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ノーマライズ・アナライズ  作者: タケダ
24/42

『3』人の犯罪者を匿って。 There are no extenuating circumstances! (5)


 断片的な記憶が、また僕の視界に流れる。

 その後も、いじめと思われる攻撃は、清水祥子を常に襲ったのだ。


「ねえ、ショートカットも…似合うかな…」

 それまでの綺麗な長い髪は、無造作に切られてしまった。


「替えの靴下、もう無いなあ」

 洒落た靴も、無くなっていた。


「トラちゃん、私の筆箱…知らないよね…」

 筆箱は、簡素な袋になっていた。


「あったよ、私の上履き…池に浮いてたんだ…!」

 学校では、スリッパを履いていた。


「私の課題、いつも提出してない事になってるのって…何でかなあ…」

 成績も、徐々に落ちていった。


「私がもっと、しっかりしてたらなあ…」



「いつになったら、返してくれるのかな…私のカバン…」



「進級だってあやしいんだ…トイレにずっといるから…」



「違うよ、これは私が間違えて池に落ちちゃったから」



「これも私が転んだ傷だよ、背中も」



「だって、私がどんくさいんだよ、仕方ないんだ」



「あの子は何も悪くないよ…私以外を責めないで。お願い…」



「最近の流行りは、私に何かを投げる事…なのかな?」



「授業中回って来る手紙に、私の事が書かれてるのかな?」



「机の中から…泥が沢山出てきて…」



「ロッカーの中が、全部無くなって…私の荷物だけは、返してほしいんだあ」



「今日、抜き打ちテストなんて知らなくて…ドジだなあ」



「みんなと仲良くできないのは、きっと私が真面目すぎるんだよ」



「もう、プリントが配られないから…職員室に取りに行くのもしんどいなあ」



「トラちゃん、悲しそうな顔、しないで?」



「私の発表だけ、拍手が無いけど…こんなことを気にしちゃうから、ダメなんだなあ」



「また私だけ、体操服かあ…」



「お母さんに学校まで送ってもらうって…なんか私が偉くなったみたいだね?」



「びっくりしたなあ、朝から椅子が無いなんて」



「お弁当がひっくり返されちゃうなんて、ビックリ…」



「でも、皆きっと分かるんだ」



「いつか、皆大人になるんだ…」



 全てをアミーは知っていて、何度も学校、あるいは町、あるいは家に赴いて、そしてその全てに介入を試みるが。


 清水祥子は、それを拒む。


「ねぇ、トラちゃん」


「私が皆を導かないと!だから、私がやらないと、意味が無いんだ…」


 時が過ぎていくことを追憶の中で実感する。


 徐々にやつれていく彼女の姿と。


「祥子の『願い』が実るなら、私もそれを手伝う事にする!天使だからね」


 それをただ眺め、ただ『願い』の為に寄りそう視点の主。


 僕はその瞬間を、二人の笑い声を聞きながら、ただ、眺めるだけ。

 そして、大きく世界は変化する。


 その時は、やってくる。


「…」


 暗闇…深夜帯だろうか、環境音も少ない。


 まるで上空から眺めているような、そんな位置で、何かが視える、聞こえる。


 これは…街の、裏路地。人気のない狭い空間に、ただごろんと転がっている人間の姿があった。


 清水祥子だ。


「祥子…!」

 勢いよく彼女に近づく視点。


「祥子!どうしたの、ねえ、祥子⁈」

 彼女はその両手で自身の顔を隠すようにして、静かに体を揺らしている。


「…」


「祥子!」


 彼女の様子が、これまでと明らかに異なっている。


「…」

「祥子…?」


 ビリビリと破られたその制服、泥まみれになった髪、あざができた顔。


「…酷い事…」


「…酷い事…された…」


「私が…バカだった…」


「私が…信じたから…」


 その痛みが、果たして人間でない天使に、理解できただろうか?


「ねえ、祥子…?どうしたの⁈」


 人間の中にある、『そんなに頭の良くない部分』を、理解できるのだろうか?


「祥子…帰って『勉強』しよう?」


 否、人外たる天使に、その全てを理解することは出来なかった。


「祥子は、もっと賢くなるんだよね?」


 天使は、その純真の中に。


「みんなを正しく、導くんだよね?」


 惨忍な悪魔を飼っていた。

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