『2』個のリュックサックだと、足りないだろう? If you are going on a trip, a suitcase is a good idea. (7)
「さて、そろそろ教えてくれねェかァ?大天使『アリエル』さんよォ」
そう言って、縄で縛った彼女を抱えてスクータの横を飛んでいるセラフィム。
「な、何よ、あたしは何も知らないってば」
「とぼけんじャねェよ、おいおい。てめェの体を治してやッたのはウチの天使だぜ?」
「む…」
と言って、やはり黙る大天使『アリエル』。
ウィリーで彼女を撥ねた時、僕とアミー共々全員がブッ飛んだ。世間一般では『事故』と言われるそれだったけれど、セラフィムがアミーを空中でキャッチした後、アミーの『願いの力』こと『治癒』によって僕と大天使も無事一命を取り留めることになった。
いや、まだ全然全身が痛いけど。
アリエルさんの方は、どうやら…まだ飛べない程度の傷を残しているようだ。逃げられない様にしているのだとは思うけれど、何を聞き出そうって言うんだろう?
「じャあ軽いジャブから聞くけどよォ。ここ最近『天界』はどういう動きを見せてんだ?」
「どういう…動き?」
「私とセラフィムをどうして堕天させたか、西園寺洋介がどうしてサタンと成ったのか、とか…そういう話は無かったの?」
「無かった…ワケじゃ、ないけど…」
「言えや、オイ」
空を飛びながら縄に吊られてプラプラ浮いている女性に恫喝する男。
…絵面ヤバ。周りの人が見たら即通報だろうな、と思いながらも…彼ら彼女らの姿は、『意識すれば見えるけれど、意識しなければ見えない』らしいから、この姿が公衆の面前に晒されることは無い。
「言わないと、おしり叩くよ?もしくはその胸をむしり取ってやる」
かなりエグめの刑罰が待っているらしい。そしてかなり胸の恨みが強いらしい。
「…『神』があなた達を『堕天使』として広報したのは知っているわよね?なら話は早いわ。あなた達が『二十八人』の殺人に関与したと『神』からの報せがあったの」
二十八人の、殺害。
全国連続不審死事件。
セラフィムがアミーに着せた、否、神がアミーに着せた、冤罪。
「それってつまり、アミーだけじゃなくって、セラフィムにまで冤罪が掛けられた、ってこと?」
「どうやらそうみてェだが…それをてめェら『バカ天使』共が信じるッてことは…それなりの『証拠』があるんだろ?」
セラフィムが大きく踏み込んだ。
「…あなた達が」
「神の部屋から」
「『生命の実』を、持ち逃げしたって、聞かされたわ」
知恵の実。旧約聖書、創世記に記されていたその名を僕は思い出す。
「生命の実って何?セラフィ…」
僕は呼びかけて、途中で止めた。
これまでにない、酷く深刻な顔つきをしていたからだ。
まるで、この世界そのものに『絶望』しているような。
明らかに、『普通』でなくなった『表情』。
「生命の…『実』?」
アミーはどこか落ち着かない様子。
僕は再度疑問を呈する。
「ち、『生命の実』がどうしたの?みんな」
「こいつァ、立派な『冤罪』だぜ…無実の俺らに、罪が課せられた」
「確実な裏切りにあッてるッてワケだ」
僕にはまだ、気になるところもあった。
どうして『実』を盗む事が、『二十八人』の殺害と因果関係を持つのか。
あらゆる疑問が、僕らを襲う。
ちら、と後ろに目をやった。
アミーは小さく、震えていた。




