十話
俺はネクタイを直し、長谷川さんの話をまた聞くことにした。
どうやら長谷川さんは自分は普通なのではないかと言うことで悩んでいたらしく、学校の中で有名になりつつある、俺と葵を参考にしようと観察していたが、ますます分からなくなり俺に思い切って話しかけたと言う訳だ。
結論から言おう。
めっちゃどうでもいい…………
びっくりするぐらいどうでもいいんですけどー
なに?最近の女子ってそんなことで悩んでるの?
ぶっちゃけそんなことで考えてる暇あったら勉強しようぜ。
最近、心がもやもやして勉強どころじゃない俺が言うのもなんだが。
まぁそれなんだろうな。
彼女はおそらく俺と似たような感情だ。
ここ最近、なにかを正常に見れなくなってきそうで不安になってる俺。
ここ最近、普通すぎて不安になってる長谷川さん。
そうだな、不安なんだ結局。
おそらく思春期に迎える、漠然とした不安。
将来のビジョンが見えなくて不安になってるのと一緒だ。
そうSNSで見た。
まぁ彼女に教えといてやるか、あんたは少なくとも普通じゃない。
「結論から言うよ」
「はい…………」
「少なくとも俺は長谷川さんを普通だとは思っていない、俺からすれば貴女は神だ」
「…………は?」
長谷川さんの隣で座っているギャルがこっちを睨んでくる…しかも威圧しながら。
それでもいい俺は変わらず続ける。
「貴女たちが作る野菜は最高なんだ、俺はそんな野菜を作る長谷川さんに出会った、俺からすれば充分普通じゃないよ」
「…………ありがとうございます」
長谷川さんがにっこりと微笑み、俺に礼をする。
おそらく参考にはならなかっただろう、俺は訳の分からないことを口走ってたかもしれない。
だが彼女は笑顔になった。それで充分だ。
「なに?あんたももこのこと好きなの?」
長谷川さんの隣に座るギャルが悲しそうに、俺をからかってきた。
「そういや」
「あ!この子はこころちゃんで私の幼馴染です!」
「……話無視すんなし」
こころと呼ばれた彼女がどんどん不機嫌になっていく。
「…巫心」
おそらく彼女は名前を言ったのだろう。
彼女が名前を言った瞬間予鈴のチャイムが鳴った。
「それじゃ戻るか」
「はい、今日はありがとうございました!」
「いいや、じゃあな」
俺は彼女たちを見送ろうとした瞬間、巫さんが俺の耳元で囁いた。
「ぜってぇ負けねーから」
そう言うと巫さんは走って長谷川さんの元へ戻っていった。
…安心しろ。
あんたの長谷川さんは取らねぇよ。
十話です。
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