華麗な少女は、不老不死【後編】
「…っつ!」
少女に倒れこんだ。右手には、どこから出したのか、ナイフが握られており、少女の腹部に刺されている。
「主さまっっ!!!」
少女が倒れる寸前のところで、先程説教をしていた雲伊と言われた女性が抱き込む。そして、男はその場にいた他の者達に捕らえられた。
「ははっ、やっぱりこの森に入って正解だったよ〜。そいつの犬であるお前らがいる事は分かっていたが、まさか主がいるとはなぁ〜!普通の奴のフリして走った甲斐があったよぉ〜!」
男は不気味に笑いながらそう言った。先程から男を取り押さえる者達や、少女を抱き込んでいる女性は一言も発さない。それに気を良くした男の笑いが頂点に達した時、それは動いた。
「…黙って聞いておれば、なんとも馬鹿で滑稽な男じゃのう。」
男は驚いた。先程、自分で刺した少女が何でもない様な顔でむくりと起き上がった。
「な、なぜ…お前はさっき殺したはずだ。それにあのナイフには毒も盛った筈だ…な、なのに…なぜお前は生きている!!」
男は驚愕の目をし、そう言った。頬には冷や汗がつたう。
「ん?お主、我の"呪い"を知らんのか?はぁ、なっとらんのう……いいか、童。いつ如何なる時も油断をすると、こちらが痛い目を見るんじゃ。例えば、今から死ぬ…お主みたいにな。」
先程の笑いから一変、絶望したような顔をした男と、無表情の少女。
「ひぃっ!い、嫌だ!!お、俺はまだ死にたくない!や、やめてくれ!」
「ほぅ、この場にきて命乞いとは…つくづく人間とは愚かで馬鹿な生き物じゃのう。」
少女が男に近づく。その手には刀が持たれている。
「ひぃっ!や、やめてくれぇ!」
男が後ずさる。だが、少女も男へとまた一つ、歩みを進める。
「い、いやだ!や、やめっ…」
「愚者は、おろかに地獄へ逝くがいい。」
少女が静かに男の首に刀を刺す。暫くすると、少女が男の首から刀を抜き、刀を一振りすると、刀を鞘に納めた。そしてーーー
「その男の処理、其方達に任せる。後は頼むぞ。」
少女は、その場にいた者達にそう言う。その声は、先程よりも冷たかった。皆は少女の前に跪く。
「「「「御意。」」」」
そう言うと、先程の男の屍を抱きかかえ上げ姿を消した。すると、
「……葉月。」
少女の背後から突然、声がしてその声の主が姿を現した。そこにいたのは、漆のような黒髪、髪とは正反対の白銀色の両目、極めつきは顔がとても整っている。服装は、シャツまで黒いスーツに、黒いネクタイ、そしてこれまた同じく黒の手袋。グレー色のコートを着ていて、少女よりかは幾分か高い背でどこか大人びた雰囲気があった。男は、少女の後ろに立つと、自分が着ていたグレーのコートを少女の肩にかけた。
「…零、どうしたのかぇ?そちはもうひとつの任務に就いていた筈だが。それに我は隊長という役目を与えた筈だが?」
「こちらの仕事はもう完了した。ここに来たのは、お前が自分も行くと言うから、心配で来たのだが…どうやらお前の方も完了した様だな。」
零と呼ばれた男は、そう言うと少女の手を握り、歩き出した。
「…はぁ、相変わらず零は過保護だな。」
「そんな事はない…ところで葉月。何故あの様な雑魚の元へ行った。」
「それは、単なる気まぐれよ。」
「…ふざけるのも大概にしろ。まぁいい。今は、そういう事にしといてやる。」
「はっはっはっ、そういう事にしといてくれ。」
そう言った後、葉月と呼ばれた少女はどこか憂いげな顔をしたが、すぐに笑顔になり、零という男と共に森の中へと消えていったーー。
大分お久しぶりです。色々予定が合わず、全く更新できませんでした。これで1話は完結です。後編は、大分長くなってしまいました笑。次から、色々と変わると思います。
それにしても、年が明けたと思いきや、もう節分もおわり、バレンタインが来ますね。これからも、なるべく早くあげて、皆さまにたくさん読んでいただけるような話を書いていこうと思いますので、これからも応援していただけると幸いです。