十五話
学校に憂鬱ながら登校する時間も残りわずか。
期末テストで嘆き悲しんだ者も、喜んだ者もいる。
追試なんかになった生徒はこの世の終わりという顔をしていた。
しかし俺はそんなことはなく、あんな事件があったにもかかわらず、いつもより成績が良かった。
これも葵のおかげだな。
しかし、今の葵との関係は…
「……」
「……///」
少し、いやすごい気まずい時間を過ごす。
事件があった次の日、俺はすぐに葵に謝った。
しかし葵は、気にしたような感じはせず、俺を許してくれたかのように思えたが…
「…なあ」
「!」(びくぅ)
俺が話しかけると、葵は体をピンと伸ばし俺から少し距離を離した。
そう、教室ではいつもと変わらず接してくれたが、人が少ないところになると、決まって俺たちはあのことを思い出し、距離を置いてしまうのだ。
「…なによ、貴方達喧嘩でもしたの?」
いつものように栄養ブロックをかじりながら、こっちを不審げに見てくる紅がため息を吐きながらまたかじる。
「いや…少し事件があって…」
「あらそう…ねえ葵くんこいつになにされたの?」
ぐっ、こいつってなんだこいつって…
しかし俺はなにも言えないから仕方がない…。
ていうか葵くんって…いつの間に名前呼びになったんだ?
知らない間に仲良くなりやがってこんちくしょう。
「……セクハラされた」
そして葵がとんでもない発言をする。
すると、背筋が凍りついたような感覚に見舞われた。
ああ、だって…紅がとんでもない怒気を俺にぶつけてきているからな。
「あああああ、あれはせせせ、セクハラじゃねーよ!」
「ほう…セクハラ…ほう…」
紅がどこからか持ってきた鉄パイプを手に持ち、俺に殴りかかる3秒前みたいな格好をしている!
「やめろ!紅!いや紅さん!」
「ほう…ほう…」
「ダメだ、話聞いてねぇ!おい葵!どうするんだこれ!」
「ふんっ、貴明くんなんて殴られちゃえ」
「えええ!?」
紅はジリジリと俺によってきている。
あ、ダメだこれ、殴られるわ。
俺は決意し、目を閉じた。
この後保健室に運ばれたのは内緒だ。
このことバレると、屋上入れなくなるからね。
ーーー
大きなたんこぶをこしらえた俺は放課後の吹奏楽部の音色を聴きながら誰もいない教室で頭をさすっていた。
先生には、階段で転んだことにして、俺は思いっきり先生に怒られた。
しかし怒られたと言ってもうちの担任なので。
『こーら!ダメだぞぉ!気をつけないと』
みたいなもんだ。
「ごめんね貴明くん」
ニコニコと笑いながら俺に謝ってくる。
どうやらあれは、からかっていたらしく俺の反応を見て楽しんでいたらしい。
俺の中で【葵、小悪魔説】が浮上した。
「もうすぎたことだ、俺の方こそ悪かった」
二人で笑い合う。
こんな感情になれるのはやはり葵とだけだろう。
「あはは、貴明くんと入れて嬉しいや、ねぇ、この夏休みいっぱい遊ぼうね!」
「あ、ああ」
ダメだ、葵の笑顔が眩しい。
正面から見ると、キラキラした銀髪が風に揺れ、葵の笑顔の美しさを引き立てていた。
ここ数ヶ月、葵と一緒にいれて良かったし楽しかった。
ーーーもう認めるべきなんだろうなぁ。
俺、佐藤貴明はこの時、初めての感情の正体に気づく。
俺は、鳳凰葵にーー
恋しているのだった。
とりあえず一旦の区切りは終えました…。
…無理やりすぎるかな?
ブクマの方ありがとうございます!
初めて書いた小説なのですごく嬉しいです。
誤字の方がありましたら是非感想の方にお書きください。
欲張っちゃいますが、ブクマやポイントの方もお待ちしています!