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ノーマライズ・アナライズ  作者: タケダ
22/42

『3』人の犯罪者を匿って。 There are no extenuating circumstances! (3)


 ホテルの自室の扉を開ける。

「カップ麺カップ麵カップ麺カップ麵カップ麵」

「っちょ…アミー、落ち着いて」

「おなかが減って、力が出ない…」


 ケトルで既に湯を沸かして準備していたアミーは、僕が帰って早々にカップ麵をぶんどって湯を注いだ。食欲の権化め。


「ッたく、さすがの食い意地だなァ?『雑魚天使』」

 そう言ってセラフィムは、大きくベッドに寝転がっている。


「セラフィム…いつの間に?」

「んァ?俺は俺の準備を終わらせたからここに来た、そんだけだ」


 準備。来る何か。

 僕は地獄から追い出され、気付けば元のエレベータの中だった。そこには制服姿の少女…ベルフェゴールはおらず、まるで最初から僕一人だけがそこに居たかのような感覚で。

 邂逅した『悪魔』は僕に伝えた。

 最終決戦。それはすぐそこまで来ているという実感が、僕に走る。


「もが、もがが」


 アミーはカップ麺を物凄い勢いで食しては、そのカップの中身を既に平らげていた。

 え、待ってもう三分経ったの?

 そんなわけなくない?


「てめェは忙しねえなあ、雑魚天使よォ。その早食いスキルは一体どこで覚えて来たんだァ?」

「ふふん、私は南雪谷では『喰らう可憐』と呼ばれてたんだから」

 僕が眠った一週間で何があった?


「んだとォ⁈まさかてめェ、あの『渦の啜る闇』を倒したッて伝説の早食いか!」


 知らない知らない。


 そんな熾烈なバトル、どこでやってた?


「でも、聞いてたよ。セラフィムも通じゃ噂の『マニア』だって。『柚子胡椒五リットルの狂気』って、セラフィムの事だよね?」


 だっっさ。さっきまでの『喰らう可憐』、『渦を啜る闇』どこ行った?もうちょっと捻れよ。


「『七味七トン』なんてのもあッたなあ」


 え、それはもうディスられてない?


「俺が店に入る度にザワついてた。多分ドン引きされてる」


 自覚あったんかい!


「人間と味覚は…どうにも合わねェみたいでなァ…」


 …ちょっと悲しんでる。同情するけど、柚子胡椒五リットルはドン引きかなぁ…。

 なんだか懐かしい様な、そんな会話を交わしていると、時間だけが過ぎていった。


 そんな休息の宴もたけなわに、セラフィムは話を始めた。

「さて、俺は『最後の準備』にやッて来た。備えあれば憂いなし、備えなければ憂いありだ」

「雑魚天使。てめェも覚悟は出来てんだろ?ここまで着いて来たッて事はよォ」

 空気が変わって、僕はすっと背を正す。


「俺が居ねェ間に、ただの人間一人くらいなら、そのまま放置して逃げる事だッて出来た筈だ。事実、俺は隙を幾つも与えたが…てめェは逃げなかった」


「雑魚天使、改め『トラオア・フロイント・アミークス』。悪ィが教えてもらおうか?事の『顛末』を」


 セラフィムの鋭い目は、かつての『執行人』としての、その審判を果たすに足る強いモノで、思わず僕は委縮する、けれど。


 アミーはそれに動じず、また芯を持った姿をしていた。


「うん。私も覚悟を決めた、けど」

「ここで動じずに、あなた達に『伝える』事は出来ないと思う」

「だから、記憶の記録、あるいは、記録の記憶を…」

「二人には、そのまま伝えたい」

 僕はアミーに向かってうなずく。


「アミー、僕も君の過去を背負う。さっきはありがとう」

 セラフィムは怪訝な顔をして。

「…ちッ…俺には何もわかりャしねェが、そんでも雑魚天使が覚悟を決めるッて事は、それ相応のコトが、俺のいない間に起きたんだろうよ…」

 なんて言った。僕には、それが可笑しくて。


「え?セラフィム…もしかして、ハブられて悔しがってる?」

「んァ⁈てめェ、ふざけた事ぬかしてんじャねェぞ!そんな訳ねェだろォが!クソガキ!」

「は…ははは!照れ隠しに必死だねっ…今度、ちゃんと話すよ…はははは!」

「よし、絶対ェ殺す、ここで今殺す、焼き殺す、滅却する!」

「ば、バカ!『普通』に死んじゃうって!マジここで死んだらさっきまでのしんみりがパァになる!」

「はい、そこまで!二人とも、座ってください」

 アミーに制されて、僕らは大人しく床に座った。


「すんません」

「ごめんなさい」

 謝罪を聞き入れたアミーが、再び話を始めた。


「私さ」


「旅の途中みんなで寄った、サービスエリアで食べたチョコのアイス、多分忘れない」


 アミーは両手を前に出して、僕とセラフィムの額に掌を当てた。


「だからさ、二人とも…」

「全部終わったら、アイス食べに行こ?」


 そして、アミーの願いに。

 極めて、『普通』に僕らは答えた。


「いいか、腹ァ壊すからよォ」

「アイスクリームは、一つまでだね」

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