異世界療養をしてみます!
『マジつかえねーな、その辺の掃除でもしてろよ!』
進藤達一は月曜日の朝から、部長から詰められ、罵倒されていた。
『進藤さん、前の部署ではそこそこ売れてる営業マンだったのにね。』
『前の成功体験が忘れられないんじゃねえの。ダサいよな。』
進藤は机の掃除を始めた。
『ホントに掃除してんじゃねえよ、お前ホントバカだな!』
限界だった。その日はストレスによる吐き気と戦いながら、なんとか仕事を終えた。
翌朝ー
ピピピーピピピー
携帯のアラームが鳴る。時間は6時30分。
『起きないと、、、、。』
体を起こす。朝から吐き気がひどい。わけもわからず涙が出てくる。
結局その日は会社を休むことになった。
進藤は1日、ベッドで寝ながらボーっとスマホをいじって過ごした。
翌朝、体を起こす。やはり会社に行けない。
1週間後。
進藤は、会社の産業医に会っていた。
『とても疲れていますね。どうでしょう?あなたは勤続10年目だ。ちょうど特別の療養休暇が使えるはず。』
『どんな休暇ですか?』
『しっかり療養して復帰するのもよし。そのまま仕事をやめて、療養先で暮らすのもよし。』
ていのいい退職勧奨か。まあ、戻らないでゆっくり過ごすのもいいか。
『で、どこで療養するんですか??』
『異世界です。』
♦︎
進藤辰一30歳、通称俺は異世界に飛ばされてきたわけだが、どこぞの村の外れだろうか。
所持金は・・・・。
何かポケットに入っている。
『換金カード』
と書かれている。
裏面を見ると、村の酒場のマスターにお渡しくださいと書かれている。
『無くさないようにしなきゃ。無くしたら、俺はのたれ死んでしまう。』
金だけが支えだ。
これを無くしてはただのオッさんだ。
『とりあえず歩くとするか。』
村へ向かって歩いていった。
♦︎
酒場の前に着いた。
『いつかやったことのあるRPGの始めの村、みたいな感じだな。』
ギィ。
古びた扉なのか、そんなお約束かのような音がする。
昼間なのに、酒飲みが多い。
喧騒の中、入り口で酒場を見渡す。
『みんな労働に勤しんでいるのに、昼から酒なんて。』
進藤はぶつぶついいながら、酒場の奥へいく。
ウェイトレスがいる。
『あ、あのマスターはいますか?』
ウェイトレスは振り向いた。
サラサラのストレートヘアで綺麗な金髪。前髪はぱっつんだが、かなり美人。体型は安産型でスタイルは悪くない。
目はくりくりしていて、進藤は思わず顔が赤くなる。
『あ!異世界から来た人ね!ようこそ!村の酒場へ!私はリュウカ、ここでウェイトレスやってまーす!!』
落ち込み気味の進藤にはきついテンションだった。
が、悪気はないんだろう。ニコニコしながらこちらを見ている。
いつも頭から音符が出てそうなスーパーポジティブ人間といった感じだ。
『ここは、みんなのんびりゆるーくやってるから、しっかり療養するといいよ!あ、しっかりは余計か!あなたも何か飲む?ウェルカムドリンクは無料ですよ!』
『あ、いや、酒じゃなくて、これを。』
換金カードを出した。
『あ、これね!あなたずいぶん大きな会社で働いてたのね!換金カード渡してくれる会社って少ないのよお!少々お待ちをー!』
ピューンとどこから聞こえたのかわからないがそんな効果音を出すかのように酒場の奥へ駆け抜けた、
『はあ、なんであんな元気なんだ。俺は、体調不良だぞ。全く。』
リュウカが帰ってきた。
『はい、あなたの銀行通帳!後、寝泊まりは
しばらくは酒場の上の部屋使っていいからねー!』
『ああ。わかった。じゃあ、ちょっと部屋で寝るわ。』
無愛想に答えて、進藤は上に上がっていった。
♦︎
『うー、よく寝たわ。』
進藤は起きる。外はすっかり真っ暗だ。
廊下に出る。お金はあるし、何か食べよう。
ガチャ。
別の部屋のドアが開いた。
『『あ・・・。』』
リュウカだった。風呂上がりなのか、
バスタオルを巻いて少し頬が赤らんでいた。
『お、おうえー!!』
進藤は変な声を出した。
『あーごめん、ごめん!君も今日からここに住んでいたんだっけ!えへへ。』
困ったようにリュウカは笑った。
『一応きゃあ、くらい叫んだ方がいいのかしら。気をつけるねえ、、。』
スタスタ部屋に、リュウカは入っていった。
進藤は緊張しながら、酒場へ降りる。
♦︎
部屋に戻ったリュウカは、床に座り込んでいた。
顔を赤らめ、少し息を上げながら、
『お、男の人にあんな姿初めて見られてしまったわ。悪い気はしないというか、結構タイプ!超ラッキーじゃん!異性として見てもらうフラグ立っちゃった!わーい!』
スーパーポジティブなのであった。