始まりの時(再)
暑すぎて頭がイかれそうなので気紛らわしに書き始めます。(コメディ寄り
このシリーズは1巡目執筆が辛くなった時に書かれます。
どことなく調子が悪い今日この頃。能力の発動もよろしくない。
八雲紫はそんな不調を感じつつスキマに腰掛け、幻想郷を眺めていた。
そこに一人の少女が現れる。
紫はただぼーっとその少女を見つめていた。
一見どこにでもいるような普通の人間に見える。だがしかし、目を離すことはできない。そのような感覚を少女に感じていた。
すると、少女はカツカツと紫に近づき、目の前まで来て一言
「いきなりだけど、あなたのその不調を治させてもらうわ」
そう言うと少女は紫の背後に回りつつ、一本貫手を放つ。
流れるような動き、普段の紫であれば難なく対処出来たであろうが、不調の今では反応が少し遅れ、体の一点に貫手を食らってしまう。
痛みはない。それどころか逆に気持ちよささえある。
紫は、恍惚な気分となりつつ、
そして、体の中から湧き上がるものを感じていた。
それは、中というか胃というか、酔いすぎた時の二日酔いの蘭の真似してぐるぐる回りすぎて酔いすぎた時のつまり吐きkオロr・・・
(※見せられないよ※)
「ん?間違ったかな?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝、蒸し暑さに息苦しさを感じ、巫女はいつもより早めに目を覚ました。
春だというのに、夏のような蒸し暑さ。
あまりの暑さで巫女の寝巻は汗でびっしょりになっていた。
巫女は薄着に着替え、汗にまみれた顔を洗いに水場へと行く。
時期は、リリーホワイトが春ですよーと飛び回って数週間、
つまり、春まっさかり
そんな時期にこの暑さであった。
さて、水場まであと少しという所、
XX三代目博麗の巫女である博麗透香の足が止まる。
水場の前に巨大な邪魔なモノ、いや妖怪がいた。
頭の先から足先まで、やたらとモフモフし、やたらとサイズのでかいものに包まれた八雲紫がそこにいた。
透香は目の前の紫を睨みつける。
それは水場への通せんぼするように横たわっている。
邪魔である。
さて、先ほど書いたように、本日は夏のような蒸し暑さである。
そんな時にあんなものを着ているとどうなるかは想像に難くない。
だが、着ているのは大賢者として名高い八雲紫である。
そこは当然、温度対策はして・・・
・・・汗だくであった。
全体的にモフモフなあれであるが、見たところ紫の体があるであろう近辺だけ、汗でしなっとしていた。
ポタリ、ポタリ・・・
それはどちらの汗の落ちる音か。
異様な光景。
二人の間に沈黙が落ちる。
透香は、どこからともなく針を取り出した。
(針・・・だろうか。少し長いような気もするし、太いような気もする。)
それを全ての指に挟んだ透香は、投げる構えをとり・・・
次の瞬間、
丸ごとスキマに沈んだ紫は土下座の姿勢で現れていた。
「申し訳ありませんでした」
お手本のような土下座で謝罪の意を示す紫
果たして幻想郷の賢者が土下座をしたことはあっただろうか。いや、ない。
少しの沈黙の後、透香は構えをやめ、紫の目の前まで近づいていく。
「顔を上げなさい、紫」
顔を上げた紫は少し目を潤ませていた。
そんな紫に対し、透香はにっこりと笑いかける。
ほっとしたように泣き笑いをする紫と笑顔の透香が見つめ合う。
そして…
ーずぶりー
先ほどの右手に束ねた針を紫の延髄へと突き立てたのであった。
突き立てられた勢いのまま、紫は倒れる。
「異変解決ね」
幻想郷の賢者は死んだ。
ーーーーーーーー
博麗神社縁側
しくしくと泣く紫とイライラが治まらない透香、そして呆れたようにその光景を見る魔理沙の3人がいた。
「酷いわ酷いわ。誠心誠意謝ったヒトにこんな仕打ちなんて!!」
