2.初めての出会い
お待たせしました!
これから少しずつ更新出来ていけたらなと思っています。
てくてくと道無き道を歩いて行く。
先程より少し変化があるとすれば黄色、桃色、水色、赤色…と湖の周りにあった花と同じ形をした花がちらほら見掛けるようになったくらいだろうか。
それにしても相変わらず遠く見渡すのを拒むかのように霧はなかなか晴れない。
ただ、彼女の周りにある瑞々しい木々や草花は不思議とそのまま浮き出るように見えている。普通の霧とは違うと思える謎の現象と感覚を覚えながらも、あまり景色が代わり映えのしない森のような場所を歩き続けていて彼女も流石に疲れて来たようだ。
「誰かいませんかーっ!」
彼女は口に両手を添えながら大きな声で人が居ないか、せめて生き物の気配でもしないかと声を出してみるが返事やましてや反応すら返ってこない。
「はぁ、反応が返ってこないよー…」
「んん〜…綺麗な場所だけどさぁ…さすがに見飽きたなぁ〜」
寂しさからか思わず口から漏れる本音。
ため息をつながら、そろそろ一休みしようかと彼女は腰を掛けれる場所を探すためにキョロキョロと辺りを見渡し始める。
何故かさっきよりも周りが見えるような、広くなったような、またしても不思議な感覚にながらタイミングよく見つけたのは大きくゴツゴツした岩、その横には彼女が座りやすそうなサイズの岩もある。そしてその少し後ろの方に最初の湖近くにあった木や花と同じものが生えており、その木自体はそこまで大きくなくしかも彼女が手を伸ばせば届く範囲に食べ頃を思わせるほどに真っ赤でつやつやとした木の実を沢山実らせていた。休む場所にはオススメだよっ!と言わんばかりのタイミングの良い登場に彼女は思わず顔を綻ばす。
彼女は真っ赤でつやつやとしたサクランボのような実を何個か手に取り、先程見つけた岩に腰を掛けてからモグモグと食べつつ木の実を見つめながら考え始めた。
(このサクランボみたいな実を食べたら空腹は凌げるけど…うーん、面倒だからサクランボって呼んじゃおうかな?)
「このサクランボ、手に取るとほんのり赤く光を放っていて綺麗なんだよねぇ〜」
(それなのにあっちのサクランボにはある固い種が入って無いしサクランボよりは少し大きめなサイズだけどこれがまた甘くてジューシーで水分も見た目より含んでいて口の中が幸せ…しかも柔らかくて蕩けちゃいそう…美味しい…あぁ〜…)
木の実を目の高さまで持ち上げながら綺麗だと呟き、更にモグモグと食べていく。
頭の中はグルメレポーターよろしく感想を浮かべながら絶賛の嵐、採れたての真っ赤な木の実……サクランボを深〜く味わい、幸せそうに美味しそうに食べている姿は心の中でグッジョブサインを出しまくるが如くお気に召したようだ。
そんな頭の中が忙しなく動いている彼女の耳に可愛らしい小さな囁き声が聞こえてきた。
「ネェネェ…あのコ、ヒト、かなぁ?」
「えぇ?分かんな〜い似てるけどサ」
「でもアタシたちとおんなじフンイキするよ?」
囁き声の主は彼女の正面にある木の近くに居るらしい。
そこには淡い光を纏いながら手のひらや肩に乗せれるほど小さく人の形をしていて、白い服を着ている…所謂妖精という存在が三人。
背中には愛らしい羽でパタパタと木々の間を飛んでいる。
その子達は彼女に気が付かれていないと思っているのか、どうする?どうする?とコソコソヒソヒソ話し合っていた。
彼女はそんな妖精らしき存在を目ざとく見付け、逃してなるものかとばかりに…ようやく出会えた話せる存在に興奮して急ぎたい気持ちを抑え付けながら相手を驚かせないよう静かに話し掛ける。
「ねぇねぇ、あなた達は私の言葉は分かるかなぁ?もし良かったらここが何処か教えてくれない?」
(なにこれ本当にちっちゃい!!めっちゃ可愛いじゃん!ナデナデしたい!!仲良しになりたい!!!)
少し近付いたお陰でさっきよりも姿が見やすくなり、愛らしい姿をしている三人を思わずナデナデしたい衝動をどうにか抑えつつ返事を待つ。
「ちょ話しかけられたよ!どうするのサ」
「でも…ヤサ、しそう…」
「アタシたちのことみえてるんだ?」
見た目的には落ち着いて静かに喋りかけたのが良かったのか逃げられずに済んだようだ。
一人は気が付かれた事に対してちょっと拗ねるように。
一人は二人の後ろに隠れつつ間から顔をチラッと覗かせて。
一人は自分達の姿が見えている事に少し驚いている。
三人の妖精?はそれぞれおっかなびっくりな感じで反応している。
「うん、見えてるよ!妖精さんでいいんだよね?」
言葉が通じている事に安心しながら彼女は先程から気になっていた事を三人に問いかけてみると、拗ねていた一人の妖精が代表として返事をしてくれる。
「そう、私たちは妖精であってるのサ」
「そっか…あのね妖精さん、私知らない内に向こうにある湖にいて迷子なんだよね、この場所が詳しく分かる人か妖精さんは知らないかな?」
少しでも分かりやすく伝わるように言葉を選びつつ質問する彼女に対して、三人の妖精は彼女から少し離れてまたコソコソヒソヒソと話し始めた。
「あぁ言ってるよどうするのサ」
「アタシたちとニテルからツレテいってもいいんじゃない?」
「ワタ、シも、さんせい…」
妖精達が話し合っている姿をニコニコほっこりとした顔で眺めながら待つ彼女。
そこへ三人の妖精は少し話して意見がまとまったらしく、さっき代表で話してくれた子が近付いてきた。
「私が道案内するのサ、ちゃんと後ろをついてくるのサ」
「本当に?妖精さん達ありがとう!………はっ!待って〜!」
こんなに愛らしい子達が道案内してくれるのか!という嬉しさから更にニコニコと笑顔になる彼女はどんどんと先へと飛んで行く妖精達に気が付き慌てて後を追いかけ始める。
見渡す事が難しかった霧は彼女からは不思議と見渡せる範囲が広くなっている…のにも関わらず気にも止めていない彼女。
そしてやはり彼女の後ろ姿を見ようとすると霧は深く深く濃くなり、すぐさまその姿を見失うようにかき消していく。
後にあるのは木々と草花ばかり…。