狂い正義
いや、痛い!こんな痛みで寝れるわけがない!!
私は意識を起こしてしまった。
「あぁ...ぐ..が...!」
黒服は私の腹にナイフ状のものを突き刺しながら、
私を見据えていた。
よくみると、この黒服の人、かわいい顔してるなぁ...
と、なぜか私の脳は思考力と余裕を取り戻し始めた。
私はちょっとおかしくなってしまったのだろう。
ドーパミンがどんどん溢れてくる。
もう、私は誰にも止められない!無敵!最強だ!
黒服はそんな私の顔を見て焦っている。
そして、さらにナイフは深く抉ってくる。
私の身体がビクンと跳ねた。
そんな無意識の行動をさておき、私は彼女の右腕を咄嗟に掴んだ。
「ぐうぅ...!はぁ...はぁ...私は、まだ...やり残したい事が
あるんですよ!」
「それをあなたの勝手な"意志"で潰されるっていうのは、
とても腹立たしい事だ!」
「これは正当な防衛であり、あなたが悪だ!!!」
キュイイイイイイン!!!
私の"冷凍庫"が発動する音だ。
「なっ、何だこれは」
黒服の右手に氷が纏われていく。
それは次第に全身へとまわっていった。
「ぐぅ!...こんなガキごときに...!」
私は腹に刺さっているナイフを抜いた。
私は身動きができなくなり、壊れたおもちゃのように、
のたうちまわっている、黒服の腹に馬乗りになり、顔を殴った。
「うっ!...何だ、お前」
「"ごめんなさい"って言って」
「はぁ?ぐぅっ!!...痛い..」
容赦なく私は彼女の顔を殴り続けた。
この強者の立場を決して譲らないように。
「へ...へへ、友達を殺されて憎いの?ねぇねぇ悔しいの?
私を殺したところで、その事実は揺るがな..ぐあっ!」
こういうタイプは心が弱い。私はそう確信し、彼女に重いパンチをくらわせた。
「ひっ..ぐ..が...」
黒服の綺麗だった青い瞳は涙を浮かべはじめた。
私はその様子を見て、すごく興奮した。
「や、やめてくらさい..お願いします...」
「はあぁ~..."ごめんなさい"って言ってって言ったよね?」
私はとどめの拳を上げた。その瞬間、
「おい、人がいるぞ!」
「せ、先生?」
国語の先生が私に駆け寄ってきた。
「大丈夫か?けがはないか?」
「えっ、あっ、えっと」
私は正気を取り戻したと同時に痛みのショックで気絶してしまった。