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1.プロローグ

途中暗いです。区切っているので飛ばしても構いません。ご都合主義だったりします。

まったりのんびりと書いていくのでなかなか更新出来ないかもしれません。

それでも気長に待ってくれる方は、読んでもらえると嬉しいです!m(*_ _)m

 

 この街の特徴として主にレンガで造られた建物。

 大小様々な石を使い、広く綺麗な大通りの石畳。

 そこから生まれる綺麗な街並み…人々が忙しなく行き交いあちこちで露店を出している。

 ある場所からはお肉の焼けるいい匂いが漂い、また反対側では何かのスープを混ぜながら大きな声で呼び込みをしている人。

 その匂いに釣られて買った人は店の横で食べ始め、美味しそうに食べている姿は通行中の人達のお腹を刺激し繰り返す。


「変わっているようで全然変わってないなぁ〜…」


 顔を上げ見渡し、そんな事を呟きながら彼女は急かされるような感じで足早に大通りを真っ直ぐ進み、脇道に入り目的の場所がある住宅街の方へと向かう。

 あの子はどうしているだろう?

 随分と心配させてしまっているのだろうか?

 顔を出したら喜んでくれるだろうか?

 色々な考えを巡らしていく内に目的の場所である家へと辿り着いた。


 彼女は家の少し前でゆっくりと深呼吸をしてからドアの前に立ち、コンコンコンっ…と優しくドアを叩く。

 ガチャッ…とすぐに開けてくれたのは年配の女性だった。

 初めて顔を見たがお手伝いさんや近くに親戚の人でも居たのだろうか?と考えつつ、あの子の事を聞いてみた。しかし、その人は少し顔を歪ませながら言った。


「あぁ…あの子は数年前に亡くなってしまったよ…」


 返ってきた答えを理解するのに脳が拒否してくる。年配の女性がまだ何かを話しているが、頭の中には入ってこない。何故?どうして?という疑問と悲しみ、悔しさ、小さな怒りが頭の中をぐるぐると駆け巡り、手は握り締めていてかなり白くなっている。

 年配の女性は彼女の様子がおかしい事に気が付き、声を掛けつつ目の前でヒラヒラと手を振っている。全然反応しない彼女に対して肩に手を置こうとした時、


「どうしてっ!!!」


 と彼女は急に叫び声を上げた。そして悲しみが襲って来たのか、だんだんと涙が溢れてきたらしくボロボロと頬を伝って地面の色を濃くしていく。


 年配の女性は急に叫び声を上げた彼女に驚きつつ落ち着かせる為に家へと招き入れてくれる。


「ほら、ドアの前で泣いてないで…家の中へ入っておいで」


 優しく声を掛けてもらった彼女はまだボロボロと泣きながら声は震えつつも


「ありがとうございます…」


 と言って中へ入り、目の前にあるテーブルの所まで行って


「お茶の準備をするからそこの椅子に座って少し落ち着きなさい」


 と言いつつ、キッチンの方へ向かい準備をし始めた年配の女性の後ろ姿を眺めながら彼女はどうしてこうなったのか考え始めた。






 --------------------------------






 この世界は本当に理不尽で残酷だと思う。


 愛する人が居て、子供も2人に恵まれて、毎日が大変でも楽しく幸せに暮らしていたのに…

 ある日、私の小さな幸せたちは唐突に奪われた。


 原因は通り魔だった…

 ただただ人を殺してみたくて、その時の反応を見たくて、親子が羨ましくてやったんだ。と犯人は素直に認めていた。惨いと思った。


 なぜ何の罪もない夫と子供が殺されなければいけないのか?

