようにして『天使』が列を作る。浜辺にも蔓延る彼らの存在が、僕ら人間に幸福を与える存在だとしても。
僕は少しの『恐怖』を覚えた。
「それだけじャねェ、空を見てみろ」
「…!」
僕は言葉を失う。
「あれは…一体」
そこに見えるのは、巨大な『船』…。あまりに巨大なその様は、どんな物だって比較の対象にならなかった。ただ、雲の中に鎮座する巨大な船と。
それを取り巻く様に、一見すれば『雲』の様にも見える…白い、塊。
「『方舟』だ。どうやら意地でも俺らを潰したいんだと…『神』ッて奴は」
そんな大群を前にして僕らは、三人。
「あ、あの大群がいる、ど真ん中に…行くってこと?」
「アリエルが張った結界に飛び込まねえ限り、俺らは儀式を行えねェ…つまり、今の『神』が自由に歴史を変えて、俺らの存在ごと消されて『詰み』ッて事だ…見るに、まだリミットに猶予はあるぜ。神が直々にやッて来るはずだが、その姿はまだ見えねェ。今しかねェッて事だな」
周囲に人間の姿は見えない。また、前のように『術式』が展開されているんだろうと僕は推察する。
「『普通』もっと策は練るものじゃないの?ほんとに行くの?この『プリマーちゃん』で?」
「あったりまえだよ西園寺洋介!逆に聞くけど、他にある?」
ない。
ヤバくて笑う。
「いいか、今も俺達は〈ハリスタスの恩寵〉で…気配を消している。が、弱体化した俺の術式じャあ、気配を消すのが精一杯で、スクータの音なんて聞こえた日には、その意識は全部こッちに向いちまう」
「ど、どうする」
「焦るな、いいか…いくら弱くなッたッて、術式を展開する術が失われたわけじャねェ、そこらの雑魚なら俺は追い払うくらい出来んだよ」
「もし傷ついても、私が治すよ。だから西園寺洋介、あなたはここを」
「全速力で、突っ切るしかない」
とんでもない話になっている。プリマーちゃんにはそこまでの馬力はない、それが魅力と言われれば魅力なのだけれど、この局面ではデメリット以外の何物でもない。
さらに…『堕天』し、弱体化した天使が二人。とてもじゃないが、『普通』に考えれば…。
勝ち筋なんて、一つもない。
けど。
「僕が今、信じるべきは…『普通』の仲間達だ」
スタンドを蹴り上げる。
スイッチボックスを捲る。
セルボタンを押した。
始動音が鳴る。唸るエンジン。
「さあ、皆」
「極めて『普通』に、戦おう」




