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ノーマライズ・アナライズ  作者: タケダ
10/42

『1』つ卵を砕いてしまえば、あとは簡単に。 Probably won't be able to eat it. (10)


 短い人生だった。アニメに換算すると二話くらいってところだろうか。

 最期の一日は畳みかけるように『異常』だったけれど、まさか命日になるとは。


 終わったのか。


 あの後、件の天使に半狂乱になって飛び込んで、僕は炎に巻かれて死んだ。


 ただの人間じゃ、歯が立たなかった。

 じりじりと燃やされて、死んだ。


 『堕天使』…トラオア・フロイント・アミークスは一体どうなったんだろう。


 アミー。

 結局大した話も出来なかった。

 何だったんだろう、『人殺し』って…。


『人を一人、殺してしまったの…!』

 反芻する声。

『何人も殺られてりゃア、報われねえよ…』

 反芻される声。


 噛み合っていない…。どこかで、何かがズレている…?


 全国連続不審死事件…そして、『翼』…?


 もう、どうでもいいか…。

 何を考えても無駄だという事は明らかで。この世ならざる真っ暗な空間では、自分の声も、自分の輪郭も、なんだか分からなくなってくる。

 暗闇に溶けて、消えていく。


 死ぬって、こういう事なのか…?


 …まだだ。


 まだ、死にたくない。


 死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

 死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。


 『普通』をはみ出したまま、死ねるはずが無い。


 僕が望んだことは、ただの『普通』。

 『普通』の日常。『普通』に笑いあえる平和な日々。


 根底のところで僕は結局利己主義だ。

 誰にも邪魔されない、『普通』を。

 僕はただ、強く願った。


『それをあなた以外の人間は、普通って言うのよ』


 アタマが割れるように痛い。

 刺激されるトラウマ。過去の記憶。どうして、今。


『君は異常だよ。だから彼女の痛みもわからない。痛みが分からなければ、彼女の悲しみも届かない。冷徹だよ。冷徹だし冷酷だね。どうしてそんなことが言えたんだい?君が〈計画された天才〉だから?人じゃないんだよ。人の心を知らないんだよ。知りすぎているが故の無知なんだよ。だから君はもう、人間に近づくな。少なくとも、普通を知るまでは、君は何者にも近づいてはならない』


 苦痛。絶対に思い出したくないあの過去を、僕は否応なしに想起させられていた。

 また『普通』を求めているから?


『あんたなんか嫌い。大嫌い』


『気持ちが悪い、気分が悪い、醜悪そのものだ、お前は』


『頼むから、生きることを拒否してくれ、肯定しないでくれ』


『存在を認知するだけで俺はお前に不快感を覚える』


『不和だね。君はこの世界から生み出された歪みそのものだ。歪だからこそ不和をもたらせる』


 僕が悪いんだ。

 今回も、あの時と同じだって言うのか。

 僕をまた、殺そうとするのか。

 暗闇に吞み込まれる。


 だから僕は、『普通』になるんだ。今度こそ、『普通』になるんだ。

 だから、僕を許してくれ。

 僕が悪かったんだ…。


「私…嬉しかった。逃げようなんて言われるとは思わなくってさ」

「一瞬だけ、希望が見えたの。嘘でもいいから、すがりたかった…」


 その声は。


 紛れもない、アミーそのもので。


 僕を光の元へ、一瞬で連れ戻した。


「あなたは、本当にどこまでも連れて行ってくれるかもって」

「私、期待してる」


 僕は。

 心の底から願った。


 彼女と、彼女の『普通』を守るだけの。

 力をください。

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