No.1 屋上
___不思議な子。
夜の騒がしい東京で見つけた君、そんな君への第一印象だ。
君は他の人みたいにお酒を飲んだり男と歩いたりしていなかった。むしろそんなことをしている人を蔑んだ目で見ているような人だった。
この街でそんなことに興味を示さない君に俺は興味を持った。
だから君を知りたいんだ。
でも君は___。
チャイムが鳴ると同時に静寂だった教室が一気に騒々しくなる。
ぼくはそんな騒々しい空気を避けるように教室を出た。
チャイムが鳴ったばかりだと言うのに廊下にもお弁当を手に持った生徒たちで溢れかえっている。
生徒たちの間を縫って屋上行きの階段を目指す。
途中、ふざけていた男子生徒にぶつかられながらも階段につき、上っていく。
上っていくにつれ生徒たちの声はしなくなり完全に聞こえなくなった時には屋上へと繋がる扉の前に来ていた。
キィ…という古臭い音を立てる扉を開けると目を背けたくなるほどの晴天が広がっていた。
適当なところに座って持ってきたメロンパンを食べる。本当はお弁当を食べたいけどそんな時間はないし親は作ってくれない。
スマホを取りだしいつものように皆のつぶやきを見る。
ぼくのフォロワーやぼくがフォローしてる人たちはほぼほぼ病んでるからタイムラインはいつも大変なことになっている。そんな中で生きてるぼくは普通の人と比べると変かもしれないけどぼくの周りの人と比べればだいぶ普通だと思う。
そんなことを考えながらメロンパンを口に放り込んでいるといつのまにか最後の一口になっていた。
いつもならこのぐらいの時にチャイムが鳴るはず...なんて考えながら最後の一口だったメロンパンを口に放り込んだ。と、同時にチャイムが鳴る。
次の教科は歴史で苦手な教科ではないのでサボるつもりだ。基本苦手な教科か自学で分からなかった単元以外はサボっている。勿論出席日数は一応足りる範囲で、だ。出席日数が足りなくて留年なんてしたら話にならない。
六限目もサボるのでこれ以上学校にいる意味はない。ただ、今帰ろうとするとまだ教室にいっていない先生に見つかって授業を受ける羽目になるのであと二十分くらいここにいなくちゃいけない。
めんどうだな、という意味を込めてため息をつくとキィ...と聞き覚えのある古臭い音が屋上中に響いた。
音の聞こえた方へ視線をやると見慣れた服装の子が屋上に足を踏み入れるのが見えた。
その子はぼくを見つけると目を細めて笑った。この笑い方は地雷メイクをしているその子にはよく似合っている。
「結來ちゃん、またサボり?」
挨拶もなくそう聞いてきたその子の声は高くも低くもなく中性的な声だった。
「やっほ。サボりだよ。」
その子を見つめながらぼくはそう言った。