入学前の困難 TypeⅢ
びしょ濡れになって最悪の入学式を迎えることになってしまい、絶望しながら俺は車に乗った
「……あれ?」
後ろの座席に荷物を置こうとしたとき、黒い布があった。取ってみるとズボン、制服のロングパンツがあった。
「やった、これで少しはマシになる」
今の俺にとってこれはすごくうれしいことだった。上ならまだ制服の下にワイシャツとアンダーシャツがあって肌までは直接濡れなかったが下はロングパンツだけで薄いので肌が濡れて気持ち悪かったのだ、だからこれはすごく助かる。そんな事を想いながらもう一つのズボンを穿く。穿いてみると材質が違うことがすぐに分かった。前に穿いてたロングパンツは風を通さない材質だったが、今穿いたロングパンツはなんというか、スース―する。つまり風を通すような材質だ。まあ、今の俺が気にするのは濡れているか濡れていないかだから、スース―するのは今関係ないのだ。
「ふー、これで怖いものは何もない」
ほんと、神様がいたら感謝したいね、うん。あと、絆創膏があったからさっき木の枝が刺さったところに貼っておこう。
「終わったか?それじゃ車出すぞ」
そう言ってエンジンキーをまわしてエンジンが
キュルキュルキュルキュルキュルキュル……
「?」
エンジンキーをまわしてエンジンが
キュルキュルキュルキュルキュルキュル……
「…………」
「(ポカーン)」
車のエンジンがかからなかった。
「うーん、紘夜、マフラー見てきて、もしかすると詰まってるかも」
そう聞いた俺は外に出る今は雨はあまり降ってなかったが、風はあった。
そして車の後ろに回り、俺はマフラーを調べた、が、詰まった感じはなさそう。そうなると
「見てきたけど、特に何もなっかたよ、やっぱり故障じゃね?」
「この前、車検に出したばっかりだ、そんなことはない……と信じたいが」
「クソ、これじゃあ!入学式に間に合わない!どうすれば!」
なにか、なにか!なんでもいい、今この状況をどうにかする何かが――――
あった!一つだけ!可能性が!あの時のあれなら!
三年前
俺はとある海岸に居た。それはなぜか、お父さんの社長がパラグライダーにはまってて、俺も乗せてくれるという話になったらしい。空を飛べる。そう言われれば、ほとんどの男の子は食いつくと思うんですよね、うん。ちなみに、この日はもう一つ行事があって、カウンセリングでお世話になってる病院が主催している夏キャン(キャンプと言ってもホテル止まり)の日でもあった。
そして、初めて飛ぶ感覚を味わって、さあ夏キャンに行こうとしたが
キュルキュルキュルキュルキュルキュル……
「あれ?エンジンがかからなよ?」
「まずった、バッテリーが切れた……」
その言葉を聞いたとき、俺は、
「え?ッッグス、冗談……だよね?」
俺は泣いた、いやこれだけで泣くって、我ながら泣き虫だとは思うよ?けど仕方がないじゃん、泣いちゃったんだから。
泣きに泣いて、少し落ち着いたとき、車の窓を叩く音がした
「どうしたのかね、尾御田君?」
声の正体はさっきまでいた社長さんだった。
「あ、社長、実は……」
お父さんは事情を話した、バッテリー切れして車を出せなくなったこと。子供に用事があるから急いでること。そして話を聞いた社長さんは
「よし分かった、少し待ってなさい」
そう言うと社長はお父さんの隣にある車……ってこの社長さんの車、メ〇ルセ〇スのべ〇ツだ。すごい、初めて見た。
社長は何かコードみたいなものを引っ張ってきて、お父さんの車のボンネットを上げて、そのコードの先のクリップ?をどこかにくっつけた。そして、社長さんが自分のべ〇ツのエンジンをかける。
(なにやってるんだろう?)
そう思ってると
キュルキュルキュルブオン
エンジンが付いたなんで!?
とまあ、僕は分からないまま、夏キャンを迎えるのでした。
現在
(あの時の事をやれば!)
「ねえお父さn」
んを言おうとした瞬間
ブオン!
「お、かかったな。紘夜、シートベルトを……あれ?どうした?」
「え……いや何でもない」
返せ!俺が考えてた時間返せ!