「ふん…そのまま死ねばよかったのに」
「ああ!そんな…酷いわ。シクシク…」
「うぜぇ…」
「いや、二人共キャラ変わりすぎだろ…」
目の下に手を当てて、シクシクと泣く紫(涙は出てないが汗だく)
腕を組み、顔を背け、苛つかせるように足をトントンと何度も叩く透香(汗だく)
「・・・で? あれは何の真似?」
「あの姿の名は荒巻スカルチノフ。寝ているだけと侮るなよ。あれは怒らせると逆に食べられてしまうんだ。」
ドヤ顔で指を立てつつ説明するのは魔理沙である。
的外れな回答とドヤ顔に余計にイラっとした透香がキレる。
「真似してたやつの名前を聞いてんじゃないわ! どうしてあんなことをしたのかって聞いてるの!」
「ちょっと頼まれごとよ。あの場所であなたに殺される必要があったのよ」
紫は泣き真似をやめ、扇子を広げつつこう話した。
予想外の答えに透香は目を丸める。
「え・・・本当に死んでたの・・・?」
「そうよ。まあ、ちょっとした仕込みはあるわよ」
肉体が強靭な妖怪はあの程度のことで死ぬことは普通はない。
しかし、そこは境界を操る程度の能力を持つ紫である。
あの瞬間、死ぬことは造作もなかった。(同時に生き返ることも
「いや、わからん。なんで死ぬ必要があるのよ。しかも私にって・・・」
「ごめんなさい。これ以上は言えないのよね。契約だから」
紫は扇子で口元を隠しつつ答える。扇子によってその表情は見えない。
「契約?・・・あなたと対等に交わせる相手なんてそうそういないと思うけど」
「ふふ。その内わかるわ。用件も終わったし、これで失礼するわね」
「あ、ちょっと。まだ話は」
さよなら~と手を振りつつ紫はスキマへと消えていった。
残されたのは呆然とする透香とやれやれとため息をつく魔理沙のみ。
「あいつはいつも通りだな。神出鬼没に現れて何かしていったと思ったら、あっという間にいなくなる。わけがわからん」
「そう言いたいのは私よ・・・・
てか、魔・・・理沙・・・。・・・?」
「なんだよ首を傾げて?なんか変なことでもあったか?」
「いや、あなたは魔理沙よね」
「おう。普通の魔法使い、魔理沙とは私のことだ!」
胸を張りつつ、どや顔する魔理沙である。
「いや、普通なのにどや顔するってわけわかんないんだけど。
まあいいわ。で、なんでこんな朝早くからいるわけ?」
「朝の空中散歩してたらやけに目立つ着ぐるみがあったから、来ただけだが?」
「・・・空中散歩ってすごい違和感あるわね」
「やってみると意外と爽快感あるぜ。乗ってみるか、箒?」
自慢の箒を示すように軽く叩きながら、魔理沙は訊いてくる。
しかし、その目にはイタズラっ子のような雰囲気があった。
「いや、いいわ。なんかやらかしそうだからやだ」
「断られちゃった。悲しいぜ」
「うーん・・・」
なんとなくはぐらかされたような雰囲気を感じ、透香は首を傾げる。
魔理沙はそのまま畳みかける。
「そういえば、散歩している時にもう一つ気になる場所があったな」
「あれと同じくらい気になる場所があるの・・・?」
透香はスカルチノフな紫を思い出して、困惑する。
「そうだな・・・あれくらいかはわからんが、中々特徴的だったよ」
「あまり気が進まないけど・・・それはどこなの?」
「人里だな。入り口にぶっとい木と何人かの人がいたぜ」
魔理沙の言葉を聞いて、透香は背中に悪寒が走る。
その正体はわからないものの、行く必要があるように透香は感じた。
「人里・・・太い木・・・様子を見に行く必要があるわね」
「お、今から行くか?送っていくぜ」
「それは遠慮しておくわ」
「つれないなあ・・・」
透香は準備もそこそこに、急ぎ足で人里へと向かっていった。
それを見つつ、魔理沙はつぶやく。
「無くなったものは戻ってこない。特に命はな・・・」
透香の後を追うように、魔理沙も箒で人里へと向かった。