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守るべきモノ(1)

窓の外から目覚まし代わりの小鳥のさえずりが聞こえる。

カーテンの隙間から朝の日差しが差し込み、まだ眠っているマイカの顔を照らす。


「う〜ん……」


眩しい日差しによってマイカの意識は無理矢理覚醒させられる。

気だるい体を起こし、重い瞼を擦り、ぼやけた視界を鮮明にする。

そして、布団を畳み、おぼつかない足取りでリビングに行く。


「おはよう。マイカちゃん」


「おはようございます……ホムラさん」


リビングに出ると、そこにはエプロンを身につけ、テーブルに朝ごはんを並べるホムラがいた。

その姿は男性でありながら正に主婦のよう。


「ホムラでいいよ。よそよそしいのはあまり好きじゃないから」


「それじゃあ……せめてホムラ君で」


ホムラは堅苦しい関係があまり好きではない様子。

しかし、マイカにとってホムラは命の恩人だ。

あまり、失礼な態度も馴れ馴れしくするのは違和感があった。

だから、馴れ馴れしい呼び捨てではなく、よそよそしいさん付けでもなく、君呼びにした。


「そういえばホムラさ……君は料理が上手なんです……だね」


慣れないタメ口に戸惑いながらも必死になるマイカをホムラは愛おしそうに見つめながら、語り始める。


「サバイバルしてると、どんな不味いものでも食べないと生きていけないからね。だから、不味い物をどう美味く調理すればいいかと考えてたら、自然とスキルが身についたのかな?」


食べるということは生きることと言えるほど大事なこと。

特にサバイバルでは食料が不足するのは当たり前。

道端に生えてるただの雑草や獣臭く固い肉を食べないといけない状況など多々ある。

そのため、そのような食材をいかにして食べれるようにするかと常に試行を重ねていれば、嫌でも料理のスキルは上がるに決まっている。


「すごい……」


ホムラのずば抜けた凄さと自分の生活がいかに恵まれているのかと思い知らされ、唖然とする。


「まぁ、そんなことはいいや。とにかく、冷めないうちに食べよう」


「うん」


せっかくの美味しい料理も冷めてしまっては勿体ない。二人は席に着き、豪勢な朝食を頂く。


「美味しい!こんなに美味しいの生まれて初めて食べた!」


口に広がるパンの香ばしく、暖かな美味さ。

頬っぺたが落ちそうな程の美味さに舌鼓を打つ。


「喜んでいただき光栄だよ」


マイカの純粋に喜ぶ姿を見て、ホムラは優しい笑みを浮かべる。


「私……ずっとひとりぼっちで人の料理を食べたことが少なくて……」


暖かな料理を堪能している最中、マイカはスプーンを置き、静かに語り始めた。

マイカが六歳になる前。両親は不慮の事故に遭い、この世を去った。

これから親の愛を目一杯受けて、

その後は親戚の家に引き取られるも、親戚は出来損ないのマイカを蔑み、毎日嫌がらせをし続け、出される料理はいつも冷めていた。

その親戚も2年前には他界し、今は家だけが残った。


「マイカちゃんも……辛かったんだね」


家族もいなければ友達もいない。

家族の代わりがいても、拒絶され、マイカはずっと孤独であった。

それは酷く辛いものだろう。


「そうだ。この後一緒に買い出しに行かない?」


「買い出し?」


「そう。市場に行けば美味しいものが手に入って、より美味しい物を食べさせられるし。それにもっとこの街を見て回りたくてね」


「市場か……」


市場にはたくさんの人がいる。きっとその中には自分を蔑む者はいるだろう。

過去に市場に行って、物を投げつけられたことがあり、それがトラウマで、人の多い昼には行かず、夕方に足を運び、あまりいい出来ではない売れ残った商品を買っていた。


「難しい……かな」


確かに怖かった。また、物を投げつけられてしまうのでは。陰口を叩かれてしまうのかと、不安しかなかった。

でも、もしホムラなら。優しいホムラなら自分を守ってくれるはずだ。

そう思うと、自然と不安は晴れていく。


「わかった。ご飯食べ終わったら、準備する」


考え抜いた末、マイカは勇気を出して、ホムラと一緒に市場に出向くことにした。


マイカにとっては人混みは辛い

特に人が多い市場はな

だけど、世の中には弱者に優しくしてくれる人間だっている


次回 守るべきモノ(2)


光あるところに闇がある

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