 どうして私以外のみんなを連れて行ってしまったのか。

 なぜあの時、私は夫や子供と一緒に居れなかったのか。

 私の親は既に他界していて、兄妹も居ない天涯孤独の身。

 カーテンはピッチリと締め、電気も付けず、がらん…とした広い家に1人で居るのは悲しくて、悲しくて、辛すぎて、この先どう生活して何を生きる希望にすれば良いのか…悲しくて、仕方が無くて…とても切ない。


 気軽に相談出来る相手も居ない私は、この思いをどう片付ければ良いのだろうか。

 ゆっくりともさせてくれない世間は煩く、私は悲しくて、辛い、毎日がこの考えで埋め尽くされている。

 私は戸締りをして夜中にひっそりと家を出た。少し離れた場所に自殺の名所があるのだ。遺書は家にも私のカバンの中にもある。


 だったらもう…良いだろう?

 想う人…愛する家族…居なくなっては生きる意味が見出せなくて…



 私は今―――



 身も凍る様に感じる水へとこの身を委ねた。



 ―――はず、だった…。






 --------------------------------






「んっ……」


「ここは何処だろう…?」


 身体を起こし辺りを見回せば、霧が濃くてあまり遠くまで見通す事が出来ない。


 だが彼女の近くには花弁の小さい白い花が咲いており、瑞々しい葉の木にはサクランボに近い形で真っ赤な色をした実を付けているのが見える。

 動物の気配はあまり無さそうだが、ここが自然豊かな森のような場所である事は分かる。

 彼女の足元にはとても透き通った水辺があり、そこに先程まで横たわっていたらしい。


「私は…何故、生きているの?」


(水に身を委ねてそのまま死んでしまおうと思っていたのに…何故か生きている。それも見覚えも無い知らない場所で…。)


「それに霧が濃くてどんな場所なのかも分からないし……」

「とりあえず状況を確認してここがどこなのか考えなきゃ…よね」


 独り言を言いながらその場に立ち上がり、彼女は何かおかしい違和感に気が付く。


「ん?服が濡れていない…?それに髪の色が…?」


 先程倒れていた水辺に彼女は自分の姿を映して確認して見るようだ。


(目の色が上から下にかけて黄色から紫色という、不可思議で有り得ないはずの綺麗なグラデーションになっている!?えぇ…意味分かんないのだけどっ!?)

(それに髪の色が藍色で髪の先にかけて明るくなっていて少しキラキラしている様で…)


「夜空みたいだなぁ……じゃなくてっ!なんで色が変わってんのよっ!」


 彼女はあまりの出来事に思わず感情的に声を出してしまった口を押さえつつ、そのまま手を当てながら考え出す。


(いやいやおかしいでしょう?私人間よね?なんでこんな風に色が変わってるの?)

(でも水辺に姿を映した時に見た服はジーパンに普通の長袖Tシャツで変わっていない…。)


(髪の長さはロングで変わらず…。目の形はアーモンド型な感じで変わってない…。チャームポイントのえくぼも変わりなし♪…心無しか肌に張りがある気がする位?…ん?おでこのニキビが無いわ!あの悩まされたニキビが無いなんて素晴らしい!!!)


 首を傾げたり、うんうんと頷いて見たり、ニコッと笑ってみたり、驚いたり角度を変えながら彼女は自分の顔をまじまじと見ている。表情は豊かなようだ。


「うーん、主に変わったのは色だけ……かなぁ〜」


「でも、どうしよう…ちょっとワクワクして来ちゃったんだけど」


 彼女はニヤっと笑ってしまいそうになるのを抑えながらその場でウロウロと歩き回る。


「てか私、死のうとしてたのにワクワクするとかなんなんだろう…」


(それにだんだん前向きになって来た気がするのは何でだろう…?気のせいかな?そんな事無いと思うんだけど…)

 そんな風に不思議に思いながらも、彼女は少々考えるのが面倒になったようで…ウロウロするのを止めて見知らぬ場所に居る自分を少し勇気付ける為にも声を出した。


「よしっ!…ここにいつまで居ても仕方が無いんだし早く動こう」


 そんな風に言いながら前を向き、そして彼女はそのまま霧が深い森のような場所をあてもなく歩いて行く…。


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