表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

プロローグ

 木々のざわめきが深い暗闇に包まれた森に響く。生物たちの鳴き声や呻き声が聞こえ、この森を歩く青年に異様な緊張感をもたらす。


「あと少し……」


 蔦に足を囚われ、細く鋭い枝で皮膚を傷つけながら青年は獣道を突き進む。やがて、暗闇の森に一筋の光が差し込み、青年の顔も自然と綻ぶ。

 その光に向かって歩くとやがて森を抜け、見晴らしの良い高台に出た。


「やっと抜けたな」


 赤いジャケットに赤いギターケースを背負った赤髪の青年、ホムラ・ウィンドバーグは長く深い森を抜け、何とも言えない達成感を感じていた。

 森に入って一週間。草の生い茂った森は足を取られやすく、なかなか進むことができなかった。

 そのため野宿を余儀なくされたものの猛獣などが昼夜問わず襲ってくるため、一時も気を抜くことができずに精神は疲弊し、挙句には食料も尽き、本気で死を覚悟した。


「でも、過酷なサバイバルも終わりだな」


 だが、目的地に目の前にし、これで過酷な日々も今日で終わりだと思うと、ミントを食べたような爽快感が全身を駆け巡る。


「おバカ!気を抜くのはまだ早いわよ!」


 しかし、そんな爽快感を台無しにするように火の妖精――サラが小さな羽をばたつかせ、宙に浮きながら気の抜けたホムラに喝を入れる。


「わかっているよ。目的地に着くまでが旅の鉄則だろ」


 曇りのない笑顔を浮かべ、ホムラは眼下に広がる景色を見下ろす。

 目の前にあるのはオルディアス王国。中心にそびえるオルディアス城を中心に城下町が円形に広がった国である。円形に広がる王国などこの世界では特別な造りではない。

 だが、オルディアス王国を囲むように聳え立つ石造りの壁は一際異彩を放っていた。まるで外部から来る余所者を拒んでいるよう。


「んじゃ、さっさと行きますか」


「ちょっと!ここはあんな高い壁に囲まれているのよ!どうやって入る気なの?門番だっているし……」


「なら、壁を越えるだけだ」


 そう言って、ホムラはポケットからハーモニカを取り出し、吹き始める。

澄んだ、綺麗な音色が辺りに流れる。


「来たか」


 その音色に誘われるようにホムラの周りに風が集まる。

そして、ホムラは風に乗り、宙に浮く。


「単純な考えね。バレないようにしなさいよ」


「わかってる。サラもしっかり、役割を果たしてくれよ」


「もちろんよ」


 二人は短く言葉を交わすとサラは西へ、ホムラは東へ、ある目的のために行動を始める、

 オルディアス王国を救うために。オルディアス王国に巣食う悪から人々を守るために。

予告


誰もが持つ力を持たず、虐げられている少女、マイカ

過酷な日常に抵抗することもできず、逃げ出すこともできない彼女の前に英雄が現れる


次回 見参!炎魔奏士ブレイヴァー(1)


闇を斬れ!ブレイヴァー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